(追記有)文太・天知の「新東宝俳優組合コンビ」が共演!東映京都「まむしの兄弟・懲役十三回」 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

●この記事は平成29年7月31日(月)12:35頃に追記の上再掲載しています。

 

 

 

皆様、こんにちは。

 

 

休み最終日、朝から既に不快指数上昇中の秋田市内です。

 

 

 

先日、相互読者さんの記事を読み気付いたのですが、7月27日は天知茂の御命日(昭和60年7月27日逝去・享年54歳)。

 

 

郷里の両親が余りに突然の訃報に驚いていたのを未だに記憶しています。

 

 

そして「新東宝俳優組合」の委員長・天知さんと副委員長・文太さんは新東宝倒産直前「給与遅配交渉」と共に「社の灯を消してはならない」と二人で陣頭指揮を取り、活動をしていた事を文太さんが生前「キネマ旬報」内で語られていました。

 

 

倒産後、天知さんは「本数契約を結んだ」大映と「兄貴分であった鶴田のおやっさんが在籍していた関係」で東映が主戦場となり(他に松竹が数本。東宝出演歴はウィキペディアを調べた限りゼロです)文太さんは松竹を経て東映に移籍。

 

 

東映の劇場公開作品でこのお二人が共演されたのは山下将軍監督・東映京都制作・松方さん主演「修羅の群れ」の他には、本日紹介するこの一本のみです。

 

 

 

「まむしの兄弟・懲役十三回」(「まむしの兄弟シリーズ」第三弾)昭和47年2月3日公開・斯波道男原案・高田先生/中島村長の共同脚本・中島村長監督・東映京都制作。

 

 

VHS/DVD化作品でDMM.com/GYAO!ストア/U-NEXT内で有料動画配信が行われています。

 

 

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 
 
 
併映作品は「女番長(すけばん)ブルース・牝蜂の挑戦」(「女番長(すけばん)シリーズ」第二弾・皆川監督/ソクブン監督の共同脚本・ソクブン監督・玲子姐御主演・東映京都制作。DVD化作品ですが有料動画配信は有りません。KINENOTEの作品案内は此方から)。
 
 
 
 

 

 

 

東映ファンやこの種の作品群が好きな者にはたまらない「涎物の番組構成」は公開から大凡46年経った現在に於いても非常に魅力です。

 

 

 

俊藤統括の意向で「まむしの兄弟シリーズ」では唯一、時代設定は戦前(昭和10年頃)である上、大凡10日間、東京で撮影が行われています。

 

 

この作品について、中島村長は自著で「会社更生法適用後の大映の面々をエキストラで起用する様に東映側から要請されたものの揉めた事(最終的には或る地域の老人会の方々にお願いしたそうです)」「持病の胃潰瘍の悪化により吐血し、撮影が数日止まった。更に東京での撮影が有った関係で「完成後の再入院」を条件に担当医師から「食事の際の注意」と、もし東京滞在時に緊急を要する場合に連絡する病院を紹介して貰い治療もそこそこに上京した(但し「面倒」で、再入院はしなかったそうです)事」しか覚えていないとか。

 

 

作品に対する愛着や印象も「余り無い」と語られていますので、中島村長自身「好きな作品」ではない模様…

 

 

しかし、小沢天皇が自身で「唯一の失敗作」とお話しされていた作品を鑑賞したら「失敗作どころか、視点の切り口を変えたかなり面白い作品であった」様に「懲役十三回」も俺は「シリーズの中で三番目に好きな作品」です。

 

 

 

何時もの様に出所を出迎えた川地さんに放った文太さんの一言は「東京に行こう!」。

 

 

何故なら、ムショで兄弟分になった天知さんが「出所したら一度東京に来ないか?」と誘っていた為。

 

 

しかし列車内で「人はいいのだが世間知らずの無教養ぶり」を発揮した為に未成年のスリ(雷門ケン坊)に財布を奪われ、東京に到着後も「無賃乗車」(「無一文で女郎屋に入り浸る事」等々をこの様に言う事が有ります)した為に川地さんが女郎屋に「人質」として取られたり…

 

 

紆余曲折を経てやっとの思いで天知さんと出逢い、金の心配は無くなったものの、実は天知さんの組織は兄貴分に当たる小池の朝さんの妨害に逢い「本業・縄張」双方に於いて極致に立たされていたのです。

 

 

そんな中、天知さんは大阪の腕利きの興行師(アラカン)の助けを貰い、組織の状況が好転しつつあったものの、そんな事情を知らない文太さん・川地さんは何時もの様に「お節介」を働き朝さんに挑戦した事が発火点となり、最後の戦いに至ります。

 

 

 

簡単な流れや主題は上記の通りですが、其方より印象に残るのは「社会の底辺を強かに生きる人間達の明るさ・苦悩・心の温かさ」。

 

 

この点は「反権力志向」と共に当シリーズの「特徴の一つ」ですが「底辺の幅を更に広げて、様々な境遇と職を持つ人間達の姿や心情を複雑に絡めながらも面白可笑しく、時には心に染入る演出を端的に描く事」を確立したのはこの「懲役十三回」だと思っています。

 

 

全九作品中、中島村長が五作品、本田達男(後に企画部に転向)/山下将軍/ソクブン監督/栄一監督が各一作品ずつ演出を手掛けられましたが、この世界観は「幅広さ」に差が有るものの見事に受け継がれていた上に、其々の特色を生かした演出を比べながら楽しめる点に於いても「娯楽作品の中でも相当な位置に在る傑作シリーズ」であると断言出来ます。

