渡世の義理が生み出した不遇を償う梅宮辰夫!東映京都「侠客の掟」高倉健共演・鳥居元宏監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、おはようございます。

 

 

休み二日目…昨日は夕方迄起き続け飲酒に至ったものの、そのまま就寝してしまい起床すると既に日付が本日になっていました。どうせ今晩は「夜勤に向けての時間調整の日」ですから丁度いいといえばそうなります。

 

 

 

さて、以前も何度か当方の記事で書いてはいる事ですが「普段の様子を観察し、それを生かした作品・配役を岡田茂・前東映名誉会長が考案し与えた事で燻っていた現状から抜け出した」と言われている梅宮辰夫。

 

 

「夜の青春シリーズ」では「身も蓋もない、かな二文字の題目の前半四作品」「女を泣かせる梅宮!」と云う称号を得(逆に「男を泣かせる鶴田浩二」と云う言葉も)辰ちゃんが自らが「俺の神髄は不良と女たらしを兼ねたこのシリーズだし代表作」と言っている「不良番長シリーズ」を確立し、東映制作の「現代劇シリーズ作品」では「網走番外地シリーズ+新網走番外地シリーズ」全十八作品に次ぐ全十六作品制作・公開と云う偉業を達成します(他に東映京都制作「極道シリーズ」との合体作品が一作品存在。又「不良番長シリーズ」の役名をそのまま引っ提げて東映京都制作「女番長(スケバン)ブルース・雌蜂の挑戦」に出演)。

 

 

しかし、未だにDVD等々のソフト化がされぬままの「辰ちゃん主演作品群」には「東映任侠映画路線の主演作品」が数多く存在しており「親の言う事は聞かなくても貴方の言う事は聞き入れ、親に相談が出来ない事を色々と話している様だ…と両親も信頼を寄せていた辰ちゃんの兄貴分で、非常に可愛がっていた鶴田浩二の芝居をきちんと吸収かつ踏襲していた様子が伺える程の名演」を見せています(特に、数年前に記事化しましたが、東映東京制作「花札渡世」は傑作!)。

 

 

 

そして、来月で御逝去後五年を迎える高倉健「辰ちゃんの助演に回った作品」が此方!

 

 

考えてみれば「当作品公開当時の東映東京撮影所の俳優序列一番が健さん・二番目が辰ちゃん」(このお二方は基本的に東映東京常駐)でしたから「二人で盟友かつライバルである東映京都撮影所に乗り込んだ!」との見方も出来ます。

 

 

 

「侠客の掟」昭和42年10月10日公開・鳥居元宏/村尾昭/宮川一郎の共同脚本・鳥居元宏監督・東映京都制作。

 

 

未VHS/DVD化作品ですが、GYAO!ストアに於いて有料動画配信が行われており、東映chに於いて複数回の放映実績が在ります。

 

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

同時上映作品は、大川橋蔵主演の同名テレビドラマの劇場版である「銭形平次」(野村胡堂原作・田坂啓/山内鉄也の共同脚本・山内鉄也監督・東映京都制作)。

 

 

DVD化作品で、DMM.com/TSUTAYA TV/ビデオマーケット/GYAO!ストア/Amazonビデオ/YouTubeムービー内に於いて有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

●東映公式・YouTube予告篇動画

 

 

 

 

 

 

明治末期の大阪…関東から流れて来た壮士崩れで新興勢力の親分・安部徹の客分であった辰ちゃんは「大阪・通天閣の建設利権」を争っていた老舗一家の親分・内田朝雄を刺傷し、代貸・待田京介を目の前に有った紫陽花の茎で半目暗にします。

 

 

この直後、大阪の長老である石山健二郎の仲裁申し出により両一家は手打ちをしましたが、内田さんは辰ちゃんから受けた傷が元で亡くなり、京さんは見えていた片方の目も徐々に視力を失い始め、内田さんの長男・今井健二は一家を継いだものの「安部さんの破竹の勢い」に疲れ果て酒浸りとなり、長女・野川由美子は金沢で芸者となっていた始末…元々旅人であった辰ちゃんは事件から数年後に金沢で野川さんと出逢い「お互いを名乗らないのも粋」と互いの心が一気に近付いたものの、灯篭に映った通天閣を見た野川さんが「通天閣は嫌い!」と言い放った事から「内田さんの長女」と察知し、賭場で身請けの金を作り野川さんが帰阪する切っ掛けを与えます(この「賭場での場面」で、辰ちゃんに助け舟を出したのが健さん。しかも健さんは「内田さんの一家と昵懇の間柄である事」が中盤で判明します)。

 

 

そして舞台は再度大阪へ…今井さん・京さんは「河川改修工事の建設利権」で再び安部さんと衝突をしており、野川さんを追う様に大阪に辿り着いた辰ちゃんは「渡世の義理が生み出した京さんたちの不遇」を償うかの如くの行動を見せ始めるのです。

