齋藤愼爾氏のこと | ここはいいところ

ここはいいところ

「ここはいいところ」の「ここ」は私が行った場所であり、人生の一場面でもあります。
人生という旅のなかで、自分がよかったと思ったところやことを記録し、人に伝わればいいなと思います。
1か月に2~3回は新しいブログを書きたいと思います。

 齋藤愼爾氏が3月28日に亡くなりました。俳人、評論家、編集者であり、出版をされていました。83歳でした。

 

 私が初めて彼を知ったのは1970年代はじめの高校生の頃、それより何年か前の週刊誌で見ました。それは人物紹介のグラビアページで、一人の出版社「深夜叢書社」を始めた青年として紹介されていました。痩身で、眼は孤独そうで、信念がありそうな印象を受けました。

 それから数年経ち、大学1年生の冬、私は早稲田の古本屋でアルバイトをしたいと思い、雇ってくれそうな店を訪ね歩きました。そして、二朗書房で雇ってもらうことができました。それから3年少し、4年の3月まで勤めさせていただきましたが、客寄せ、店のイメージづくりのためか、新刊も置いていました。その新刊で、深夜叢書社の本は重要でした。春日井建『行け帰ることなく』、橋本真理『幽明婚』などです。

 私が二朗書房に勤めていて購入した深夜叢書社の本です。

 それから40年近いときが経ち、60歳手前、定年退職2年前に俳句を始めましたが、俳句を始めて5,6年経った頃に、いわゆる伝統俳句からいわゆる現代俳句にシフトしました。その頃から、再び齋藤愼爾氏のお名前を聞くようになりました。

 現代俳句協会は今年2月、第23回現代俳句大賞を齋藤氏に送りました。

 

 下の写真の本、『現代俳句の世界』(齋藤愼爾責任編集 集英社1998年)は4月2日に届きました。何故、25年も前の本を買ったかというと、河原枇杷男ほか、私の好きな俳人が多く扱われているからです。

 巻末の「編集余滴」で、編集者の新福正武は「責任編集の齋藤愼爾氏は俳句の変革を目論む思想の持ち主、すこしはキナ臭い匂いが立上るかもしれない。そのことによって、およそ百年の歴史のなかで、新しいブームだともいわれる俳句に、新しい生命を吹き込むことができればと思う」と書かれています。

 一度、齋藤愼爾氏にお会いしたかった。

 この本は、齋藤愼爾氏の編集を味わいつつ、精読したいと思います。

 

 齋藤愼爾氏の俳句を5句。

  北斗星枯野に今日のバス終る

  明らかに凧の糸のみ暮れ残る

  死蛍とぶつかり行くや蛍狩

  戸籍燃す火種を狐火より貰ひ

  父死後の寒夕焼を楯とせり