人の気持ちが分からないから作家になりたい -3ページ目

人の気持ちが分からないから作家になりたい

あらゆる物語から吸収したい
人による創造物に触れた時に感じたことを書いていく
それを後から見て恥ずかしくなったり脳内記憶の補助や糧にするためのブログ

東野圭吾 秘密

良かった。とても良かった。相変わらず文章は淡白で箇条書きに近いし、比喩隠喩はほぼ出てこない。さらに今回は主人公の男性の行動原理が異常過ぎて感情移入し辛かった。のにも関わらずラストのトリックの解き明かしに心を揺さぶられた。

今回もまた、後半になると特に女性側の心理表現や言葉数が激減するので、読者に想像させる構成になっていたが、それが絶妙だった。トリックの都合もあったかもしれないが、行動一つ一つを、きっと、考えがあったんだろうと想像が止まらない。

割りとありきたりなトリックを、人間描写を深く深く描き、そしてミステリーとして完結させた東野圭吾の真骨頂を見せつけられた。

これは忘れられない作品になった。

これは短編集と知らずに読んでしまったため大変に混乱した。月という共通のテーマの物語であったが、世界感が妙に違いすぎて、どうやって終息するかと思ってワクワクしていたので、かなり残念な気分になってしまった。

残月記は、貸した知人が現代版オオカミオトコの話と言っていたが、その通りだと思う。

それにしても比喩表現がとても綺麗で上手だった。心地良く読めた。せっかくの活字なので、私はそういった表現が散りばめられている方が好きだ。

世界観もとても素敵だったので、短編ではなくアニメの脚本とかで長くゆっくり見ていたい気持ちになった。是非それぞれの話の続編が読みたい。


ノンフィクションということだが何よりも「殺人は親から伝染されるもの」という持論を確認するために読んだ。

まず、構成が良かった。合間合間に本人のメールのやりとりを挿入することで、深く犯人の意識に入り込んで行ける感覚を持った。それが記事と一線を画しており、読物としてしっかりと完成されていると感じた。

気になったのは、ノンフィクションのため、実在の人に配慮した内容になっていることだ。時折見える犯人の汚い人間性の部分を、とてもライトに描いていた。たとえばバスの回数券の偽造など。これはその行為自体も親のせいでもある可能性を、読者に考えさせることを含んだ表現となっている。「冷たい熱帯魚」や「64」では実話を元にした作品ということで、容赦なく犯人を根っからの悪人にしている(鑑賞は映画のみ)。この差はかなり大きいと思う。

本当に、犯人に問題はなかったのか。母だけが悪魔なのか。現実の事実を描こうとすると真実がかすんでしまうなと、思わせられた作品だった。