 

 

 

文太さんが一目惚れした舞台女優・光川環世を信じ切って預かった赤子を「百貨店内に於けるおむつの実演販売の場面で「練習台の人形はアレが無いから女、うちの子は男。交換でアレが潰れたら将来使い物にならなくなって大変だが大丈夫か?」と多数の奥方が居る前で言い放つ!」等々の「大馬鹿笑い」を交えながら「母親の居ない子供の寂しさを身に染みるだけ知っていた分四六時中赤子に尽くし、交際相手(村井国夫)と共に九州に逃げたものの捨てられ傷心で帰って来た環世さんに「赤子の傷心」を代弁した上「子供の寂しさと母親の存在の重要性」を怒鳴りつけながら訴える文太さんの優しさ」が光ります。

 

 

勿論「無知が生み出す人の良さを大馬鹿芝居で見せる場面」も多数存在していますし、当作品では浅草の女給に扮した三島ゆり子も「文太さんの一番の理解者」として何時もとは違う「いい芝居」を見せてくれています。(女屋美和子も当作品では別役です)

 

 

 

そして「文太さん・天知さんの関係」は「お互いが「自分には無い物」を求めた上にそれに惚れ合い、ムショ兄弟の盃を交わした趣」と取る事が出来ますし、その証拠に天知さんの芝居は「眉間の皺の出現割合はいつもより少ないものの、一貫して硬質な芝居を見せている」と言えます。

 

 

日常の我慢や苦悩等々を「文太さん達と過ごす短い時間」で晴らしていた様にも見えます。

 

 

余談ですが、天知さんの「台詞廻しや間の取り方・我慢の表現方法」は或る程度、兄貴分の鶴田のおやっさんから学んだ様に思えます。

 

 

 

他の出演者は、高橋とよ・北村英三・潮の健さん・葵三津子・武智豊子・集三枝子・高宮敬二・有川正治・西田良・林の彰さん・中村錦司・谷村昌彦・高並功・広瀬義宜・志賀ちゃん・岡部正純・岩尾の正さん・福本先生・奈辺悟・白川浩二郎・木谷邦臣・笹木俊志・須賀良等々です。

 

 

 

 

最後に、東映chのホームページ内「What's New」に「石井輝男監督十三回忌追悼関連番組のお知らせ」が7/27(木)に掲載され、平成29年10月4日に東映ビデオよりDVDが発売される「江戸川乱歩全集・恐怖奇形人間」(PG12)が10月に、「残酷・異常・虐待物語 元禄女系図」(R15+)が11月に、「やくざ刑罰史・私刑(リンチ)」(R15+)が12月に東映ch内に於いて初放映される事が決定しました。

 

 

尚「等級分け」ですが、公開当時は「成人指定」(現在の「R18+」に相当します)だったものが再審査によりこの様になった模様で「公開当時の映像には一切手は付けられていない」との事です。

 

 

 

 

 

 

 

 

※東映chの総合案内は此方から

 

 

「恐怖奇形人間」「元禄女系図」は初鑑賞ですので楽しみ!

 

 

そして「私刑」はVHSにダビングした物を一時期繰り返し見ていた位好きな作品でしたので「待っていました!」と、既に心が小躍りしています。

 

 

 

●追記はここから

 

 

先日、購入の際皆様に紹介した「異端の映画史・新東宝の世界」(洋泉社・刊)内に於いて「新東宝スカーレット六期生」の一人で、文太さんの同期に当たる星輝美が「文太さんの当時の素顔」を語られています。

 

 

 

 

 

 

輝美さんは文太さんを「文ちゃん」と呼んでおり、最初は「スキーが上手かったのが印象的だった」と。

 

 

しかし一時期、文太さんが干された事が有り、その原因は「輝美さんの母親が「文太さんがやたらと娘に煩く言って来る」と大蔵社長に苦言を呈した所「これから売り出そうとしている女優になんて事をするんだ!」と激怒した為(文太さんが24歳の時に輝美さんは18歳。輝美さんの母親が「不良のあんちゃん」と勘違いした事も有る様です)」なのだそうです。

 

 

当の輝美さんは「読書を勧められたり、異性との交際に対して色々口を出して来る事も有ったものの「お茶を飲みに行き降雨に見舞われた時、知らない間に居なくなり何処に行ったのかと思っていたら、私の為に傘を買って来てくれた」等々、物凄く優しかったし可愛がってくれた」と感謝されていました。

 

 

「何時かこれ等のお話をしなければ」と思っていたら逝去された事を悔やまれても居ました。

 

 

「或る作品の撮影で、元々仲の良かった宇津井健と色々話しているのを観ていた文太さんが機嫌を悪くしてしまった」事も有るそうですが、後に引かなかった辺りはやはり文太さん「男」です!

 

 

 

●補足

 

 

この書籍では上記の「東映ビデオからのDVD発売及び東映chで初放映予定の石井センセイ三作品」全てに出演している吉田輝雄との対談も掲載されていますが「俳優業の前は湯浅電機(現在のGS YUASA)の社員だった事」「新東宝倒産後、初めに松竹に行ったのは東映との出演料の差が大きかったから(後に東映に移籍)」等々のお話をされています。

 

 

又「ハンサムタワー」の面々について、高宮敬二・寺島達夫は其々「高宮君・寺島君」と呼び、文太さんの事は「文太」と…

 

 

年齢は二年程文太さんの方が上なのですが「信頼関係が生んだ関係」なのかなぁ…文太さんも輝さんを「吉田」と言われていますので。