大川橋蔵「理性と野性」を二役で好演!東映京都「黒の盗賊」井上梅次監督・東映chで放映中 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み八日目で最終日、快晴です。買い物以外の外出を控えていた為に今回の休暇は未見作品の鑑賞が出来ましたし、当ブログの方針転換により映画記事を開始してから初めて一週間以上毎日更新も出来ました。しかし疲労感が全く無い為か、深酒をしようが夜更かしをしようが睡眠時間は普段よりも短めとなりました。本日は明日17:00の出勤に備え睡眠時間調整です。

 

 

 

さて本日は今月の東映ch「傑作時代劇スペシャル」の枠内の一作品から…東映が劇場公開作品としての時代劇制作を縮小し、内容も集団抗争時代劇転換以降の一作ですが、大川橋蔵が「双子の誕生は一族を滅ぼす」の迷信により生き別れさせられた兄弟二役を理性と野性で上手く演じ分け、場面の構成やアクションは「正統派娯楽時代劇」と云うよりも「昭和30年代のアクション時代劇」東映作品で云えば千葉真一主演のテレビドラマ「影の軍団シリーズ」の雰囲気と想像して頂ければいいかと思いますし、私感ながらも鑑賞後「影の軍団シリーズの立案・構成等々に当作品が少なからず影響しているのでは?」と考えた程。尚、制作時期を考えれば「アクション場面の凄味・迫力」は十分に合格点となるでしょう。

 

 

 

「黒の盗賊」昭和39年12月24日公開・結束信二/宮川一郎/井上梅次の共同脚本・井上梅次監督・東映京都制作(尚、助監督は昭和40年に東映東京制作所に転籍し特撮番組の監督として活躍された折田至が担当。他に東映京都撮影所在籍時代には「悪坊主侠客伝」「関東やくざ者」の助監督を歴任しています)。

 

 

VHS化作品ですが未DVD化で有料動画配信も行われていません。尚、先述の通り東映chに於いて本日以降、5/15(金)11:00~13:00・5/20(水)13:00~15:00・5/25(月)20:00~22:00の三回放映されます(字幕付きHD放映)。

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

※東映chの作品案内・放映日時案内は此方から

 

 

 

徳川幕府の二代目征夷大将軍・秀忠(林真一郎)が江戸庶民の反対を受けながらも先代征夷大将軍の家康の溺愛を受けていた僧正(千秋実)と本田忠勝(大友柳太朗)の言葉に促されるままに築城計画を進めていた慶長中期、義賊「黒の盗賊」は民衆から喝采を受けていました。

 

 

そして、秀忠の側近として築城計画に対し「不沈城を造るよりも街造りに焦点を当ててこそが江戸の発展と民衆の為になる」と主張をしながらも聞く耳すら持って貰えなかった橋蔵御大も「黒の盗賊の様に民衆の為に縦横無尽に暴れ廻れたなら…」と思っていた一人。そんな時、江戸城の工事に携わった棟梁・職工が建築図面を返却後に口封じの為に軟禁され、毒殺未遂の末に大乱闘となっていた事を知った橋蔵御大は「偽の黒の盗賊」となり単身で救出作戦を実行すると「本物の黒の盗賊」が現れ…しかも物語が中盤に差し掛かった時点で「秀忠の側近の橋蔵御大」「黒の盗賊の頭領の橋蔵御大」が瓜二つである事が判明!これを知った僧正の千秋さんは早とちりをし「側近の橋蔵御大」が極致に立たされたものの「黒の盗賊の橋蔵御大」の機転により難を逃れます。そして「生き別れの経緯」が明かされ、意外な結末へ…

 

 

 

 

 

 

「理論を持って提言を行ってもに果たせずに藻掻き、理性を失わぬまま実力を行使する橋蔵御大」に対し「官軍から賊軍への変化の様に、徳川幕府になって以降全てを奪われ追い遣られた一族の恨みに私怨が加わり先走りし、盗賊の意思統一にも影響を与えてしまう橋蔵御大の野性」(これを咎め「頭領様の気持ちは分かるが血気盛ん過ぎて頭としてはどんなものか?」と言うのが長老で知恵袋の大坂志郎。因みに「黒の盗賊」の面々として待田京介がも出演しており「実戦の場での右腕」として大活躍しています)。しかし「双方共に民衆の側に立っている共通性が在り、遣り方が大半の面で違うだけ」しかも「血の繋がった兄弟」なのですから山さえ越えてしまえば例え困難に直面しても一方的な強硬手段に出ても関係修復は容易かつ信頼関係は絶大。当作品の後半以降は「双子の兄弟の生き別れの経緯」とこの点が激しい戦いを交えながらの見せ場となっています。ましてや「戊辰戦争の結末と敗戦処理の経緯」を知っていると(因みに、郷里の盛岡が含まれる旧・南部藩支配地域には会津藩の方々が新天地として移住した地域が存在します)特に「野性の橋蔵御大の心情」は非常によく解ります。

 

 

大友の御大が演じられた本田忠勝は何方かと言えば悪役としての扱い…しかし史実に於いても「忠勝が家康の後継者として推挙したのは松平忠吉」と云う事ですから、全くの虚像とも言えないのかもしれません。

 

 

そして「幕府側支持と思わせて実は黒の盗賊に惹かれている女郎屋の主人の安部徹が面白可笑しく見せた武器取引」「亭主の安部さんを目の前で放り出して盗賊の橋蔵御大に熱を上げる久保菜穂子」(この二人は結末迄付いて回る事となります)「助平さと滑稽さが前面に出た僧正の千秋さん」等々の娯楽要素も充実していますが、年末から翌年の1/2迄の公開と云う事も在ったのでしょう…「藤山寛美が史実とは大違いの服部半蔵を、大馬鹿とドジを交えて熱演」しています。

 

 

更に「家康役の役者名」をここ迄伏せて来ましたが…開始大凡一時間後に登場する家康は金子信雄!これだけで「ボンクラ野郎の東映ファン」は腹筋崩壊の大爆笑!しかも「仁義なき戦いシリーズの山守親分の下地の一部となったのではないか?」と感じる程の「ねちっこい台詞回しとど助平面!」がたまらなくいい!

 

 

 

「推理を間違える明智小五郎が居てもいい」と言い放った石井輝男監督の意思と同じであったとしてもおかしくはない「石井センセイの盟友」井上監督の演出作品ですから(因みに生前、石井センセイは「いやぁ、梅ちゃんには負けますよ」と在る書籍でお話をされていました)「寛美師匠とネコさんの人物設定と演出に関して石井センセイと同じ思考で臨んだのでは?」と考えてしまいます。