部落解放の父・松本治一郎の半生。東映京都「夜明けの旗・松本治一郎伝」伊吹吾郎/山下耕作監督 | 東映バカの部屋

東映バカの部屋

東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み二日目、朝の冷え込みが厳しい上に曇り空…この記事を書き終えたら、昼酒を飲んで身体の芯から温めようかと考えています。

 

 

 

さて本日は「部落解放の父」で戦前は衆議院議員、戦後は日本社会党及び左派社会党の参議院議員として活動された松本治一郎の半生を、部落解放同盟の協力を得て「松本治一郎没後十周年祈念」として制作された作品です。

 

 

「同和教育作品」と思われそうですが「一般公開作品」ですし、岡田茂・前東映名誉会長(当作品公開時は代表取締役社長)は「部落解放同盟の会長を呼び付けて「お前の所、もっと切符買え!」と迫った」らしいです。それが功を奏したのか、6000万円の黒字を達成!

 

 

東映作品は「真偽」を別として「秘話」が更に作品を面白くさせる要素が非常に多く、東映ファンとしては「秘話も作品の一つ」として捉えている方々が俺も含めて多いものと思います。

 

 

 

「夜明けの旗・松本治一郎伝」昭和51年10月16日公開・棚田五郎/野上静雄の共同脚本・山下耕作監督・部落解放同盟制作協力・東映京都制作。

 

 

未VHS/DVD化作品で有料動画配信も行われていませんが、今月と平成30年11月の東映ch「お蔵出しリクエストシアター」の枠内の一作品として、本日以降11/8(木)20:00~22:00・11/20(火)13:00~15:00に放映されます(HD放映)。

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

※東映chの作品案内・放映日時案内は此方から

 

 

 

松本議員に関しては「大陸時代の偽医者問題」「板付飛行場(現・福岡空港)の利権問題」等々、部落解放同盟に関しては「暴力団との関係」「資金源の透明性」等々の問題や疑惑が存在している上に、一部からは「部落解放同盟の主張・活動等々が部落差別の温床となっている」と云う指摘がされている事は俺も承知です。

 

 

当作品に限らず「特定の団体(部落解放同盟の他に私企業・宗教団体等々)が「明らかな意図」を持って制作に参加した作品」「政治史」「実話を基にした事件物」「偉人伝」「戦記作品」等々に関して「批判が集中する傾向」が有りますし、そうなるのは仕方がない事でもありますが、俺は「あくまでも映像娯楽作品として成立し、その中で事実や軌跡を伺い知る事が出来たり、問題提起等々が出来ているのであればそれで良し。営利が成り立ったのであれば尚良し」と考えます。

 

 

そして「自身の思考・志向等々に反する主張を知る事」「事実の概要を掴む切欠となる事」等々も「視野を広め、思考が偏らない様にする為」には非常に大切です

 

 

 

明治末期の徴兵検査で、被差別部落出身者に対し差別を行った係員との遣り取りが原因で「差別が無い事」を願って中国大陸に渡ったものの状況は変わらず(「中国大陸では偽医者であった事」が台詞として語られています)加えて一部の華族や軍幹部等々が利益を貪っている現状に幻滅し帰国をした松本治一郎(伊吹吾郎)。

 

 

後に実兄(品川隆二)の稼業である土建業を手伝い始めたものの、敵対する土建業者と喧嘩になったり、土地の名士(遠藤太津朗)が「被差別部落には用水を使用させない」と言い放った為に一悶着となったり…

 

 

更に伊吹さんは、暴漢から救った檀ふみと「差別関係を乗り越えた恋愛関係」を築き上げたものの、ふみさんの両親(中村錦司・菅井きん)の猛烈な反対により頓挫し、同じ部落に住む長門勇は病身の愛娘が医者に見放された状態となり絶命する等々、散々な状況に我慢がならなくなっていたのです。

 

 

そんな時「部落出身を理由に、宗派内で差別を受けていた僧侶」の小池朝雄から「水平社」の存在を教えて貰った伊吹さんは長門さんや同級生で舞台役者の田中邦衛、そして長門さんの愛娘の交際相手だった名家の息子である岡田裕介(現・東映会長)等々と共に「部落解放の実現」に人生を注ぐ決意を固めたのです。

