わたしたち結晶世界に住むひとたちにとっては、桜が開花したという言葉は、

ようやく春が訪れたということを意味している。

特に今年は寒かった。


こちらでの開花は4月30日だった。

函館山の中腹にある大きな桜に会って来た。

市街地より寒いせいか、まだ桜のつぼみの状態だった。

それでも会えたことがうれしかった。


それは、わたしがまだ会いに行けるということだから。

この場所はきつい上りのため心臓に負担がかかる。



$絶対への接吻あるいは妖精の距離



幸い今年はあまり息切れもせず辿り着けた。

花というより、大きな桜の木そのものに会ったような気がしていた。



$絶対への接吻あるいは妖精の距離



木の前で胡坐をかいて、静かに木と桜のつぼみを眺めていた。


小鳥のさえずりがとても美しい。

ほんとうに空気が美味しい。

空気は少しひんやりしているけれど、この風のさわやかな心地良さは言葉でいいつくせない。




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幸い天候に恵まれた。

空はどこまでも青い。

周りの山にはうっすらと残雪がある。

静かに桜の木を眺めていると、あらためて数年前の災害でも生き残ったことを思い出していた。


形は美しくはないけれど、堂々とした力強さを木そのものが感じさせてくれる。


桜の華の美しさや、優しい感じは、背景に木そのものの強い生命力からくることを。

それがほんとうの美です。

そんな桜の木の精の声が聞こえるような気がした。



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わたしがこの世界から姿を消しても、樹齢100年以上のこの桜の木は生きているだろう。

それはありがたいことだと感じていた。



市街地に戻って、公園で桜が大きな花を咲かせていた。

みんなの表情の美しいこと。

うれしい表情。

その笑顔が、なにものにもかえがたいものだと感じていた。

冬からの開放感かもしれない。

この半年間、冬の寒さに耐えてきたのだから、この桜を見ることは心の底からうれしいことだろう。

また緑に会える。

凍りついた結晶世界は、半年間だけ緑と暖かさを与えてくれるんだ。



$絶対への接吻あるいは妖精の距離




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最近、無呼吸症候群のせいか、記憶力、表現力、集中力等の低下を感じている。

時々、得体の知れない不安や焦燥感に襲われることもある。

日常生活ではあまり不便ではないけれど、仕事の面で支障が出始めている。

睡眠中に呼吸が止まるため、脳があまり休むことができないのかもしれない。


身体とこころは繋がっているのだけれど、バランスが狂っている。

病気がこころに大きな影響を与えているんだと思っている。

スポーツクラブに通って効果が出ているものもあるけれど、

からだもこころもほんとうにやっかいなものだと思う。

解決法は中々見つからない。


それでも、こうやって美しい桜を愛でることができるのは幸せだと思っている。

幸せとはそういうものではないか。


桜の木の精は、わたしに何かを教えてくれたのかもしれない。


これからは空の精、水の精、木の精、花の精と会話をしようと思っている。

自然そのものになかにヒントがあるよという声が聞こえたから。



$絶対への接吻あるいは妖精の距離




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また来年、あの大きな桜の木の精に会いに行きたい。

それがわたしの生きる目的のひとつであってもいい。



「春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり」   西行