映画「危険な年」と映画「キリング・フィールド」 | TO NI LAND 

 

 

 

映画「危険な年」を観た。

 

 

 

 

 

 

 

インドネシアで

1965年に起きた、

 

クーデター未遂事件が

クライマックスとなる作品で、

 

 

政情不安な国での、

 

外国人ジャーナリストと

現地人の助手との、

 

友情が描かれている

ところから、

 

 

すぐさま、

 

映画「キリング・フィールド」を

思い出したが、

 

 

公開されたのは

「危険な年」のほうが早く、

 

 

歴史的に見ても、

 

「キリング・フィールド」の

舞台となっている、

 

カンボジア内戦よりも、

 

 

インドネシアの

クーデターのほうが、

 

5年ほど先に起こっていて、

 

 

 

「キリング・フィールド」が、

 

ノンフィクションを

原作とした作品で、

 

 

実際にクメール・ルージュの

強制収容所を体験した、

 

ハイン・S・ニョールが

現地の新聞記者役を演じ、

 

 

俳優としては素人だった彼が

オスカーを受賞したことや、

 

 

 

映画公開当時で言うと、

 

わずか10年ほど前の

カンボジアで、

 

現実に起きた大量虐殺が

取り上げられているのが、

 

国際社会に

衝撃を与えた分だけ、

 

 

同じく、

 

オスカーは獲得したものの、

 

 

フィクションであり、

 

ロマンスの要素まである

「危険な年」よりも、

 

 

評価が高く、

 

重みのある作品に

仕上がっているが、

 

 

 

「危険な年」で扱われた

クーデター未遂事件の、

 

延長線上にあるのが、

 

 

映画「アクト・オブ・キリング」の

狂気に満ちた世界なのだから、

 

 

 

「危険な年」にしろ、

 

「キリング・フィールド」にしろ、

 

 

それぞれが取り上げた

歴史的な事件は、

 

 

どちらも想像を絶する

大虐殺には変わりなく、

 

 

それが、

 

わずか半世紀ほど前の

出来事だということが、

 

やはり衝撃的だった。

 

 

 

 

 

主人公である、

 

オーストラリアのジャーナリスト

ハミルトン役を、

 

 

映画「マッドマックス」

に続いて、

 

「マッドマックス2」

も大ヒットした頃の、

 

メル・ギブソンが

演じていて、

 

 

若さはもちろんだが、

 

髪型といい

ハミルトンの気質といい、

 

“マックス”

そのままなので、

 

 

おそらく、

 

何の役作りも

不要だったように思え、

 

 

 

ハミルトンが恋に落ちる、

 

イギリス大使館秘書の

ジル役を、

 

 

映画「エイリアン」が

大ヒットしたことで、

 

有名になったばかりの、

 

シガニー・ウィーバーが

演じているのだが、

 

 

強くて賢い女性の

役柄なので、

 

 

やはり、

 

「エイリアン」の、

 

“エレン・リプリー”の

イメージと重なってしまい、

 

 

どちらも、

 

大ヒットシリーズの

主人公として、

 

顔が売れているため、

 

 

二人が、ハミルトンと

ジルを演じたところで、

 

 

スーツを着たマックスと、

 

ドレスを着たリプリー

のような感じがしてならず、

 

 

マックスは、

 

トーカッターや

ヒューマンガス、

 

ティナ・ターナーとまでも、

 

 

リプリーにおいては、

 

あんな

奇怪な化け物なんぞと、

 

戦っているわけだから、

 

 

いくらインドネシアの悪党や、

 

PKI、国軍などが

二人を脅かしたところで、

 

 

緊迫感がなく、

 

 

恋愛にしても、

 

 

ドライブ中に

面白半分で検問を突破し、

 

 

兵士たちから

機関銃を乱射されても、

 

爆笑しているような

カップルでは、

 

 

リアリティーを

感じなかったが、

 

 

 

ジャーナリストの使命を

果たすために、

 

現地にとどまってさえいれば、

 

 

間違いなく、

 

世紀のスクープをものにして

いたであろうハミルトンが、

 

 

助手が言い残した言葉と

ジルとの約束に従って、

 

人間関係を重視した、

 

 

“ハミルトンの価値観の変化”

という、

 

 

おそらくこの作品の、

 

メインプロットの一つ

だと思われる部分は、

 

表現できていたように

思えるので、

 

 

そのへんは、

 

斬新なキャスティングによって

不安定感が生じても、

 

 

落としどころは

わきまえている、

 

ピーター・ウィアー監督の、

 

手腕のおかげで

あるような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

「キリング・フィールド」で、

 

 

外国人ジャーナリストの

助手として行動を共にする、

 

現地の新聞記者という、

 

 

ハイン・S・ニョールが演じた

役どころなのだが、

 

 

 

「危険な年」では、

 

“小人の現地カメラマン”

として、

 

 

おそらく

この役どころがなければ、

 

薄っぺらい作品になっていた

と思われるような、

 

 

重要なポジションで

存在していて、

 

 


スカルノ政権が、

 

いかに難しい

国政の舵取りをしているかを、

 

 

映画「ワンス・アポン・ア・タイム

・イン・アメリカ」の、

 

アヘン窟でも登場する、

 

影絵芝居を使って、

 

 

ハミルトンに

巧みに説明するような、

 

ミステリアスな男で、

 

 

彼の言う、

 

“小人は賢くても

他人に妬まれない”

 

という利点を活かしてか、

 

 

現地の情報機関や組織に

顔が利くので、

 

 

頼りがいがあって、

 

 

現地の貧しい母子を

養っていたりもする、

 

男気のある人物なのだが、

 

 

どこか、

 

彼には違和感を覚え、

 

 

政情不安によって

不穏な空気が漂う、

 

混沌としたジャカルタと、

 

 

“マスター、ブラスター”で

小人慣れしている、

 

マックスのイメージに、

 

 

その思いをかき消されつつ

観賞したのだが、

 

 

 

なんと、

 

 

現地カメラマンの男を

演じていたのは、

 

小人の男性ではなく、

 

 

小柄な女性で、

 

 

ケビン・コスナーに

とっては、

 

映画「再会の時」の

リベンジ映画でもある、

 

 

映画「シルバラード」にも、

 

 

酒場の女店主役として

出演していた、

 

リンダ・ハントだというのが

あとから分かって、

 

 

違和感は解消されたうえに、

 

 

 

ピーター・ウィアー監督でも、

 

メル・ギブソンや

シガニー・ウィーバーでもなく、

 

 

彼女こそが、

 

この作品に唯一のオスカー

をもたらせた張本人で、

 

 

しかもそれが、

 

 

男性を演じて獲得した、

 

助演女優賞である

ということに驚かされ、

 

 

小柄な女性に

小人の男性役を演じさせて、

 

 

しかも、

 

オスカーを獲得させるという

監督の手腕には舌を巻き、

 

 

 

さらに、

 

 

 

何を隠そう、

 

「キリング・フィールド」で

助演男優賞を獲得した、

 

ハイン・S・ニョールに、

 

 

オスカー像を手渡したのが、

 

リンダ・ハントだというのだから、

 

 

もはや

漫画のような展開だが、

 

 

どれも素晴らしいエピソード

には違いないと思った。