(再掲載)日活ロマンポルノ「哀愁のサーキット」峰岸隆之介・木山佳/村川透監督。GYAO!で配信中 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

●この記事は平成30年12月18日の記事を再編集の上再掲載しています。

 

 

皆様、こんばんは。

 

 

昨日22時に勤務を終え、風呂と夕飯を済ませた後此方の作品を再鑑賞したのですが、以前紹介した時は東映chを通じて鑑賞したものの鑑賞環境が恵まれている作品とは言えませんでした。しかし、今日再鑑賞し「再度皆様にお薦めしたくなった」「最近になりDVDが発売された」「GYAO!で現在無料動画配信中である」為、改めて紹介させて貰います。尚、この記事は自宅に有る著書・ウィキペディア・ウェブの検索を行い読んだ幾人かの方々が書かれていた鑑賞録・東映ch内で過去に放映された情報番組等々を参考に打ち込みをします。

 

 

 

「山形が生み出した名監督」村川透監督。

 

 

実兄で山形交響楽団の創立名誉指揮者である村川千秋を全面的に支えたりと「兄弟の仲・信頼関係は良好なのだろうなぁ」と思っていたのですが「悪の中にこそ真実と美が有る。そしてそれ等を徹底的に見せる事で真実や愛が生まれる」「物を作る以上は革命的(反社会的)でなければいけない。私の作品は危険性が持ち味」「私の作った作品は私の子供にも見せる」等々を身上とする村川監督に対して「善の中にしか美と真実は存在しない」「子供に見せられない映像作品は作るな、が私の考え方。その相違から兄弟で大喧嘩になった事が有る」と言う千秋氏。

 

 

「様々な人間関係に於いて、嗜好に関して意見の相違が存在する事」は当たり前、大切なのは「その嗜好の違いを全否定せず認め合い、時にはお互いが支え合って助け合う村川監督御兄弟の様な姿」なのでしょうし、我々がこの事から学ぶべき事、特に「この様な世の中」ですから非常に多いとも思います。

 

 

 

この事を知ってから、今日紹介する「村川監督が演出を手掛けられた日活ロマンポルノ三作品の一つ」(この作品を最後に、村川監督は数年間映像業界から身を引き、山形に帰郷し先述の「山形交響楽団創立」に多大な寄与をする事となります)を観賞すると「兄弟で大喧嘩をしてしまった兄に対する、村川監督の回答なのかなぁ」と感じた次第です。

 

 

 

「哀愁のサーキット」昭和47年12月27日公開・村川透/古屋和彦の共同脚本・村川透監督・日活制作。

 

 

村川監督の回想によると、先日ご逝去されたセントラル・アーツの黒澤満社長から(当作品公開当時は村川監督・黒澤社長共に日活の社員でした)「正月作品の監督を遣ってみないか?」と言われたのだそうで、制作予算も通常期の作品よりも幾らか多かったとか。

 

 

音楽担当は井上陽水夫人の石川セリで、序盤で「酒場の舞台に立つ歌手」として出番は短いですが出演をされていますし、女性歌手役で東映出身の木山佳(当作出演の前には東映京都「残酷異常虐待物語・徳川女系図」では第一部の「橘ますみの実妹役」を、「やくざ刑罰史・私刑(リンチ)」では第三部の「地下賭博場の女性胴師役」を、「異常性愛記録・ハレンチ」では「若杉英二が按摩を施されている最中に抱かれる情婦」を、東映東京「不良番長・どぶ鼠作戦」では「中盤で梅宮辰夫が呼び寄せたストリッパー」等々を演じられています)の歌唱場面に於いては「石川さんの持ち歌をそのまま嵌め込む形態(通称・口パク)」となっています。

 

 

DVD化作品で有料動画配信は行われていませんが、何度か大都市部の名画座等々で公開された実績が有る模様ですし、東映chでは複数回放映されています。又、先述の通り現在GYAO!で期間限定の無料動画配信が行われており、12/7(月)23:59迄鑑賞可能です。

 

 

下の写真は左・峰岸隆之介(後の峰岸徹)/右・木山佳。尚、峰岸さんが改名された切っ掛けは当作品での村川監督との出逢いなのだそうです。「透」に対して「徹」と、字は違いますが…

 

 

 

 

 

 

新進気鋭の女性歌手である木山さんと、自動車競技の選手としてだけではなく宣伝媒体に於ける被写体としても人気者であった峰岸さんの「出逢い・再会と数日間の逃避行・衝撃の結末」を描いている佳作です。

 

 

石川さんの名曲である「海は女の涙」が、当作品の最大の主題。

 

 

そして、当作品は「東映出身で後に歌手として活躍をされた小川知子と、福沢諭吉の曾孫で20代にして自動車競技選手・宣伝媒体の被写体・会社役員等々各方面で活躍されていたものの、自動車事故で若い命を散らしてしまった福沢幸雄の恋愛」を基に制作をされています。

