虫けら屋の「ちょっと虫採り行ってくる!」 -9ページ目

「今年はおかしいね。」

…は、もはや毎年恒例の言葉になりつつある気がしますが。

 

 

どうも今年は、

本来の時期を超えて遅くまで見られる虫が多いように感じます。

 

 

季節外れに出てくる虫というのは、

毎年、少ないながらも、いることはいます。

 

私自身、数年前に自宅前で正月にオオカマキリを見ています。

年明けて2日目、まさか年の最初に見る生きた昆虫がカマキリとは思いませんでしたが。

 

 

そんなワケで、季節外れの虫が全くいないワケではないのですが、

今年はそれが多いように思うのです。

 

 

SNSを見ていても、信憑性が高そうなものだけでも、

 

11月の終わりに生きたアブラゼミがいただの、

 

12月に入っても野外でノコギリクワガタがいるだの、

 

そんな話が入ってきます。

 

 

そんな中、自分もそのひとつを目にすることになりました。

 

 

12月7日

自分は、東京大学の総合研究博物館で

昆虫関係のお手伝いをさせて頂いているのですが、

その裏手にて…

キボシカミキリ

 

しかも、死にかけのボロボロではなく、

脚も触角も欠けのない、きれいな♀(メス)。

 

寒さで動きはかなり鈍くなっていましたが、

まさか12月にキボシカミキリを見つけるとは思いもよらず。

 

 

 

…ちなみに、後ろに見えるのはヒマラヤザクラといって、

11月末~12月に花が咲く桜です。

 

なので、

撮影は12月7日だというのに、

桜にカミキリムシとまるで冬らしくない写真に

なってしまっていますが(笑)

 

 

ブログをご覧頂いた皆さんは、

何か季節外れな生き物との出逢いはありましたでしょうか?

 

昆虫ーっす!

虫けら屋です。

 

さて唐突ですが、

ちょっと下の画像を見てください。

 

これは、ハチジョウノコギリクワガタという、

伊豆諸島の八丈島にしかいないノコギリクワガタの仲間なのですが、

 

真ん中の小さな個体にご注目!

 

 

…これ、

オスでしょうか?

メスでしょうか?

 

 

…真ん中の個体だけ拡大してみましょう。

体全体の雰囲気からするとメスのようであり、

しかし細くて長い脚はオスのもの。

そして小さいながらも大アゴもメスとは違います。

 

 

なんとも、オスともメスともつかない形をしています。

 

 

…実はこれ、いわゆる「雌雄型(しゆうがた)」と言われる、

オス・メスの特徴が混じったとても珍しい個体なのです。

 

最初の画像で、左のオス&右のメスと比べてみると、

頭部や前胸、胴体の形はメス、

大アゴや脚の形はオスの特徴が出ています。

 

雌雄型というと

「左右で半分オス・半分メス」というパターンが有名で、

もう少し詳しい方なら

「雌雄の特徴がモザイク状に特徴が混じり合ったあまり美しくない個体」

も知っているかもしれません。
 

しかし、中にはこんなふうにきれいに特徴が混じり合ってしまう個体も

出てくるのです。
 

あまりにきれいに混ざり過ぎて

あまり「異常感」がなくなってしまっていますが、

これも立派な雌雄型です。



…この個体を採集したのは、2010年5月22日の八丈島。


畑脇の捨てられた鉢植えをどかしたところ、

その下にとても小さなハチジョウノコギリがいたのですが、
頭がやたらと小さくてバランスの悪いオス…

 

………オス…?
 

 

……ん?
 

 

えっ? えっ? えっ?
 

 

これはまさかもしや…!?

 

 

…とまぁ、そんな感じで採集したのが本個体だったのでありました。





※こういう雌雄の特徴が混じったものに、

「雌雄同体」という言葉が使われているのをよく目にしますが、

雌雄同体というのは本来は、カタツムリ等のように、

もともと正常な状態で雌雄両方の機能を持っているものを指す言葉で、

今回のように本来はオスメスが別なのに、混じってしまった異常型を指す場合は、

「雌雄型」「雌雄篏合体(しゆうかんごうたい)」という呼び方が正しいものになります。

標本は基本的に乾燥させて作りますが、

梅雨時だったり、家の立地だったりで

湿気が多くて乾燥に支障が出ることもあります。

 

そんな時にちょっと検討して頂きたいのが、

ドライボックスです。

実はこれ、

本来カメラ用品の除湿保管用の容器なのですが、

標本乾燥にも使えたりします。

 

