日経ビジネスオンラインに「リーダーのための新武士道」 というシリーズで人事関係のコラムを書いている新将命さんの書かれた記事を紹介します。
『肥える転職、痩せる転職』というタイトルで書かれた今回のコラムでは、転職を成功させるためには、『資格』と『条件』がある、として “3・3・3公式”と“3C・2D・1E”という転職を考える人が事前チェックをすべき2つの「自己査定」方法が紹介されています。
転職を成功させるための「資格」――“3・3・3公式” ●自分が転職の意を表明してから「3カ月以内」に、 |
転職を成功させるための「条件」――“3C・2D・1E” ●Credo(経営理念・哲学):ビジョン・使命・価値観を含んだ経営理念がある“魂”の通っている会社か、あるいはただ単に短期的利益追求だけに汲々している会社か。 ●Chemistry(相性):経営に関する考え方、雰囲気、社風、社員など、自分との“相性”は良さそうか。これは「良い悪い」の問題ではなく、「合うか合わないか」の問題。 ●Commitment(コミットメント):(特に外資系企業の場合)本腰を入れて長期的に日本市場における成功にコミットメントをしている会社か。コミットメントを感じさせるようなる戦略はあるか。 【2D】 ●Delegation(権限委譲):社員に権限委譲が十分に行われているか。ワンマン社長が頭を使う仕事に関するすべての権限を1人で握っていて、社員は手と足だけ動かせばよいという会社ではないか。 ●Direction(方向性):会社の長期的戦略と目標が明確に打ち出されているか。その日暮らしの戦術だけに汲々とするのではなく、経営者が長期的な方向性を社員に対して示しているか。 【1E】 ●Expectation(役割期待):短期と長期にわたり、会社があなたに対してどんな役割を果たしてほしいかが明確になっているか。「とりあえず入ってほしい」というような曖昧模糊とした誘いではないか。 |
特に“3C・2D・1E”は、新しい会社を探す上での重要なチェックポイントですが、逆に言うと、「これが満たされていない会社からは逃げ出すことを考えるべき」、ということにもなります。
経営陣・管理職は自社のセルフチェックとして、常に“3C・2D・1E”を頭に置いて置くべきでしょう。
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「新さんは、何回も転職をご経験されているんですね」。時々、私の略歴をご覧になった方からそう言われることがあります。確かに私は、新卒で入社したシェル石油(現・昭和シェル石油)に10年間勤務した後、日本コカ・コーラ(10年)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(12年)、その後は4年刻みでグローバル企業を3社経験しました。独立して経営アドバイザーを生業とするようになるまでに、実に5回の転職を経験したことになります。
私が会社勤めをしていた頃は、まだ今のように転職が一般的でない時代でした。にもかかわらず会社を5度も変わっているのですから、よほどの“転職好き”と思われるかもしれません。
しかし、さにあらず。若いビジネスマンから「キャリアのことで悩んでいるのですが、やはり思い切って転職した方がいいでしょうか?」などという相談を受けることもあるのですが、そんな時、私はよくこんなふうに答えます。「一概には言い切れませんが、できることなら辞めるのを止めておきなさい」。
「転職=脱臼」論
私が「転職はおよしなさい」と申し上げるのは、多くの場合、現在働いている会社ではうだつが上がらないため、外に逃避する場所を求めるという“逃げの転職”をしようとしているケースです。
少しばかりの収入アップにつられて転職したものの、仕事の内容ややりがいは縮小してしまった。人間関係がうまくいかずに転職したが、新しい職場でも同じようにやはり人間関係でストレスを抱え込むハメに陥ってしまった…。通常、A社でダメな人はB社に移っても同じことの繰り返しで、うまく事が運ばないケースが多いのです。
転職は“脱臼”と同じで、一度外れると癖になる危険があります。時々、履歴書の欄からはみ出すくらい多くの会社を転々としている人を見かけますが、そこまで極端でなくても、2~3年のサイクルで転職を繰り返しているという人は、あなたの周りにもいるかもしれません。
会社から会社へ転々と移る人のことを、英語では「ジョブ・ホッパー(Job Hopper)」と呼びます。日本と比べてはるかに転職が日常化している米国でも、ジョブ・ホッパーという言葉はネガティブな意味で使われます。
では、短期間で転職を繰り返すことの何が問題なのか?
