今年はスタンリー・キューブリック監督が亡くなって20年だという。


ロンドンでは大回顧展が開催中だ。

 

わたしはいままでキューブリックの作品を取上げてこなかった。


尊敬する5人の監督のひとりなのに。


あまりに巨人過ぎて書けなかったといっていい。


ましてや、「オレンジ」は問題作となっている。

 

 

「2001年宇宙の旅」は、映画史上の最高傑作だろう。いずれ書きたい。

 

そして、最初に見たときのショックが今でも消えない「時計じかけのオレンジ」だ。


わたしの映画ベスト20に入る作品。

 

主演のマルカム・マクドウェルの強烈な個性がたまらない。


ファーストシーンでカメラがバーに入っていき、彼らの表情が見えるシーンだけで


ゾクゾクさせられてしまう。

 

 

 

 

わたしは、この作品の前に学園物のイギリス映画「if もしも」


(確か未だにDVD化されていない傑作だ)を見て監督は、彼を主役にしようと思ったという。


この映画はカンヌ映画祭祭でグランプリをとった。わたしも大好きな作品。

 

 

キューブリックは、以前カメラマンだった。


この映画は、カメラワークに拘り、照明もあわせて映像美の宝庫といってもいい。


スローモーションの使い方。音楽と映像の組み合わせは、未だに彼を越える監督は出ていないと思う。

 

サウンドトラックが大好きで、アルバムはそうとう聴いたと思う。


エルガーの行進曲「威風堂々」(イギリスでは第2の国家と呼ばれている。凄いアイロニーだ。)やベートーヴェンの「第9」の使い方。


ラストのジーンケリーの「雨に歌えば」の音楽を使うセンスの素晴らしさについては、芸術そのものだ。

 

青年たちのバイオレンスシーンを見ているうちに、眠っていた遺伝子にスイッチが入った感覚を覚えたのはわたしだけだろうか。


単にバイオレンスという言葉ではいいつくせないものがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

この作品は、わたしの中の大きな何かを変えた作品になった。

 

主人公は、暴力による犯罪を犯したために、矯正療法にかけられる。


目を閉じられないようにして、暴力的な映像を見せられるのだ。


彼は、現実に似た情景に出会うと吐き気がして何も出来なくなる。

 

犯罪とは、悪とは、更正とは何か。


国家は、犯罪を無くするという名目で、個人の脳を矯正して、いいなりにできることを知ったのだという見方もある。


こちらのほうも相当に恐ろしい。

 

 

映画「博士の異常な愛情」でも国家の権力の本質についてメッセージを

わたしたちに送っている。

 

「フルメタル・ジャケット」も軍隊訓練が人を狂気にさせていく。

 

狂気についてはスティーブン・キングの原作「シャイニング」でご承知の通りだ。

 

 

キューブリックは、人間の心理を映像化しようとしたのかもしれない。


それを極限まで追求し続けた芸術家かもしれない。

 

最近はCG等で大迫力の映画が出てきても、まだリアリティが足りないと感じる。

 

キューブリックの映像の世界を超えることはできていない。

 

それは人間の深層にあるこころをうまく表現できていないからかもしれない。


「時計じかけのオレンジ」が傑作なのは、それができているからだろう。

 

映画史に残る問題作であり、現代の管理(監視)社会を照らす反面教師の作品かもしれない。

 

 

「暗黒がいかに広大であろうと、われわれはそこに光を投げかけるべきだろう」


スタンリー・キューブリック。

 永遠に。