お店は
五階まで部屋があり
各階に厨房が設けられている。


ある日
五階で営業があり、
五階に持って行く材料を
後輩Hに
「これ、五階まで持って行って!」
と言った。


後輩Hまでの距離は10メートルほどあったが、
後輩Hには間違いなく聞こえている。



ちょっと間が空いて

「…はい…」

と言っているのだけが聞こえた。




材料を持って行く後輩H…







ふと
僕と後輩Hの間に居た
ベジータK先輩(ボデービルダーばりの筋肉マン)が
後輩Hを追っかけて行った。





数分後………





後輩Hがやってきた……




顔に漫画みたいな
目の周りにアザを作って…………。






後輩H「すみませんでした!!」






俺「え″?!お前何やったんだよ?転けたのか?!」




後輩H「先ほど、失礼な事を言ってしまって…
すみませんでした!!」


意味が分からなかったので
理由を聞いた。

俺「なんのこと?」



後輩H「舌打ちして、えぇ~って言った事です…」


俺「お前そんな事言ってたのかよ!」


流石に
怒りたくなったが…

アザが気になる。

俺「そのアザはどうした?」

後輩H「K先輩に…」 
「「先輩ナメるのもいい加減にしろよ!!」って
怒られました……」


あの
いつも僕を目の敵にしてくる
ボッコボコに殴ってくるK先輩が…



ベジータが吾空の仲間になって
最悪の敵から
とても頼もしい友になった瞬間と
同じ気分だった……


筋肉もさながら
まぁ頭のハゲ具合も
ベジータそっくりであるが‥


この時ばかりは
後輩Hには申し訳ないが
後輩の為に後輩を怒るK先輩に
「ナイスッ!」
って思ってしまった。





まぁ次の日は
いつも通り
K先輩に怒鳴られまくりましたが……
同じ理不尽でも
いつもより素直に受け入れることが出来た。
レジェンド後輩Hは
一応調理師学校を卒業して
入社してきた。


なので
材料の名前などは
よっぽど珍しい物で無ければ
大概知っている。


ある日、
煮方の先輩に
「大場椎茸(おおばしいたけ)」
の買い物を頼まれていた。

料理屋でなくても
別に珍しい食品ではないため、
後輩Hは元気に
「はい!」
っと言って
買い物に行った。



10分後…



帰ってきた
後輩Hの手元には…


お造りに使う
「大葉」



ちっちゃい家庭用
「椎茸」


……………………………………………………………………


「パッチーーーン!!」


すぐさま
張り手が飛んできた。



「おおばしいたけ」
と言われて



「大葉」

「椎茸」

を買ってくるレジェンドぶり……。
しかも
これを二回やらかす
レジェンド!!!



煮方の先輩が
「俺の言い方が悪いのかなぁ~?」
と真面目に悩んでいた……。




先輩を悩ますとは

本当にレジェンド!!!
真鯛と言ったら、
春の桜が咲く頃に旬を迎えるため
「桜鯛」と言われる。

体の色も桜色に輝く。


だが、
産卵と同時に脂も落ちて
旨みも落ちる。



落ちた脂も9月頃になると
餌を食べ始め
11月には
元通りの脂の乗った美味しい鯛となる。

この時期の鯛を「もみじ鯛」と言う。


そんな
今が二回目の旬である鯛。




鯛は日本料理でよく利用されるが
実際
魚の中では、そこまで高くはない。


なので
1日に10本以上捌くこともあった。



そんな日
普段メガネをしている後輩Hが
先輩に殴られてメガネが壊れて
その日はコンタクトをしていた。



ウロコを掻く後輩H。



……………………………………………………………………



突然手が止まる後輩。




キョロキョロしだした。







ちょっと
予想したよね。


まさか
コイツ……




急に話しかけてくる後輩H
「すみません、僕のコンタクト見てません?」




は?!

そんなにお前の顔ばっかり見て仕事してねーよ!!

って思ったよ。


でも、
それ以上に
今からそのコンタクトを探す事を考えたら…

何も言えなくなった……




周りには
鯛10本分のウロコ…



鯛のウロコって
パッと見たら
コンタクトと見分けがつかないんだよね。







ウロコ版
ウォーリーを探せ!

ですよ…





厨房数人がかりで
小一時間探したよ…









結局

見つからず…



先輩にめちゃくちゃ怒られてた。







「パッチーーーン!!」






先輩から
張り手をくらってる後輩H…







なぜか
ニコニコして戻ってきた。





僕も流石に
周りに迷惑かけて
先輩に怒られて
ニコニコしている後輩Hに…

「何がそんなに面白いんだよ?!」

と言った。



後輩H「先輩に張り手された衝撃で、
目の中でズレてたコンタクトが戻ってきたんですよーーー(満面の笑み)」




あまりにも
感覚のズレてる後輩Hに
怒る気も失せてしまった…。



この後輩Hは
全てがレジェンドである。



先輩も先輩なら
後輩も後輩…。



俺も端から見たら
変なのか?!
っと疑ってしまう生活である。