追悼・松方さん。「懲りない馬鹿」が体制側で黒幕を追う!東映京都「明治暗黒街」栄一監督。 | 東映バカの部屋

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東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。
 
 
休み二日目…昨日7時の勤務終了から水曜日8時の始業時迄の73時間休みです。
 
 
降雪量が今季一番とはなりましたが冷え込みは緩く、既に相当融けています。住宅地等々の側道はまだ除雪前ですので走り難く歩き難いですが、除雪の済んだ幹線道路は夜中であったとしても、制限速度一杯で走行可能です。
 
 
さて、年頭に飛び込んできた「東映と共に歩んだ実録ヤクザ映画路線の顔、そして、永遠に愛され続ける懲りない馬鹿」の松方さんが旅立たれてから既に大凡三週間となりました。
 
 
東映ファン・ボンクラ映画ファンの心を鷲掴みにする「凄味・しつこさとしぶとさ・雄の欲望の極北」等々を徹底的に追い求め、それを見事に見せつけ心底楽しませてくれた事に心から感謝です。
 
 
「懲りない馬鹿」は松方さんだけに許される「誉め言葉」であり、旅立たれても我々の心の中ではこれからも生き続けて行きますし、伝えて行きます。
 
 
有難うございました。そして安らかに身体を休めて下さい。心よりご冥福をお祈り致します。
 
 
 
その「松方さんの懲りない馬鹿」が「体制側で利用されたらどうなるのか」?
 
 
本日紹介させて貰う作品自体は昭和40年製作ですので、勿論この頃の松方さんには「灰汁も凄味も」まだそうは備わってはいません。
 
 
しかし、錦之助御大や橋蔵御大との共演作品では「兄貴分を慕い、煙たがられても懲りずに何処迄も追いかけていく」違った「懲りない馬鹿」を演じさせると「光る物が有った」のも事実。
 
 
その点を上手く生かした中々の作品ですが、日の目を見られずにいる「隠れた秀作」です。
 
 
 
「明治暗黒街」(殆どの映画関連情報では「やくざGメン・明治暗黒街」となっていますが、企画段階での名称を公開直前に短縮したものと推測します)昭和40年11月13日公開。村尾昭/ソクブン監督の共同脚本・栄一監督・東映京都製作。
 
 
未VHS/DVD化作品で有料動画配信も有りませんが、東映ch内にて平成24年7月に放映されました。
 
 
今回は画像が準備出来なかった為、自宅のテレビから撮影した物を使用します。
 
 
 
 
 
 
※KINENOTEの作品案内は此方から(「やくざGメン・明治暗黒街」の題目となっています)
 
 
 
明治30年代、ロシアとの開戦を控え大日本帝国は奉天に情報機関を設ける為に、資金として膨大な金塊を使用していました。
 
 
その輸送には海路を利用するのですが、港湾迄の輸送に鉄道を使用した際に金塊が強奪された事を切欠に自動車による陸路に切り替えたものの、再び強奪に…そして、この事件の専従捜査員が惨殺される事態にも見舞われてしまいました。
 
 
「何処かに裏切り者が居る。もしかしたら警視庁内部にも…」と考えた刑事部長(月形龍之介)は、実娘(小川知子)の許婚で三年ぶりに米国の研修から帰国する警部補(松方さん)を「浅草に潜入させて黒幕を暴く」事を決めるのです。
 
 
「暗黒街に顔と素性を全く知られていない上、米国の捜査手法(盗聴・囮捜査等々)を勉強してきた松方さん」こそが潜入捜査には最も適任である為…
 
 
 
書類を捏造し「米国での買収行為・暴力行為による国外追放」及び「それ等の事件の容疑者」として松方さんの身柄拘束を同僚の千葉ちゃん等々に命じたガタさん。
 
 
全く身に覚えの無い容疑で困惑する松方さんと「何も無い」と信じたいが命令に従うしか無い上、事情を何も知らない千葉ちゃんは混乱しますが、松方さんは逮捕は逃れたものの、警視庁を懲戒免職になります。
 
