映画「アリゾナ・ドリーム」大鮃はアリゾナの夢を見る。 | TO NI LAND 

 

 

 

 

 

 

このような初夢を見たこともあるが、

 

それはさておき、

 

 

映画「アリゾナ・ドリーム」を観た。

 

 

 

 

白身魚フライで

食したことがあるので、

 

大鮃は馴染みのない魚では

ないが、

 

 

画面の中をユラユラと

泳ぎ回られると、

 

なんとも奇妙な魚に見えて、

 

 

魚であるにも関わらず、

 

脇役でもチョイ役でもなく、

 

ジョニー・デップや

ヴィンセント・ギャロと

肩を並べて、

 

主役級の存在感なところが、

 

いかにも、

 

クストリッツァ監督作品

という感じがして、

 

 

ハリウッド進出作品で、

 

豪華俳優陣を使っていて、

 

やはり、

 

ジョニー・デップや

ヴィンセント・ギャロが、

 

出演しているという

共通点からか、

 

 

ミカ・カウリスマキ監督の

映画「GO!GO!L.A.」と、

 

雰囲気が

似ているようにも思えて、

 

 

 

 

 

フェイ・ダナウェイ演じる

エレインと、

 

リリ・テイラー演じるグレースが暮らす

母娘宅で巻き起こる、

 

様々なエピソードから醸し出される

独特の高揚感が、

 

 

映画「アンダーグラウンド」

のお祭り騒ぎに、

 

受け継がれているようにも

思えた。

 

 

 

 

なんと言っても、

 

まだ30歳のジョニー・デップは

瑞々しく、

 

 

髪型や、フェイ・ダナウェイと

一緒に居るせいか、

 

どことなく、

 

やはり若い頃の、

 

岡村靖幸に雰囲気が

似ているようにも思えて、

 

 

そんな彼が見せた、

 

まさかの

ニワトリのものまねや、

 

弾けた演技は見もので、

 

 

ヴィンセント・ギャロも

まだ32歳と若く、

 

 

“清潔感のあるヴィンセント・ギャロ”

というのは、

 

どこか青臭く感じて

私は好きになれなかったが、

 

 

執拗に繰り返されるデニーロや、

 

映画「北北西に進路を取れ」などの、

 

彼のものまねには大爆笑し、

 

 

気付いた者だけが楽しめる

映画ネタもあって、

 

 

普通、パロディ映画や、

 

オマージュシーン

などと言えば、

 

 

過去のヒット作や話題作

の元ネタがあってのものだが、

 

「アリゾナ・ドリーム」では、

 

 

ジョニー・デップが

ナレーションな上に、

 

キャデラックで夜の街を

流したりする辺りは、

 

映画「ラスベガスをやっつけろ」

のようだったり、

 

 

母娘宅でのディナーシーンの

カット割りが、

 

映画「バッファロー'66」の

ようだったりと、

 

 

この作品よりも

後に公開された映画の、

 

ワンシーンや雰囲気を

感じさせる場面が多くあって、

 

 

名シーンと言われている

ものならば、

 

後から公開されたそれらの作品が、

 

「アリゾナ・ドリーム」のあのシーンを

真似たなどと言うのだろうが、

 

 

地味で何気ないシーンなのが

不思議でならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

そんな不思議感を抱えたまま、

 

 

ジョニー・デップ演じる

アクセルが見た夢とされている、

 

冒頭のアラスカでのエピソードが、

 

 

時間軸に沿っていないことに

気付いた。

 

 

 

 

 

ピストル、たくさんの犬、

上着の中での抱擁などの、

 

 

現実で経験したことが、

 

夢に反映されたとばかり

思っていたのが、

 

時間軸で言うと、

 

 

夢が正夢になった流れ

になっているのだ。

 

 

 

そうなると、

 

もはやアクセルの見た夢では

つじつまが合わなくなり、

 

 

だったら

誰が見た夢なのだろうか、

 

 

母子宅での、

 

人間ヨーヨーや、ニワトリなどの、

 

常軌を逸したお祭り騒ぎ

こそが夢なのだとしたら、

 

 

アラスカの少年が見た夢?

少年の父親が見た夢?

 

 

 

「アリゾナ・ドリーム」という

題名からしてそうなのだが、

 

 

寝ている時の夢にしろ、

 

将来の夢にしろ、

 

この作品は

様々な”夢”を扱っていて、

 

 

 

 

 

 

“夢は実現すれば

もはや夢ではない”

 

という言葉が示す通り、

 

 

“夢”と現実とが

混在している世界では

ないかと思われ、

 

 

“夢”と現実すべてに登場し、

 

ジョニー・デップ、

ヴィンセント・ギャロと

肩を並べる、

 

大鮃こそが主役で、

 

 

作中での、

 

“魚の夢を探り

自分の夢にする”

 

というアクセルの“夢”

から察するに、

 

 

「アリゾナ・ドリーム」とは、

 

魚になりたかった男が叶えた、

 

夢物語のように

思えたのと同時に、

 

 

その世界観を描くのに、

 

緻密にエピソードを配置した

クストリッツァ監督の手腕に、

 

やはり恐れ入った。

 

 

 

 

 

 

残念だったのは、

 

 

映画「俺たちに明日はない」以来の、

 

フェイ・ダナウェイと

マイケル・J・ポラードの、

 

ツーショットになり得たのに、

 

 

実現しなかったことで、

 

 

同じシーンなのになぜ?

と歯痒かったが、

 

 

クストリッツァ監督に

言わせれば、

 

 

 

“ボニーがCWモスなんかに

もう一度会いたいはずが

ないだろう?”

 

なのかもしれない。