車の外では、大乱闘が起こっていた。
楓からはハッキリとは見えないものの、男たちが殴り合ってるということは分かった。
持っていた携帯で、すぐに110番へ通報した。
「早く、早く来てください!
暴走族に襲われてるんです。
いきなり車のフロントガラスを割られて、友達が、友達が、殴られてる・・・
早く助けて、助けて!
今いる場所は・・・
分からないけど、近くに、病院・・・久保田医院って看板が見えます。
早く来て!お願いします、助けて!」
楓は泣き叫ぶような声で、助けを求めた。
それから5分もしないうちに、パトカーのサイレンの音が聞こえてきた。
楓は、ずっと後部座席で震え続けていた。
パトカーが近づくにつれ、オートバイの数が減り、男たちの数が減った。
いやーーーっ!!!!
勇作の姿が、ちらりと見えた。
顔面が腫れ、血だらけだった。
楓は思わず、車の外に出ようとした。
そのとき、時田が車の中に戻ってきた。
少しだけケガをしているが、見た目にはそう分からない。
「楓、そこ動くなよ。
警察が来たみたいやから、もう大丈夫や。」
「勇作は?勇作どこ行ったの?」
勇作の姿が見えなくなっていた。
「勇作は・・・
勇作は・・・
あいつらに連れて行かれた。」
~つづく~