小平監督第一回演出。評価に迷う東映東京「青い性」三東ルシア/星正人/佐藤允。 | 東映バカの部屋

東映バカの部屋

東映制作作品を主体として書いていますが、たまに他の話題も…一人でも多くの東映ファンが生まれる事を望みます!

皆様、こんにちは。

 

 

休み最終日、数日振りの晴天で梅雨明けらしい暑さに見舞われている秋田市内です。

 

 

今日はガス警報器の定期点検が有る為、終了迄は何処へも出掛けられず、昼酒も出来ず…

 

 

 

さて…「新女囚さそり701号(多岐川裕美主演)」「新女囚さそり・特殊房X(夏樹陽子主演)」「爆発!750cc(ナナハン)族」「新宿酔いどれ番地・人斬り鉄」等々の監督、「ポルノの帝王」「銀蝶渡り鳥」「女囚701号・さそり」「仁義の墓場(渡社長主演版)」等々の助監督を務められている小平裕監督。(中には「パンツの穴・お花畑でインプット」なんて作品も…)

 

 

或る書籍では俊也監督を「伊藤ちゃん」と呼び「多岐川・夏樹版さそり」に於ける「爆笑小話」を披露される等々…中々の娯楽監督だと俺は思っています。

 

 

 

その小平監督の「第一回演出作品」が、去年東映chで放映されました。

 

 

「青い性」昭和50年6月21日公開。小平裕脚本/監督兼務。東映東京製作。

 

 

未VHS/DVD化作品で有料動画配信も有りません。

 

 

 

 

 

※KINENOTEの作品案内は此方から

 

 

 

「仁義なきた戦い・広島死闘篇」と双璧の「目力」を見せた欣也さんとサクさんが組んだ傑作「資金源強奪」の併映作品。(VHS/DVD化作品でYouTube等々で有料動画配信が行われています)

 

 

 

 

 

 

「暴力団とサツの盲点ついて3億5千万の賭場荒らし!」の惹句に嘘は有りません!

 

 

●東映公式・YouTube予告動画

 

 

 

 

 

「青い性」を製作するに当たって、小平監督が書いた脚本は…

 

 

東映調の「ハードな青春もの」を考え「少女が海に潜って行くと潜水艦がその下を通って爆発する!」

 

 

これを岡田茂・東映名誉会長に提出した所…

 

 

「何や?これは!」と冒頭だけ読みゴミ箱にぶち込まれ、書き直しを命じられたのだそうです。

 

 

 

仮に作品を全く知らなかったとしても、このお話だけで大爆笑ですし酒の肴になりますから「東映の裏話・小話は止められない!止まらない!」下手な芸人よりも数百倍笑えます!

 

 

 

そして描かれたのは…母親(早苗さん)とその男(この役が晴美さん)との交尾を毎日見せられていた上、或る些細な喧嘩で友人(鹿間ケイ)と共に家出をした16歳の女子高校生(三東ルシア)。

 

 

毎日変わらぬ日々に退屈さを覚え、初めての万引きを実行したその日…何処か危険な薫りのする一人の青年(星正人)と出逢い、そのまま或るヨットハーバーへ連れて行かれるのです。

 

 

「ガラパゴスへ行く」と言う正人さんに魅かれるルシア嬢。しかし、友人である筈のケイ嬢との「恋の争い」に加え、或る催しで出逢った年上の美女で同性愛者(風間千代子)に強引に身体の関係を求められたものの、頑なに身を守っている内に勢い余って階段から転落死させてしまうのです。

 

 

ルシア嬢は正人さんに相談の上、二人で正人さんの兄貴分(允さん)のヨットの船底に千代ちゃんの遺体を縛り付けます。

 

 

 

実は正人さん…允さんら数人と共に宝石強盗を働いた一人で、翌朝にはこのヨットで国外逃亡を計画していたのです。

 

 

一緒に逃げたいルシア嬢と正人さんを允さんは強引に引き離し、ヨットは出港…

 

