もうひとり、決着を付けなきゃいけない相手がいた。
楓は、貴子を呼び出した。
「ねぇ、ホントに勇作と別れたの?うそ!どうして?」
「どうして・・・って。
貴子、言ったじゃない。
勇作が浮気してるって。
勇作に問いただしたら、認めたって。」
「えっ?誰が?私が?
そんなこと、言った?」
はぁっ?
何言ってんの?
「言ったよ、貴子。
それで、私・・・」
「うそ、ごめん。
ホントにそんなこと言ったの、私?
酔ってて、何も覚えてないんよ。
楓ごめん・・・ごめんなさい。
私、勇作に話そうか。
私が余計なこと言ったからって。
全部誤解だったんだよって、私がちゃんと話すから。」
「いや・・・もうダメなの。
そんなこと・・・
もう・・・いいの。」
楓は、貴子が分からなかった。
酔っていたからって、こんなこと・・・
信じられない思いで、いっぱいだった。
楓は、勇作が浮気をしてるんじゃないか・・・と、確かに疑っていた。
ずっと昔、勇作が言ってたことがあった。
「もし俺がほかの女とその・・・浮気?みたいなことしてしまったとしたら・・・
俺、もう、楓のこと抱けなくなるかもなぁ。
・・・悪いって思って、申し訳なくて。」
勇作が楓を抱こうとしなくなったのは、ほかに女ができたからだ・・・
楓は、そう思った。
車の中で見つけたあれも、最近様子がおかしいのも、ぜんぶ、ほかに好きな人ができたからだ。
考えてみれば、遠距離だったわけだし。
仕事が変わって、生活もなんだか派手になったし。
勇作、昔とずいぶん変わってしまったもんな。
なんか、別の世界の人になっちゃったみたい。
私の知ってる勇作じゃない。
私の好きだった勇作じゃ・・・ない。
だけど、そうは言っても、こんなカタチで別れを決めるなんて不本意だった。
酔った貴子の言葉を、鵜呑みにしてしまった自分が悪いのか・・・
すべて、私のせい?
どうして・・・
どうしてこうなっちゃったの?
楓は、整理しようと思っても、どうしても頭の中を整理できなかった。
どうして、どこでおかしくなったのか。
考えても考えても、分からなかった。
~つづく~