 
 
暗黒街を着流し姿で縦横無尽に歩く松方さんと、元同僚の潔白を信じ独自の捜査を進めながらも免職後の松方さんの行動を目の当たりにして幻滅し始める千葉ちゃん…
 
 
松方さんは「兄貴」と慕うチンピラの新伍ちゃんと、暗黒街の事情に明るい写真屋の邦衛さんを両腕に従え、捜査員では決して足を踏み入れる事の出来ない「暗部」へ入り込み解った事…
 
 
「暗黒街の頭(敏さん)とビリヤード場を切り盛りする女将(クボナオの姐御様)が繋がっている事」それと同時に千葉ちゃんは「警察内部の裏切り者は警視の要職に就くスガカンであった事」そして「敏さんは単なる捨て駒であり、直接黒幕との関係を持っていたのはクボナオの姐御様とスガカンで、その黒幕は陸軍省の顔効きの近衛御大である事」を突き止めるのです。
 
 
そして金塊の争奪戦も最高潮に…「俺達に危険な仕事ばかりさせてのうのうとしている黒幕を一泡吹かせてやる!」と敏さんは金塊の横流しを決行したものの、松方さんに察知され失敗!
 
 
その金塊は松方さんの手で警視庁に運ばれる筈でしたが、事前に電話連絡を受けたガタさんの目の前に居たスガカンはガタさんを気絶させ黒幕と共に「ガタさんの身柄と金塊の交換」を段取りましたが…激しい銃撃戦の上ガタさんは無事助け出されます。
 
 
そして「苦楽を共にした仲間さえも自ら葬り、その場を離れて金塊を独り占めにしクボナオの姐御の元へ向かった敏さん」でしたが、近衛御大に葬られ、クボナオの姐御も逮捕に向かった松方さんを「近衛御大の放った銃弾から守る為」抱き付き命を絶ちました。
 
 
 
事件解決と共に、微笑み一つでこれ迄の誤解と確執を洗い流した松方さんと千葉ちゃん。そして知子さんが松方さんの背中を追う姿で物語は終わります。
 
 
 
 
 
 
当作品の大凡10年後に見せた「松方弘樹東映脱獄三部作」等々で見せた「懲りない馬鹿」に比べたら「かなり静かな懲りない馬鹿」ですが、職務遂行の為に危険を顧みずとことん暗部に入り込み膿を全て出し切らせた姿は、その後の松方さんの「お家芸」の片鱗を感じさせてくれるものが有ります。
 
 
電話交換局に着流し姿で訪れ「規則で電話の相手は教えられない」と言った女性電話交換員に「余り女性に好かれない職業の者なのですが…」と返す等々「台詞の面白さ」も「さすが村尾先生・ソクブン監督」と頷かされます。
 
 
最期は「惨殺」でしたが、松方さんの両腕となった新伍ちゃん・邦衛さんは「適度な明るさで物語の陰湿さを和らげるお笑いと潤滑油の役目」を兼ね備えています。
 
 
この作品も皆様にもっと知って貰いたい「松方さん主演作品」です。
 
 
 
他の出演者は…脇中昭夫(堀田眞三)・雁之助/小雁兄弟・岡崎次郎・阿波地大輔・唐沢民賢・三島ゆり子等々です。
 
 
 
最後に…平成29年6月14日に東映ビデオより「松方さん追悼」として「脱獄広島殺人囚」「強盗放火殺人囚」「広島仁義・人質奪回作戦」のDVDが発売される事が決定しました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
この三本は「愛され続ける懲りない馬鹿・松方さん」を存分に堪能するには持って来いのお薦めです!
 
 
今回の発売により、先にDVD化がされている「暴動・島根刑務所」を加え「松方弘樹東映脱獄三部作」全作品がDVD化される事になります。