 

それでもルシア嬢は諦めず、泳いでヨットを追いましたが…

 

 

不幸にも大型台風に巻き込まれ、ヨットは転覆し全員死亡した上に「宝石強盗の証拠発見」「千代ちゃんの遺体発見」に至ります。

 

 

更にそのヨットの近くでルシア嬢の遺体も上がり、物語は終了します。

 

 

 

これは俺の感想ですが…当時の東映作品には極めて珍しい「見所や面白さが一つも見つからなかった作品」。

 

 

東映のお家芸である「笑い・大馬鹿」が一つも無かったのは痛い…(只、この点に関しては「意識した上で廃した」可能性も有ります)

 

 

当初、小平監督が書いた「潜水艦爆破」の方がもしかしたら面白かったのではないかなぁ…とも。

 

 

これは他監督の初演出作品でも言える事ですが「遣りたい事・遣ってみたい事を詰め込み過ぎて逆に失敗したのでは?」と…

 

 

寧ろ、ソクブン監督やサクさんの様に「最初から傑作を世に出した上に、その質を最後の作品迄維持した方」が稀であり(最初の評価が高かった監督陣の多くはその後が続かず「客の入らない、観客評価が低い作品が得意」と揶揄される事も有りますし、評価が高い作品を多く手掛けられていたとしても必ず「低迷期」が有りますし…)小平監督の様な事の方が普通だと思います。(降旗監督も似ていますね)

 

 

 

この経験を存分に生かしたのか「750cc族」「さそり二部作」「人斬り鉄」と云う「路線も物語も役者も全く毛色が違う作品全て」に於いて傑作を送り出したのですから…

 

 

只「映画大手三社体制」が盤石となっていたこの時期、東宝は山口百恵を積極的に起用、松竹は「愛と誠」「同棲時代」等々「既存の松竹カラーとは一線を画す青春映画」を多く送り出していた「戦後数度目の青春映画ブーム」となっていた中「純愛を生かし、東映の解釈と路線で考え出された青春群像劇」を作ろうとした積極姿勢は評価すべきです。

 

 

しかし…東映にとって「青春・純愛路線」と云うのは何時の時代も「鬼門」!(大手芸能プロダクションと組んで送り出した松田聖子の「野菊の墓」後藤久美子の「ラブストーリーを君に」(共に澤井信一郎監督)南野陽子の「菩堤樹」(山口和彦監督)等々の「例外」も有りますが…「東宝マークが似合うのでは?」と感じた内容かつ、全て昭和50年代後半以降の「芸能プロダクション・テレビ局等々の要求に応え製作された作品群=東映の味は皆無と言ってもいい作品群」ですので…「東映流のバカ演出」が垣間見えた「東映青春純愛映画」は南野陽子の「はいからさんが通る」位かな?)

 

 

結果として行き着いたのは辰ちゃんの「夜の青春シリーズ(「夜の性春シリーズ」「夜の梅淋/売輪シリーズ」「身も蓋も無い平仮名二文字シリーズ」と言ってもいいかもなぁ…)」「夜の歌謡シリーズ」「帝王シリーズ」「恐怖女子高校シリーズ」「女番長(すけばん)シリーズ」「暴走族シリーズ(本物の暴走族を全国から集めて字幕入りで紹介したし…)」「男組シリーズ」「非情学園ワルシリーズ」「ビーバップハイスクールシリーズ」等々「東映らしさ満載の、他社とは明らかに方向性も内容も一線を画す青春群像劇」。

 

 

「足を運んで頂いた上にお金も頂戴するのだから…テレビでは見られない内容で観客が望んでいる作品を極限迄追い求めてお応えしよう!」と云う「観客目線での製作姿勢に徹した素晴らしい思考・志向とその結果」が存分に体験出来る「素晴らしい作品群」です。

 

 

 

他の出演者は…梅田智子・方正さん・日出さん等々です。