四国遍路に限らず山門や鳥居の前で一礼するのは習慣化していると思うが、つらつらと呪文のような読経をするのは何かと違和感を覚えるかも知れない。なお、手水(ちょうづ)は日本だけの作法ではない。イスラム圏では礼拝の前に必ず手水を行っている。水が無い時は砂で清めているという。神道のみそぎやキリスト教の洗礼など共通の宗教作法といえる。

 

さて、真言(しんごん)とは何ぞや?という疑問が生じる。お経は漢字で書いてあっても全く意味は分からない。仏教はサンスクリット語で伝承された宗教になる。伝承にともなって独自の解釈がされるのは自然のことだ。玄奘(三蔵法師)は仏教発祥の地が衰退していることに危惧し西域伝という大冒険の旅に出た。途中のエピソードはさておいて、ヒマラヤ山脈の西カイバル峠ンから回り込みインド北東部ネパールとの国境地域へとおもむき廃墟となっていた寺院から木簡や竹簡を大量に収集して長安へ持ち帰ったことから本格的な東アジアでの伝承がはじまることになる。原典はサンスクリット語で書かれていたので、意味と音から漢字をあてはめて作成をした経典を最澄と空海が日本に持ち帰り密教となった。あの呪文(真言)にはサンスクリット語という意味が実はあるということになる。和訳されていたりするが我々俗人にはそれでも意味は分からない。それでいいのかもしれない。

 

さて遍路では弘法大師(空海)の逸話にふれることになる。その意味からして、仏教だけではなく多岐にわたる生産性向上の技術を日本に持ち込んだのだろうと思う。平安時代の歴史ロマンを想像してみる機会になる。

四国遍路には読経を唱える作法がある。その気がなくてもほかの遍路やツアーバスの団体遍路と遭遇すれば雰囲気に呑み込まれる。強い拘りなければ宗派門徒に関係なく自然と唱えたくなれば、遠慮しないで読経にチャレンジすることをお奨めする。

 

では、読経の作法から。アンダーラインは唱えなくてよい。

まずは、念じる前に氏名、生年月日、住所を声を出さずに唱える。

開教偈(かいぎょうげ)

無上甚深微妙法(むじょうじんじんびみょうほう)百千万劫難遭遇(ひゃくせんまんこうなんそうぐう)我今見聞得受持(かこんけんもんとくじゅじ)願解如来真実義(がんげにょらいしんじつぎ)

懺悔文(ざんげのもん)

我昔所造諸悪業(がしゃくしょぞうしょあくごう)皆由無始貧瞋痴(かいゆむしとんじんち)従身語意之所生(じゅしんごいししょしょう)一切我今皆懺悔(いっさいがこんかいざんげ)

三帰(さんき)

弟子某甲(でしむこう)「姓名を加える」盡未来際(じんみらいさい) 帰依仏(きえぶつ)帰依法(きえほう)帰依僧(きえそう)  3回くり返す

三竟(さんきょう)

弟子某甲(でしむこう)「姓名を加える」盡未来際(じんみらいさい)  帰依仏竟(きえぶっきょう)帰依法竟(きえほうきょう)帰依僧竟(きえそうきょう)  3回くり返す

十善戒(じゅうぜんかい)

弟子某甲(でしむこう)「姓名を加える」盡未来際(じんみらいさい) 不殺生(ふせっしょう)不偸盗(ふちゅうとう)不邪淫(ふじゃいん)

不妄語(ふもうご)不綺語(ふきご)不悪口(ふあくく)不両舌(ふりょうぜつ)不慳貪(ふけんどん)不瞋恚(ふしんに)不邪見(ふじゃけん)  3回くり返す

発菩提心真言(ほつぼだいしんしんごん)

おん ぼうぢっした ぼだはだやみ  3回くり返す

三摩耶戒真言(さんまやかいしんごん)

おん さんまや さとばん  3回くり返す

般若心経(はんにゃしんぎょう)