「転石」に苔が生えないのと同様、「転籍」ばかりしていると苔が生えない、つまり、仕事上の専門スキルがいつまで経っても身につかない、ということです。私はこの類の転職を「痩せる転職」と呼んでいます。
会社を移るたびに自分のキャリアが痩せ細ってしまうのは困りものです。したがって、「どうも今の会社とは合わない」という気がした場合でも、最低5年くらいはドッシリと腰を据えて頑張ってみるくらいの忍耐力が必要です。
肥える転職
人には転職を勧めないのに、私自身は5度も会社を変わっていることに疑問を持った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、「なぜ新さんは5度も会社を移ったのですか?」という問いに対する私の答えは極めて簡潔で、「自己実現を図るため」の一言に尽きます。
「自己実現」と言えば、以前このコラム(【第4話】部下のやる気を高める5つの鉄則<その3>)でも紹介した米国の心理学者アブラハム・マズローの「欲求5段階説」の中で、人間にとって最も高度な欲求のことです。
私にとっての自己実現の中身についてはここで詳しくは述べませんが、より「自己実現が果たせそうな環境」を追い求めていった結果、私の場合は図らずも何度か会社を変わることになった、というだけのこと。決して会社を変わること自体が当初からの予定だったわけではありません。自分のビジネス人生を振り返ってみると、総合点としての満足度は90点くらい、極めて満点に近いキャリア・ビルティングができたと感じています。
先の「痩せる転職」に対し、前の会社よりも自己実現が果たしやすい環境へ移ることを、私は「肥える転職」と呼んでいます。仕事の内容や責任と権限、会社と自分の将来性、社員の質、収入等の面で自分のレベルアップが図れる環境に身を置くということです。どうせ転職をするなら「肥える転職」をするに越したことはありません。
転職を成功させるための「資格」――“3・3・3公式”
では、どうすれば「肥える転職」をすることができるのか?
“日本一のキャリア・ビルダー”をもって任じる私としては、「成功する転職をするためにはそれなりの『資格』と『条件』があるのだ」ということを、声を大にして申し上げたいのです。
まずは「資格」について。自分自身が「肥える転職」をするに足る人物であるかどうかを簡単にセルフチェックする方法として、私が編み出した“3・3・3公式”なるものをご紹介しましょう。
【3・3・3公式とは】
●自分が転職の意を表明してから「3カ月以内」に、
●現在の年収の「3割増し以上」の待遇で、
●あなたを迎えたいという会社が「3社以上」ある。
この3つのハードルを越えられないような客観的・社会的評価しか受けていない人は要注意! たとえ転職したとしても、「痩せる転職」になってしまうおそれがあります。この場合は、転職を考えるより前に、自分の市場価値を高めることに時間とエネルギーを使う方が先決でしょう。「“転職”の前に“手に職”を!」というわけです。
転職を成功させるための「条件」――“3C・2D・1E”
あなたが“3・3・3公式”をクリアしていたとして、では次にどのようなポイントに留意して転職先を評価すればよいのでしょうか。「肥える転職」をするためのチェックポイントは、次の“3C・2D・1E”に集約されると私は考えています。
【3C】
●Credo(経営理念・哲学):ビジョン・使命・価値観を含んだ経営理念がある“魂”の通っている会社か、あるいはただ単に短期的利益追求だけに汲々している会社か。
●Chemistry(相性):経営に関する考え方、雰囲気、社風、社員など、自分との“相性”は良さそうか。これは「良い悪い」の問題ではなく、「合うか合わないか」の問題。
●Commitment(コミットメント):(特に外資系企業の場合)本腰を入れて長期的に日本市場における成功にコミットメントをしている会社か。コミットメントを感じさせるようなる戦略はあるか。
【2D】
●Delegation(権限委譲):社員に権限委譲が十分に行われているか。ワンマン社長が頭を使う仕事に関するすべての権限を1人で握っていて、社員は手と足だけ動かせばよいという会社ではないか。
●Direction(方向性):会社の長期的戦略と目標が明確に打ち出されているか。その日暮らしの戦術だけに汲々とするのではなく、経営者が長期的な方向性を社員に対して示しているか。
【1E】
●Expectation(役割期待):短期と長期にわたり、会社があなたに対してどんな役割を果たしてほしいかが明確になっているか。「とりあえず入ってほしい」というような曖昧模糊とした誘いではないか。
転職も“相性”が大事
以上に挙げた6つのチェックポイントは、「肥える転職」をするうえではどれも大切なものばかりです。しかし、仮にこの中で「最も大切だと思うポイントはどれか?」と聞かれたら、私は迷うことなく「Chemistry(相性)」と答えます。
面接が“お見合い”、入社が“結婚”であると考えれば、相性の重要性がよりよくわかるでしょう。愛のない結婚とは殺伐としたもので、いずれ破局が訪れます。結婚を長続きさせるには何よりも「ウマが合う」、「一緒にいてしっくりいく」と思えるかどうかが大切なのです。もちろん、自分のわがままと精神的未熟さゆえに“結婚生活”がうまくいかなくなった、ということはよくありますから、この点は自分を厳しく評価することをお忘れなく。
以上、「肥える転職」をするための資格と条件について考えてきました。会社を移るたびにキャリアが尻すぼみになってしまった、などということがないように、転職は慎重の上にも慎重を期するべきです。
望ましいのは、“ジョブ・ホッパー”ではなく“キャリア・ビルダー”。末広がりのキャリアを築けるように、転職に踏み切る前には“3・3・3公式”による自己点検と、“3C・2D・1E”による十分な事前学習を怠らないようにしてください。