大人になる前に-26 | もうひと花咲かせます

もうひと花咲かせます

『妻が夫を捨てるとき』の花子と息子吾郎の
その後・・・のおはなし

もうひとり、決着を付けなきゃいけない相手がいた。

楓は、貴子を呼び出した。



「ねぇ、ホントに勇作と別れたの?うそ!どうして?」




「どうして・・・って。

貴子、言ったじゃない。

勇作が浮気してるって。

勇作に問いただしたら、認めたって。」




「えっ?誰が?私が?

そんなこと、言った?」




はぁっ?

何言ってんの?




「言ったよ、貴子。

それで、私・・・」



「うそ、ごめん。

ホントにそんなこと言ったの、私?

酔ってて、何も覚えてないんよ。

楓ごめん・・・ごめんなさい。


私、勇作に話そうか。

私が余計なこと言ったからって。

全部誤解だったんだよって、私がちゃんと話すから。」




「いや・・・もうダメなの。


そんなこと・・・



もう・・・いいの。」





楓は、貴子が分からなかった。

酔っていたからって、こんなこと・・・

信じられない思いで、いっぱいだった。




楓は、勇作が浮気をしてるんじゃないか・・・と、確かに疑っていた。

ずっと昔、勇作が言ってたことがあった。



「もし俺がほかの女とその・・・浮気?みたいなことしてしまったとしたら・・・

俺、もう、楓のこと抱けなくなるかもなぁ。

・・・悪いって思って、申し訳なくて。」



勇作が楓を抱こうとしなくなったのは、ほかに女ができたからだ・・・

楓は、そう思った。

車の中で見つけたあれも、最近様子がおかしいのも、ぜんぶ、ほかに好きな人ができたからだ。




考えてみれば、遠距離だったわけだし。

仕事が変わって、生活もなんだか派手になったし。

勇作、昔とずいぶん変わってしまったもんな。

なんか、別の世界の人になっちゃったみたい。

私の知ってる勇作じゃない。




私の好きだった勇作じゃ・・・ない。






だけど、そうは言っても、こんなカタチで別れを決めるなんて不本意だった。

酔った貴子の言葉を、鵜呑みにしてしまった自分が悪いのか・・・

すべて、私のせい?

どうして・・・

どうしてこうなっちゃったの?






楓は、整理しようと思っても、どうしても頭の中を整理できなかった。

どうして、どこでおかしくなったのか。

考えても考えても、分からなかった。





~つづく~



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