子が家族・PTAの不条理を突く!松田優作/原田美枝子出演・日活児童映画室「ともだち」澤田幸弘監督 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

今朝の5時に勤務を終え、月曜日20時迄の休みに入りましたが、非常に肌寒い雨模様で、昨日から朝方のみ暖房を使用しています。つい一か月前迄は冷房を使用しなければ過ごせない日が在ったのに…東北地方、特に北東北三県はこの様な事は珍しくはありません。

 

 

 

さて…「経営危機が一般の劇場公開作品制作から成人向けの劇場公開作品制作への大転換の切っ掛けとなった」日活(但し、その合間に「嗚呼!!花の応援団シリーズ」「野球狂の歌」「愛しのハーフムーン」等々の「一般映画」も制作されてはいました)ですが「もう一つの屋台骨」として立ち上げられたのは「日活児童映画室」(後に日活児童映画株式会社として本体から独立したものの、平成5年に日活が会社更生法の適用を申請した際に破産手続きが取られ解散)。

 

 

「大手映画会社で児童映画・教育映画に現在も力を入れ続けているのが東映・東映と共に良質な児童教育作品を生み出し、学校等々への巡回上映や父兄達による自主上映の場に於いて東映児童映画作品群と肩を並べる高い評価と信頼を得ていたのが日活」東映と日活は「文芸作品群より観客目線第一主義の娯楽映画志向」「識者・評論家等々の評価よりも観客陣のからの評価が高く、口コミで良さが広まった作品が東宝・松竹・大映等々よりも多い」等々が特徴ですが「娯楽作品、しかもオリジナル作品がきちんと出来る制作陣が無数に存在している層の厚さが、劇場公開作品よりも良質さを求められるテレビドラマや児童教育作品の場でも存分に力量を発揮した一番の理由」と俺は思っています。

 

 

そして今朝、chNECOに於いて「松田優作と、正式デビュー前の原田美枝子が出演をされた日活児童映画室のオリジナル脚本作品」が放映されました。

 

 

 

「ともだち」昭和49年7月24日公開・勝目貴久脚本・澤田幸弘監督・日活児童映画室制作。

 

 

ベオグラード国際児童映画祭グランプリを受賞した文部省(現・文部科学省)特選の作品で、日本PTA全国協議会等々、多数の団体からの推薦も受けています。

 

 

VHS/DVD化作品ですが(DVDは平成28年に講談社から発行された「松田優作DVDマガジン Vol39」に封入されている物です)有料動画配信は行われていません。

 

 

尚、chNECOに於いて本日以降11/3(日)05:20・11/7(木)08:05の二回放映されます(字幕付きHD放映)。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

※chNECOの作品案内・放映日時案内は此方から

 

 

 

川崎の小学校を舞台に「東京湾の汚染で海苔関連の仕事から弁当屋に転業をした両親(牟田悌三・谷口香)・姉(原田美枝子)・住み込みの従業員(松田優作)と共に住むわんぱく坊主(阿部仁志)」と「岩手県で開拓農業を営んでいたものの、事業に失敗した両親(高原駿雄・石井富子。岩手県に在住している高原さんの兄は下川辰平)・妹と住む、川崎に越してから喘息にかかった女児(鈴木典子)」の心の交流を、二人の児童の担任である地井武男の目線を交えて描いた物語。

 

 

地井さんは「転校当初は明るく活発だった鈴木さんが喘息に罹った後は人が変わった様に暗くなった事」を危惧し、嫌がらせも厭わない傾向が在ったものの「鈴木さんの現状打破には阿部さんの様な子供が最適ではないか…」と考え、教室で隣同士の席とした所「似た様な境遇を持つ両親の元で育った経緯も二人が近付いた理由」ではあったものの、その目論見は成功します。

 

 