 

 

下の動画は、福沢さんが出演をされていたトヨタ・P20型パブリカの宣伝映像です。

 

 

 

 

 

 

当作品を制作するに当たり、村川監督は奥様の協力を仰いだ上で峰岸さんと木山さんを自宅に招き、部屋を提供して一時的に同棲をさせたのだそうで、作品内での情交は「本当に交尾を行ったのでは?」と評判になった位だったとか(但し「事実確認」には至っていない為、確実視は出来ません)。

 

 

識者や映画評論家、そして先述した「皆様の鑑賞録」を読むと「中盤から終盤にかけて、スズキのワゴンR・スティングレイ…ではなく、シボレー・コルベット・スティングレイに乗って逃避行をし、束の間の心の安らぎを得る峰岸さんと木山さんの恋愛風景が長々と映し出される退屈感」を指摘される声も見受けられたのですが、俺も村川監督の著書等々を読んでいなかったならば「同様の感想」を抱いたと思います。

 

 

しかし「撮影秘話」そして「村川監督御兄弟の嗜好の相違」等々を知っていた為なのだと思いますが「実兄が納得をしてくれるポルノ作品(又は「革命的・反社会的な作品」)とは?」と考え辿り着いた結果が「虚飾の世界である事には変わりはないが、現実の恋愛模様に限りなく近い姿を映像に焼き付ける事だったのでは?」と。事実峰岸さん・木山さんの遣り取りは芝居を超えた素の人間性そのものと言ってもいい程自然に見えて来ます。

 

 

同時に「村川監督は音楽性が非常に高く、俳優に注力する傾向が強い。反面、女優に対しては固執している雰囲気が見られない」と云う記載が見られますが「ポルノ映画(ピンク映画)=女優を見に行く(興味を示す)観客が多数」である事は現在も同じでしょうし、当作公開当時は「自宅でこの類の作品を観賞する事は「ブルーフィルムに精通している極々一部の方々」を除き不可能」でしたから現在以上にその傾向は強かったでしょう。

 

 

しかし「女優だけでは成り立たぬ作品群であり、関係者全てが女優に注力をし続ければ徐々に先細りし行き詰る危機感」「日活ロマンポルノの「一定条件を満たせば題材は自由」を生かして、自らの嗜好・思考・志向等々を存分に生かしたい」等々の意識を持っていたであろう村川監督が「木山さんより峰岸さんに注力した姿勢」は正解だったと思います。

 

 

事実、村川監督の劇場公開作品デビュー作品である「白い指の戯れ」では荒木一郎の芝居が評判を呼び、後に地井武男・室田日出男・内田裕也・石橋蓮司・本間優二等々「俳優陣が主演・実質主演を務めた作品群が高い評価を得る結果」となっていますから「俳優の存在感が女優よりも強調された日活ロマンポルノ作品群の先駆者は村川監督である」と言えます。

 

 

 

「永田大映末期の期待の星であった峰岸さん・東映で脇役ながらも実績を着実に積み重ねて来た木山さんの顔合わせで、日活ロマンポルノの新年を口開けを行った事」「日活が常に新たな挑戦や異色の顔合わせ等々に邁進して行く姿勢を観客に示したもの」と受け止める事が出来そうです。

 

 

 

 

 

 

因みに「大映出身という経歴を上手く利用した演出」なのか「峰岸さんの即興芝居」なのかは解りませんが(先述した事柄から、俺は「後者」だとは思っているのですが)峰岸さんは海岸で立木を手にして、大映の大先輩である勝新太郎の代名詞「座頭市」の真似事をして木山さんを一笑させる滑稽さを見せてくれています。

 

 

そして木山さんが「自家用車」として使用していた劇用車は日産・CSP311型シルビアなのですが「村川監督の当時の自家用車がシルビアだった」と自著に書かれており、劇用車として使用されたこのシルビアが「村川監督の愛車である可能性」が有ります(確信出来るだけの記述等々は確認が出来なかった為、あくまでも俺の憶測です)。

 

 

 

東映制作のテレビドラマ「特別機動捜査隊」に出演されていた日高悟郎が「一度は峰岸さんに挑戦状を叩き付けながらも信頼関係を構築し、終盤で危機を救う暴走族の一人」として、公園内に於ける「峰岸さん・木山さんの前で夫婦喧嘩の芝居をするアングラ劇団員」として絵沢萠子・江角英明も登場。そしてこの当時松竹を主体に活躍されていた槇摩耶と(木山さんの「愛嬌を融合させたかの様な美貌」をも掠めさせてしまう程の「これぞ美人!」と言える女優」です)この頃はまだ新人であった岡本麗(作品本篇に於いてはノンクレジット、KINENOTE上では本名の「戸塚あけみ」名義)が「峰岸さんと情交芝居」を見せています。