アポトーシスと酸性プール -15ページ目

レギネ式カタカナによる解釈。


帰って来ないんだ、大事な人が。
ありがとうって喜んで、楽して欲しいが為に隅々まで頑張った掃除。
ずっと開けっ放しにして換気を続けていた部屋。
「涼しくなったね。秋だね」と会話を咲かせたいが為に切った冷房。

現在全て、意味を無くしてしまっている。


相変わらず空は曖昧なの。気分が乗らなくてお風呂の掃除は途中で放棄した(スポンジに泡さえも取って居ないのだけれども)。

鍵はね、開けっ放しだよ。昨日ね、靴を借りたよ。少し僕には小さめでね、足先がまだジンジンするよ。


何時もの場所に行って夜勤疲れで眠っているのかな。僕は料理は1人で作るのは余り好きじゃないから、目玉焼きでさえ作っていないよ。
姉ちゃんが使わないと卵使う人居ないんだよ。ご飯だって炊く回数少なくなっちゃうよ(自分の為には極度の面倒くさがり屋、此処)。


疲れて眠ってる?それならいいの。

1人きりには慣れている。どうしてだろう、告げられた日付に家にいない今日はざわざわする。

口移し、口移し、「アイシテル」。


洗濯物を広げても、この曖昧な空が光を遮っていて。硝子越し、手を広げて雲を掴もうとしても届く筈の無い雲は拭う事さえ許されない。

昨日は先輩達2人と彼と4人でラウンドワンに行って、思いっ切りはしゃいで。
スケボーのゲームで彼に圧勝したのが嬉しかった。あのゲームすっごく楽しいし、誰かがやってるのを見ててもジャンプしてる感がして気持ちいい。

プリクラ撮ったり、ずっと手を握って歩いたり、一緒になってお酒飲んだり、車の中後部座席で四六時中くっついてキスして。何だかあの出来事以来、久し振りにあんなに傍に居た気がしたんだ。何時も傍に居るのだけれども(くっついて一緒に眠ったり、色んな話もしている。精神的にも身体的にも距離間は感じられない)、あんなにいちゃついたのは何だか。きっと、2人だけの世界じゃ無かったから彼も楽しかったのだと想う。僕も、楽しかった。

4人で食べた焼き肉も凄く美味しかったしね、ホルモンが柔らかくて口の中で溶けた。いっぱい食べた所為で胃が凭れ掛けてしまっているけれども。

あぁ、でもビールはとても冷たくて美味しかった。




彼とは。
否、彼には。
二度と抱いて貰えないと想っていた。

わざと、誘う様に脇腹と腰のラインを指先でなぞってみたり口付けて唾液を絡ませた舌先で逆撫でてみたりはしていた。けれども、そんな前戯的な行為が有ってからこそ少なからず彼が欲を感じてくれて性行為に走るんじゃないのか、とか。

昨日は。
アルコールが体内に回った所為かも知れないけれども、彼の口から漏れた「抱きたくなる」っていう言葉がとても、とても、嬉しかった。

重ねた肌と肌が柔らかくて、温かくて。心地良い感覚に同じく心地良い睡眠が訪れた。



ありがとう。


狡さは赤いワンピース。


赤いワンピースは僕の中に潜む狡さの証。
別れを覚悟したあの綺麗に晴れた日は彼が可愛いと云ってくれたから、僕は少しでも(蜘蛛の意図の様な期待で支えるのは鉄骨の如く大きな未練だった)彼を引き留める為にアレを着た。母親から買って貰った赤いワンピースは酷く丈が短く、僕が着るには珍しいスカート丈。

堂々と口に出してしまったなら、まるで意味を亡くしてしまうけれども。
彼が想うより僕はもっと汚くて、真っ黒で嘘吐き。
手慣れていないのは嘘を紡ぐより何かを信じること。

浅はか。
そんなうそつきのくちイコール僕。




クローゼットの中を不意にまるで気が狂ったかの様に漁り散らした。
意味はないのだけれど、何故か、急にしたくなった。

フローリングに散っていく服が、今の自分の様で。
(上辺だけ飾り立てて、こうしてバラバラに散らして行くと只の面倒臭い存在になった気がした)
服を下敷きにフローリングに倒れてみても、ベッドの下の埃と余り快適とは言え無い生きていない冷たさに少しだけ溜息を漏らしてしまった。


今日は何を着よう。
考える事がいっぱいで、余計に片づけるのが億劫になった。

一昨日のゴタゴタは僕の頭をパンクさせるには十分だった。
お陰で先輩へ向けた空気を散々悪くしてしまった。彼に何個も嘘を吐かせた。



ふと、存在が亡くなりたかった。