 

 

「一家の仇である事」が解って辰ちゃんを睨み続ける京さん達…しかし「過去の事実から一切逃げる事無く、尽くす事で償おうとする辰ちゃんの姿」に時間軸に差異があるものの其々が心を開き始め「今井さんが引き起こした正当防衛の傷害致死事件で、辰ちゃんが身代わりに出頭した事」が大きな転機となり、完全な和解に至った上に「辰ちゃんと京さんの、実質的な兄弟分の間柄を結ぶ展開」(渡世の仕来たり上、一家に属する人間と旅人は兄弟の盃を交わせない為。この点については「実質的な見届け人の石山さんが「杯は交わさなくても心で繋がりあう事の方が重要」と言う意味合いの台詞を放っています)に発展します。

 

 

 

しかし「昵懇の刑事・遠藤辰雄(=遠藤太津朗)を買収して迄も、自らに反旗を掲げ続ける辰ちゃんを葬ろうとしたものの失敗した安部さんの毒牙」は目前に迄迫っており、それが石山さんに向けられた事に堪忍袋の緒が切れた辰ちゃんは、健さんと共に最後の戦いに臨むのです。

 

 

 

 

 

 

物語の流れは「東映任侠路線の王道を踏襲したもの」ですが「台詞回しや立ち振る舞いに鶴田のおやっさんの雰囲気を所々で感じさせながらも、当路線の常連俳優陣には無い新鮮さと若々しさが心地よい辰ちゃんの芝居」「後に様々な作品で「コメディリリーフ」として、辰ちゃんと抜群の相性を見せた山城新伍が当作品で見せた面白可笑しさ」「刺青師・河野秋武が「我慢(刺青)とは、箸にも棒にも掛からぬ極道者が身体に刻み込む戒め。これが出来て初めて男にもなれる!」と放った台詞の重み=最初から「筋者の侠客」として登場する事の多い鶴田のおやっさん・健さん等々が主演の任侠映画では恐らく成立しない(又は「成立したとしても解り難い」)台詞が、主演・助演陣・物語の流れ等々が変わった事で非常に生き、観る側の心の奥底により響く効果を発揮した点」「侠客一家に生まれた事で、他の家庭以上に男の思考等々に左右され易い境遇を訴え、辰ちゃんに付いて行く意思を見せる野川さん…しかし「何れ全盲となる京さんの杖になって欲しい」と、何処迄も「償い」を貫き通そうとする辰ちゃんの男気」等々「既に相当な動脈硬化に陥っていた東映任侠映画路線に新風を起こそうと、様々な試行を重ねた努力が存分に伝わって来る佳作」。

 

 

辰ちゃんを始め、この頃は「若手・中堅」の位置付けであった京さん・今井さん・新伍ちゃん・野川さんの面々を善玉として前面に出し、健さん・内田さん・石山さん・河野さん等々のベテラン陣が「控えめに」悪玉を一手に引き受けた安部さんが「激しく」若手の五人を盛り立てた点もいい!

 

 

「悪役商会」八名信夫は徳間書店・刊「不良番長浪漫アルバム」内のインタビューに於いて「撮影現場であれこれ提案をした際、辰ちゃんの主演作品の現場ではかなり取り入れて貰えたが、鶴田のおやっさん・健さんの主演作品の現場では難しかった」(健さんの場合はまだ通る事が有ったものの、鶴田のおやっさんの場合は「う~ん…止めておけ!」と、ほぼ無理だったとか)との事ですから「辰ちゃんを東映任侠映画路線の主役として起用をした事は「既存路線・王道路線に捉われない新たな施行を試みる場・新風を送り出す場」として十二分の効果を果たし、任侠路線の延命にも尽力をした側面がある」のではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

「余所者だから可能とも言える、これでもかと云わんばかりの無礼の連続で最終的に市議会議員を目指す安部さんの私利私欲剥き出しの悪党芝居!」「その安部さんに雇われる「札付きの殺し屋」が、若き日の志賀勝!」と云う面は正に「ボンクラ野郎の東映ファンの心を掴んで離さない、王道そのものの配役と芝居」でした!

 

 

特に「京さんに懇願された今井さんの決断で「安部さんとの黒い関係の証拠を固める為の張り込み」をされ、やくざから印籠を渡され懲戒免職を食らった悪徳刑事のエンタツさん!」「日常から我々が抱いている警察への不満・不信感等々を幾分か晴らしてくれる、皮肉を込めた面白可笑しい場面」として大いに評価したいです。

 

 

そして「将軍」こと山下耕作監督のお家芸「植物に作品の意味を持たせる演出」を鳥居監督は披露をしており「紫陽花」が要所で登場しています。