仏説摩訶般若波羅蜜多心経(ぶっせつまかはんにゃはらみたしんぎょう)観自在菩薩行深般若波羅蜜多時(かんじざいほさぎょうじんはんにゃはらみたじ)照見五蘊皆空度一切苦厄(しょうけんごうんかいくうどいっさいくやく)舎利子(しゃりし)色不意空空不意色(しきふいくうふういしき)色即是空空即是色(しこぞくぜくくうそくぜしき)受想行識亦復如是(じゅそうぎょうしきやくぶにょぜ)舎利子(しゃりし)是諸法空相(ぜしょほうくうそう)不生不滅不垢不浄不増不減(ふしょうふめつふくふじょうふぞうふげん)() 是故空中無色(ぜこくうちゅうむしき)無受想行識(むじゅそうぎょうしき)無眼耳鼻舌身意(むげんにびぜっしんに)無色声香味蝕法(むしきしょうこうみそくほう)無限界乃至無意識界(むげんかいないしむいしきかい)無無明亦無無明尽(むむみょうやくむむみょうじん)乃至無老死(ないしむろうし)亦無老死尽(やくむろうしじん)無苦集滅道(むくしゅうめつどう)無智亦無得(むちゃくむとく)以無所得故(いむしょとくこ)菩提薩垂(ぼだいさった)依般若波羅蜜多故(えはんにゃはらみたこ)心無罫礙無罫礙故(しんむけげむけげこ)無有恐怖(むうくふ)遠離一切顛倒夢想(おんりいっさいてんどうむそう)究竟涅槃三世諸仏(くうきょねはんさんぜんしょうぶつ)依般若波羅蜜多故(えはんにゃはらみたこ)得阿耨多羅三貘三菩提(とくあのくたらさんみゃくさんぼだい)故知般若波羅蜜多(こちはんにゃはらみた)是大神呪是大明呪(ぜだいじんしゅぜだみょうしゅ)是無上呪是無等等呪(ぜむじょうしゅぜむとうどうしゅ)能徐一切苦真実不虚(のうじょいっさいくしんじつふこ)故説般若波羅蜜多呪(こせつはんにゃはらみたしゅ)即説呪日(そくせつしゅわっ)羯諦羯諦波羅羯諦(ぎゃてぎゃてはらぎゃて)波羅僧羯諦(はらそうぎゃて)菩提薩婆訶(ぼうじそわか)般若心経(はんにゃしんぎょう)

御本尊の真言

光明真言(こうみょうしんごん)

おんあぼぎゃ  べいろしゃのう  まかぼだら  まにはんどま じんばら  はらばりたやうん  3回くり返す

大師宝号(だいしほうごう)

南無大師遍照金剛(なむだいしへんじょうこんごう)  3回くり返す

回向文(えこうもん)

願わくは この功徳を以って あまねく一切に及ぼし

我らと衆生(しゅうじょう)と 皆共に仏道を成ぜん

 

上記の読経を本堂と大師堂で行う作法だ。慣れると20分程度で参拝は終了する。最初は大変だが20ケ寺も参拝すれば読経も馴染んでくる。自然にスラスラとなり結願を迎えるころには文字に目を向けなくなる。別に覚える必要はない。肝心なのは、参拝者それぞれに得るものがあることを願う。

プレ四国遍路で参拝する寺院には、歩き遍路のルートに重なる寺も含まれている。別格12番と別格14番、別格16番と別格18番、別格19番の五ケ寺だ。伊予西条駅から伊予三島駅までは鉄道でショートカットを予定し、雲辺寺はロープウェーを使い、豊浜からはバス移動を予定している。午後5時のタイムオーバーとなることから、コース上ではあっても先に済ませたいという考えがある。自転車の時はタイムオーバーが五回の行程で三回ほど発生していた。自転車なら後日に調整可能だが歩きの場合は、日程の延長となってしまうのでそうならないように安全策という考えだ。何よりも各寺の「珠」で二十ケ寺念珠を仕立てたいという思いがある。

 

巡礼であるので手順はある、移動手段に関係なく一般的な作法は心がけておく必要がある。

服装は自由だ。遍路装束をイメージする方が多いだろうがパフォーマンスというか自己満足という面が強い。

歩き遍路の場合は遍路装束が交通安全という意味も含まれるので可能であれば、菅笠、輪袈裟、白衣、金剛杖は必需かも知れない。

頭陀袋の中には、納経帳、納め札、数珠(108球)、ロウソク、線香が入る。

 

参拝の手順について。お寺の山門は、門前で必ず一礼をする。手水場(ちょうずば)で両手と口を清める。参拝前に鐘を突く。ただし鐘を突けない寺もある。また鐘を突く巡礼者は少ない。必修ということではない。本堂へ参拝する。ロウソクを灯し線香を立てる。賽銭、読経、そして本堂に掲示されている御本尊の「真言」を唱える。納め札を納める。

次に大師堂へ参拝する。賽銭と読経、そして大師宝号「南無大師遍照金剛」(なむだいしへんじょうこんごう)は必ず唱える。

納経所で御朱印をいただく。納経料500円は基本的に釣銭の無いように。午前8時から午後5時まで、働き方改革(世俗化)で朝は一時間繰り下がった。山門から出る時も一礼する。