…ちなみに画像の物はヨドバシカメラで購入したものですが、

2,000円でお釣りが来ます。

 

蓋にゴムパッキンが入っていて密閉できるので、

中に乾燥剤を一緒に入れておけば、

外気の湿度に関係なく中の虫を乾燥させる事ができます。


また、

画像の物は長さがあるタイプなので、

展翅板や志賀の展足板がそのまま入ります。

※市販の展翅板や展足板を使わない場合は、

タッパーウェアや他のサイズのドライボックスでも良いと思います。

 

ちなみに、

私は中に小さな金属棚を入れて2段にして使っています。

 

もっと大量の標本を作る人の場合、

乾燥用の棚を作ったり温風機を取り付けて更に乾燥期間を短縮したりと

色々な工夫をしているようですが、

 

それほど数を採らず、少数の標本を作るのだれば、

このドライボックスはかなり優秀です。



「展翅したチョウを乾燥させたいんだけど、

 むき出しで置いておくのは虫に食われる心配があるし…」

なんていう時には、

カメラ屋さんを覗いてみるのも良いかもしれません。

先日、家族で千葉県野田市にある清水公園に行ってきました。

 

 

で、ヤギやウサギと触れ合える広場(?)で

子供2人に動物に触らせていたのですが、

 

 

ふと目の端に何かが映りまして。

 

 

黒い、小さいモノがフラフラと飛んでいるではないですか。

 

 

なんとなくの形や飛び方から察するにハエではなさそうで、

となると、「糞虫(ふんちゅう)」と呼ばれる、

動物のフンに集まるコガネムシの仲間の可能性…

 

気になって目で追っていると、

コンクリの地面に落ちたので、

慌てて近づいて確認すると、案の定。

 

私の手と比べてもらうと分かりやすいと思いますが、

小さなコガネムシの仲間です。

 

拡大してみると、

真っ黒で、ツヤがあります。

 

マグソコガネ という、糞虫の一種です。

 

ヤギやウサギの糞の匂いに惹かれて飛んできたのでしょうね。

 

 

 

家族で公園に遊びに行こうとも、

やっぱり無意識に虫を探してしまいます。

 

どこに行っても、私は私(笑)

 

 

…まぁそれはともかく、

「虫が採れる場所に行く」のもとても楽しいものですが、

「今いる場所で、どんな虫が採れるか?」

なんて考えも持っておくと

意外な虫との出逢いがあるかもしれません。

 

※この記事は、ひとつ前の記事「ケブカコフキコガネ(1)~紹介編~」の続きです。※



前回は主にケブカコフキコガネという虫の紹介をさせて頂きましたが、

今回はその続きというコトで沖縄での本種の生態と採集の話です。


わざわざ冬の沖縄まで虫を採りに行こうという人は少ないと思いますが、

いざ実際に行ってみようという方がいたら、とても参考になるとは思います。

 

 

 

…が、それゆえに長いので、読みたい方だけどうぞ、というコトで(^^;

 

 

2年に一度のシーズンを狙って毎回色々な場所に採集調査に行き、

個体数的にはそれなりの数(♂は延べ1,000頭以上・♀は60頭以上)

を観察しましたので、ある程度は信頼できると思います。
(…あ、勿論、この数は観察した数であって、採集した数ではないですよ。特に♂。採ろうと思えば採れる数ですが、そんなに採っても仕方ないですからね…)


 

ー発生ー

2年に一度の大発生をしており、偶数年の冬に多く見られます。

2010年、2012年、2014年…という具合ですね。

なので、2020年の今年も偶数年なので、たくさん見られると思います。

 

クリスマス前後に一番数が多くなることが多いのですが、

年によってピークがかなりズレるため、

12月17日ころにピークを迎えてしまった年もありました。

 

とは言え、年を越えて1月でもまだ見られるので、

たくさん採るのでなければ、クリスマス頃に行けば十分に採集できます(♂は)。

 

沖縄のものは幼虫の時にリュウキュウチクという細い竹の根を

食べているらしいことが分かっており、

やんばるの道脇にリュウキュウチクがたくさん生えている場所を

目印に探すと成虫も比較的簡単に見つかります。

 

 

 