 

 

しかし道程は険しく、国家機関や警察・大日本帝国軍等々の「謂れの無い妨害行為」を受け続けながらも果敢に戦い続けていたものの「福岡連隊差別事件」が伊吹さんを「人生の曲がり角」に追い込む事に…

 

 

 

俺の居住地の秋田県・郷里の岩手県を含む東北地方は、考え方や受け止め方に個人差が有りますが「被差別部落の存在は確認されているものの、それが殆ど機能しなかった名残で目に見える差別が無く「部落」も「集落」を意味する言葉として普段使いしている言葉」である為(その代わり「言葉(方言)の違いや出生地に関して敏感で、県内出身者(同一市町村出身者)以外の余所者は地域として(個人として)受け入れようとしないか偏見する傾向」が地域・個人により非常に強く残っている事が多く「部落差別とは違う差別」が存在しています。これも「部落差別と双璧を成す大問題」ですし「表面上に出ない事が多い点」に於いては「部落差別以上の問題である」とも言えますが、その事すら感じない方々や地域が多いです)「同和教育」自体が存在しておらず、恥ずかしながらも俺が「同和教育」と云う言葉と存在を知ったのは成人後でした。

 

 

それも在ってなのでしょう、俺は「この年齢」となっても部落差別に関しては疎いままですので「壮絶な部落差別の現実と果敢な戦いの一部始終を知る事が出来た」だけでも「大きな収穫」でした。

 

 

昭和37年に島崎藤村の原作を市川崑監督・市川雷蔵主演で大映京都が制作した「破戒」とは違う物語で「いい勉強」をさせて貰えたと思っています。

 

 

 

 

 

 

しかし「非科学的な温床がこの現代に至る迄根強く残っている事」は解決すべきでしょう。

 

 

人間の体内構造に関して未知な部分が殆どであった遠い過去に於いて「悪い家計は血から絶たなければならない」と「被差別部落の創設に至った事」は時代背景等々を考慮すると「止むを得なかった面が有る事」は否めませんが(現在に於いても途上国や後進国に於いて「信仰上・土着した思考の場合」も有るものの「同様の傾向」が多数存在しています)「不肖の家族・家系を反面教師として生かし、立派な人物となった事例」「汚れの無い家族・家系から不肖の存在を生み出してしまった事例」双方共に無数に存在しているのですから「非科学的な根拠を抹殺する事」はその点に気付けば案外容易の様にも感じます。

 

 

とは言っても「根付いてしまった事」は現実として「頭では解っていても、俺も含めて「自らが一番可愛く一番に守りたい存在である」と云う志向・思考」が改められなければ難しいでしょうが(この「志向・思考」を改める事自体も非常に難しいでしょうね。これが「二つ返事」で出来、貫き通す事が出来たら正に「善人そのもの」でしょう。俺は「そうなる自信」は未だに有りません)。

 

 

 

内容は「元々生真面目な伊吹さんの素の人間性を存分に生かし切る事の出来た快演」とも言え「伊吹さんの代表作品の一つ」として見てもいい内容ですし「軍部側の幹部として室田日出男・山本麟一・神田隆等々が、警察関係者として菅貫太郎・岩尾正隆等々が安定した灰汁を見せ付けている」「長門さんや小池の朝さん・野口貴史・根岸一正等々の人間味溢れる善人芝居」「作品の意図から逸脱しない範囲内での滑稽さを見せたエンタツさん・邦衛さん」等々「其々の役者陣の奥深さを堪能出来る点」でも「中々の娯楽作品」として成立しています。

 

 

勿論「東映」ですから「暴れる場面の面白さ」は折り紙付き!

 

 

「福岡連隊差別事件」の経緯を克明に描いた「当作品の肝」とも言える「中盤から結末迄の物語」は、任侠映画ややくざ映画に於ける迫力や駆け引きにも全く引けを取らない「手に汗を握らせる内容」です。

 

 

 

他の出演者は、浜村純・毛利菊枝・滝田裕介・北村英三・小泉洋子(現・沢野火子)・穂高稔・河合絃司・片桐竜次・伊沢一郎等々です。