月曜日に劇作家・脚本家のニール・サイモンが亡くなった。91歳。
以前の記事に、この映画のことを書くと記してあったが、彼が先に逝ってしまった。
残念でならない。
これほどこころの温かいひとはいなかったと思う。
ニール・サイモンといえば代表作は、「おかしな二人」だろう。
ウォルター・マッソーとジャック・レモンの最強のコンビが演じた映画史上に燦然と輝く作品。
二人のその後を描いた映画『おかしな二人 2』もあるほどだ。
アメリカでは、テレビドラマにもなっている。
日本でも放映されていた。
舞台でも、日本でも何度も上演されている。
調べてみたら、なんと女性版『おかしな二人』が舞台化されていた。
また、アメリカでも現在映画化しようとしているようだ。
この作品は、生き続けている。
凄いことだと思う。
脚本の素晴らしさだろう。
ニール・サイモンは、脚本家の三谷幸喜が尊敬していることは有名な話。
学生時代に舞台『おかしな二人』を見て芝居の道へ進むことになったとして『僕の恩人』と言っている。
映画化されたもので見たのは『裸足で散歩』と『カリフォルニアスイート』が印象的だ。
主演のジャック・レモンは既に映画『アパートの鍵貸します』『あなただけ今晩は』『マカロニ』を記事にしている。
おかしなふたりの映画を紹介しよう。
物語はシンプル。
一番好きなシーンは、妻から離婚されて、フェリックス(ジャック・レモン)は絶望し、自殺を考えてひなびたホテルの上の階の部屋をとる。
飛び降り自殺しようとして、窓を上にあげようとするが、古くて渋い。
思い切って力を入れた瞬間、あっと腰を痛めてぎっくり腰になってしまい、その痛みで自殺することも出来なくなるというシーンだ。
死んだら痛みは関係ないと思うが、ぎっくり腰になるシーンは笑わせてくれる。
レモンの演技力はやはり超一級品だ。
わたしが一番愛する俳優。
このシーンは、人間の悲哀(ペーソス)を感じて大好きなシーンベスト20に入る。
死のうと思っているのに、ぎっくり腰で死ねないなんて、なんて情けないと。
本当は笑えない話だろう。だから深い。
フェリックスは行く所がなくて、友人オスカー(ウォルター・マッソー)のところへ行く。
ふたりは性格が反対。ひとりは、神経質で几帳面。
もうひとりは、ずぼらでだらしがない。
ふたりとも離婚という傷を抱えている。
ポーカー仲間たちが、部屋に閉じこもっているレモンの部屋から音がすると、彼が飛び降り自殺をしたんじゃないかと大騒ぎをするシーンも傑作だ。
友達ってなんだろう。
ニール・サイモンは子供のころ、家族関係に問題があり、親戚のあいだでたらいまわしになっていたという。
ほんとうに泣きたくなるような、いや子供のころはいつも泣いていたのだろう。
その悲しみから、笑いへ昇華させていくことを身につけたのかもしれない。
だって、よく見ていると悲しい話だけれど、つい笑ってしまうから。
単なる泣き笑いではない。
結局、同居したふたりが性格が正反対でいつもぶつかったり、どちらかがアパートから出て行くといっても、人間の愛おしさをとても感じててしまう作品なんだ。
人間の悲しさや微笑みが、とても近くに感じられて、こころが温かくなる。
その脚本を書いたのがニール・サイモンだ。
セリフの天才。スピード。
脚本はいつまでも書き直し。
人間て不器用なもの。
それをほんとうに温かい目線でいつも見つめていてくれるから、いまでも愛され続けている。
こころが疲れたと思ったら、彼の映画を見て欲しい。
こころにポッと暖かな灯りが付くだろう。
ニール・サイモンはこれからも生きつづけるだろう。


