元従業員だから内部事情がわかる。その店のリニューアルオープンの日はマスター、ママ、スタッフの女の子、ヘルプの女の子達皆頑張っていた。
急に女の子達が僕の席に集まった。
ママに
なっちの席に行って休んでらっしゃい。
と言われたそうだ。
ある女の子は
あの席煙草吸えないからなっち煙草吸わせて。
ある女の子は
お酒たくさん飲まされたから冷ましたい。なっち水飲ませて。
ある女の子は
マスターやママのお世話になった人だけど苦手なタイプのようで気を使って疲れたようで
なっち愚痴聞いて。
オープンの日に僕の席は女の子の休憩所に決まった。
当時23歳でマスターとは長い付き合い。元従業員だから従業員の気持ちがわかる。他のお客さんには言えない愚痴を僕には言える。
年齢詐称してる人、結婚してるのに独身と言ってる人など聞いてもいないのに裏情報入ってくる。
他の店にも行くようになったが気が付くと他の店でも休憩所のようなポジションになった。
あるスナックでママの他に女の子二人の時お客さんは3組。ちょうどいい。そこでドアが開く音がする。その瞬間僕の前の女の子は他の席に行くと確信する。その通りになる。
あのお客さんはママでなければ帰ってしまう。新規の男性4人組をほったらかしする訳にいかない。今いるお客さんでほったらかしで大丈夫なのはなっちだとママは判断する。
ママがそういう判断するのを僕はドアが開く音がした時点でわかる。
それはそれで信頼されてる感じで面白かった。
僕の友達がバイトしていた店に同僚N君を連れて行った。その店のマスターとN君は意気投合した。マスターはフィリピンパブにはまっていた。N君にフィリピンパブを教えた。
N君もフィリピンパブにはまった。
会社でN君がフィリピンパブにはまった話をしていた。
上司が
あいつは何でフィリピンパブにはまったんだ?
僕は
僕の連れて行った店のマスターとN君が意気投合してそのマスターがフィリピンパブ教えた。
と答えた。
あいつがはまったきっかけはなっちか。
そう言われると反論出来ない。
会社の仲間と皆でフィリピンパブに行った。
N君はお気に入りの女の子が横にいるとデレデレと楽しそう。その女の子が他の席に着くとつまらなそうに飲んでる。
N君がその女の子お気に入りなのがバレバレだった。
一度そのマスターが飲んでる店に僕とN君が合流した事があった。
マスターとN君はお気に入りの女の子とイチャイチャしていた。
なっちも指名しろよ。
とN君に言われる。
そんな事言われたって今日初めて来たのに誰指名すれば良いのかわからない。
可愛い女の子と男っぽい女の子二人が僕の前にいた。僕は可愛い女の子と話していた。しばらくすると可愛い女の子は他の席に行ったので男っぽい女の子と話すしかなくなった。
数日後N君はお気に入りの女の子をデートに誘った。男っぽい女の子が付いてきた。同僚から電話があった。
なっち来てくれ。
僕は断った。何故なら男っぽい女の子の相手させられるのが目に見えてる。
それから数年後マスターの家に行った時にその日の話になった。
あの時参りましたよ。マスターもN君もイチャイチャしていて僕の席には男みたいな女の子がついてた。
するとマスターは
なっち、男みたいじゃなくて男だよ。
ニューハーフだったようだ。
僕は男っぽいと思った理由。
髪が薄かった。女性でも髪薄い人いるけど若いのに髪が薄くなるのは確率的に男性の方が高い。
声が低かった。ハスキーボイスの女の子というより男の声だと感じた。
フィリピンパブで男がホステスとして働く訳がないと思っていたが例外もあった。
N君は身長160cm以下で小柄だった。
僕はマスターに
N君は何でフィリピンの女の子にはまったんですかね。
と聞いた。
N君は背が低いのをコンプレックスに思っている。日本人の女の子は年下でもN君の事可愛いと言ったりする。フィリピンの女の子は絶対に言わない。それに飲んでる時のスキンシップはフィリピンの女の子の方が積極的。どちらかというと女性に奥手のN君にとって積極的に女の子からスキンシップされたらはまってしまう。
と分析していた。
確かに背が低いN君はわざと言葉使いを悪くして悪ぶる。悪ぶっても怖くない。むしろ逆に可愛いと言われてしまう。
会社が月曜日火曜日連休の前日N君に
なっち頼みがある。
と言われて
どうしたの?
と聞く。
よく行ってたフィリピンの店の女の子がフィリピンに帰って再来日したんだけど今度は山梨県の店でその店に行きたい。
えっ?山梨県?山梨県まで飲みに行けないよ。
と答えた。
飲みに行かなくて良いんだ。店を探すの手伝って欲しい。
会社休みの日、二人で山梨県に行った。
今から30年近く前の話。ナビの付いてない車で地図を頼りに山梨県に行った。甲府の先で市ではなく町だった。山の中なので住所だけで探すのは無理だった。
町役場に行って詳しい地図を見せてもらった。その地図を頼りに店を探して店が見つかった。
しかし一回帰宅してN君が店に行くのは翌日。街灯もあまりないから夜だと目印が消えてしまう。夜でも行けるように細かく目印をメモした。
翌日N君は1人で山梨県に行った。そうしたら千葉県の店で会ったお客さんがいたそうだ。
千葉県から山梨県までフィリピンの女の子に会いに行ったのはN君だけでなかった。
しばらく飲んでN君は車で寝た。
早朝山梨県から千葉県に戻り水曜日寝不足で仕事した。
仮に僕がフィリピンパブでお気に入りの女の子がいても再来日した場所が山梨県だったら行かない。
フィリピンパブ好きなお客さんと女の子の絆はすごい。
僕もN君も転職した数年後僕の勤務する中華料理店にN君が偶然来た。
僕とN君は女の子いる店に飲みに行く前にご飯食べる事あった。お腹すいた状態で飲みに行くとお金かかる。食事済ませて飲みに行った方がお金かからない。
という訳でフィリピンパブ行く前に中華料理店で腹ごしらえしに来たのだ。
何十年たちN君にフィリピンパブ教えたマスターをFacebookで見つけた。懐かしくなりしばらくやり取りした。その中闘病中だという話があった。
数年前に誕生日おめでとうメッセージを送った。
マスターのFacebook検索すると一番最近の更新が僕の誕生日おめでとうメッセージになっている。
闘病中だったから亡くなってしまったのか携帯電話機種変更したらFacebookのアカウントわからなくなってFacebook使ってないのかわからない。
営業マン時代のお客さんで奥さんがフィリピン人の人がいた。最初の結婚は日本人だが離婚し数年後フィリピン人と再婚した。その奥さんは尽くすタイプのようでその人の両親も尽くしてくれるフィリピンのお嫁さんがお気に入りだった。
そのお客さんはフィリピンに永住し亡くなったらしい。
僕はフィリピンパブにはまらなかった。
N君とフィリピンパブに行った時に女の子に
なっちはなにじん?
と聞かれた。
日本人。
と答えると
嘘言わないで。
嘘言ってないのにと思いながら
じゃあ台湾人。
台湾人には見えない。
じゃあイラン人。
などとやり取り。
冗談通じないし日本語もあまり通じない。
飲んでて楽しくない。僕は日本人の女の子の店の方が良いと思うようになりはまらなかった。
N君が今もフィリピンパブ行ってるのか独身なのか結婚したのか何も知らない。