しかし、二人が仲良くしている事を牟田さん・谷口さんは良しとはしていなかったのです。何故なら「同じクラスの父兄同士で、もし、鈴木さんが遊びに来た際に喘息の発作を起こされたら誰が責任を取らなければならないのか?」「喘息は結核の様な感染の心配はないものの、特に我家は食品を扱うから「咳をしている子供が出入りをしている事」が解っただけで商売が立ち行かなくなる。それが現実」と…阿部さんはこれに真っ向から反論し、夜中の街に飛び出して行ったのですが…

 

 

 

 

 

 

「当作品における不条理は「病気に関する真実と現実の落差」それを純真無垢な子供が両親に訴えかける内容」そこに「健康な子供が居住開始直後に持病を抱えてしまう程公害が問題化していた当時の日本の工業地域の現状…しかし「食い扶持を得る為」にはそうせざるを得ない親の辛い決断」「親の背中を見ている子供達が、親の意思と全く同じ思考を持ってしまい、それが結果として転校生を孤独な立場に追い込んでしまった側面」等々を絡めて描いている「児童映画の枠を超えた、現代社会の病巣にも関連付ける事で様々な事を考えさせられる作品」。

 

 

「優作さん・原田さんが出演をしているから」と言うのが一番の鑑賞の理由でしたが、見終えてからは「優作さんは気のいい阿部さんの実兄代わりの存在、原田さんはしっかり者で現実直視も年齢相応以上の姉」と感じる程度で、寧ろこの奥深い内容と、教壇から子供達を見下ろす姿勢で接してはいるものの、心は子供と同一目線である事が明らかな地井さんの担任役の方が遥かに印象に残りました(自身の考え方と信念・目的を包み隠さず話して、牟田さん・谷口さんの誤解を解いたのも地井さんの尽力が有ったからこそです)。

 

 

 

 

 

 

つい先日、関西地方の公立の学校で「教員内に於ける虐め」が発覚し大問題となっていますが「子供は親の背中の他に、教員の背中も見て育つ」と云う「基本中の基本」を覚えてすらいなかったのではないかと感じる呆れ果てる事件!

 

 

我々の世代に於いて「先生に殴られても納得し、両親もそれを容認していた理由」は(教員全員ではないものの)「自らの背中を子供達は見ていると云う意識があった教員」「採用直後から「教育のプロ」として周囲から「先生」と言われる事に対して恐縮し、子供達と共に自らも成長して行かなければならない特殊な職業であると云う意識付けがきちんと出来ていた教員」等々が多数を占めていたからではないかと考えます。

 

 

営業時代に教員の方々ともお話をする機会は在りましたが、退職者や古参教員の中には「いい方」も多数居られたものの、現役の教員の大多数は俺には肌が合わず、非常に苦手でした…何故なら「自らの勉強の成績がいい事と教え子の進学状況の実績を強調し、人間関係作りを拒絶するかの様な態度を取られる方々も少なくはなかったから」これでは子供達に物事を真面に教えられない筈だわ…

 

 

「これからは教壇に立つ前に、民間企業での職務経験を数年間積む事を義務化して、教えられる立場の経験もさせなければ駄目なのではないか?」と今でも思っている程です。

 

 

勉強だけが出来る子供を育てるのは学習塾と家庭教師に任せればいい!「家庭と双璧の位置に存在する人間形成の場が学校である!」と云う基本に立ち返るべき!

 

 

当作品での「地井さんの担任役」は(創作ですから「出来過ぎ」「理想形」等々と見られる方々も居られるとは思いますが)「現代の教育現場に楔を打ち込む、教員資格を持った俳優・武田鉄矢をも凌駕する、地井さんの善人芝居としては生涯でも指折りの名演」と言ってもいいかと思います。

 

 

 

最後に…没後30周年祈念の「優作さん特集」は今月から令和元年12月にかけて、chNECO・東映ch・ホームドラマchで企画されており、ホームドラマchではテレビドラマ版「探偵物語」全話が、東映chでは主演映画/主演単発テレビドラマの他に「オシャレ30・30」(NNN系列放映)の優作さんの出演回が放映される予定です。