大原問答では日本を代表する博学の多くの僧侶たちが法然上人の教えが真の仏教であるかを追求しようと意気込んで臨んだのです。
そんな中で法然上人が高座につかれると、大原問答の第一問は、まず天台座主になる顕真からでした。
いきなり核心を突いてきます。
速やかに輪廻を離れて仏になる道は、釈迦一代教の中でも最上の、華厳宗、天台宗、真言宗、禅宗の4つの道といわれています。
それを法然殿は、浄土仏教のほうがすぐれていると言われるのは、どういうわけですか?
法然上人は、平然として答えます。
「お釈迦さまの教えに優劣はありませんが、仏教は何のために説かれたのでしょうか。
衆生の迷いを転じて、仏のさとりを開かせるためでしょう。
衆生を救う点で、浄土門のほうが優れているのです」
衆生を救う、というと何がすぐれているのですか?
「すべての人が救われます。
天台宗や真言宗、禅宗などの自力の仏教は、人を選ぶではありませんか。
それは智慧のある人でなければなりません。
欲や怒りや愚痴の者は助かりません。
たくさんの厳しい戒律もあります。
それでは殆どの人は救われないではありませんか。
しかし、他力の仏教は違います。
欲のやまぬ者も、怒りの起こる者も、愚者も、智者も、善人も悪人も、男も女も、すべての人が救われるのです」これには、顕真も言い返す言葉がなくなってしまったそうです。