ー活動ー

日没…というか周囲が真っ暗になると雌雄ともに活動を開始しますが、

活発になるのは19時頃からです(※クリスマス頃だと、18時には真っ暗になる)。
 

リュウキュウチクや細い木なんかによじ登り、

♂は少しすると活発に飛び回り始めます。

気温12℃の雨天(本降り)時でも雌雄とも採集できたことから、

比較的低温にも強く、

また活動場所が森の中のため雨天でも平気で活動するようです。
 

ちなみに昼間は基本的に地中にいるらしく、

雨天時の活動開始直後は泥の付着した個体が多かったです。

 

♂はよく飛び、光にもよく集まるのですが、

ポイント(♀の匂い?)に固執しており、

森から出る個体は少ないです(※1)。

 

…が、全く森から出ないワケではないので、

初めて探しに行くならやんばるのダムの明かりを見て回るのが一番簡単だと思います。

何ヶ所かのダムの明かりを回れば、♂は拾えるはずです。


 

…ちなみに、

珍品の♀を採集したいと思ったら森に入るのが確実ですが、

真冬でも暖かい日には毒蛇ハブが動いているので

簡単にはお勧めできません。

 

それでも自己責任で♀を探してみたいという人には…

 

林内で♂が四方八方から飛んでくるような場所は、

半径2m以内に♀がいる場合が多かったので、

小さな蛍光灯か何かを持ってリュウキュウチクの生える林内に入り、

♂の多い場所を探すと、♀を見つけられる確率が上がります。
 

 

 

♂は19:00~21:00頃が飛翔のピークみたいですが、

飛ぶヤツはそれ以降でもブンブン飛んでます。

それこそ23:00だろうが02:00だろうが。
 

ただ、あまりに気温が下がると流石に不活発になるみたいです。

 

♀は滅多に飛ばないものの、飛べないワケではないようで、

野外で1回、車内観察で1回(別個体)、♀が飛ぶのを見ています。
 

ちなみに♀は全くと言ってよいほど光に来ません。
ダム灯火や、自分の持つライト明かりに向かって飛んでくるのは

すべて♂でした。

 

♀は多くの場合、

目線より低い位置にとまっており(採集した♀のうち7割ぐらいは低かった)、

場合によると地上から数cmの高さにいる事もあります。
 

ただし高さ3~4mの所に付いていた個体もいたので、

低い所ばかりではないんだよなぁ…(^^;

 

基本的には周囲にある程度風が通って

匂いが拡散しそうな空間のある場所の

細い枝や竹に付いている事が多い印象です。


実際に見た感じだと、

リュウキュウチクより、低灌木の細枝なんかに付いている事の方が多かった印象です。
 

灌木>>>リュウキュウチク>>ヒカゲヘゴ…な感じ。
 

ヘゴで見つけたのは一例だけ…だったと思います(たぶん、きっと、おそらく)。
 

 

また♀は交尾を終えるとすぐに地面に潜ってしまうのか、

時刻が早いほど発見率は高かったです。

(いやまあ、採れば採っただけ数は減るのでその分発見率は下がる、ってだけかもしれませんが)
…ただし22時頃にも見つけてますので、いないワケではありません。

 

また、林内で天然記念物のケナガネズミが、ケブカコフキを捕食しているらしく、

2010年のやんばるでの採集では毎晩ケナガネズミを見掛けた上、

明らかにケブカコフキ♂の羽音に反応して追い掛けている様子を観察できました。


中身がスカスカであまり腹もちは良くなさそうですが、あれだけ数がいれば良い食料なんでしょうね。
 

 

…見掛けた中では、他に天敵になるのはジョロウグモぐらい?
林縁のケブカコフキが飛びそうな場所に巣を張って結構な数を捕食してるみたいでしたね。



-交尾行動-
♀はあまり移動せず、風通しの良さそうな場所に掴まって

フェロモンを飛ばして♂を呼び寄せるようです。

 

フェロモンに誘引されて飛んできた♂は、

最初♀の背面に重なるように乗ります。
 

この時点では、♂と♀は同じ向きになっており、

そのまま重なっている状態です。


やがて♂はゆっくりと交尾器を伸ばし、♀交尾器に挿入します。


挿入が開始されると、♂は次第に後ろに下がり、

より深く交尾器を挿入していきます。
 

♀に掴まっていた脚を、前脚・中脚・後脚と順に放していき、

最後は♀と180°反対向きになり、

交尾器のみでつながった状態になり、

ここまでいって初めて挿入が完全になされた状態になります。

この状態のまま十数分程度交尾は続きます。





…とまあ、観察知見はこんなモンでしょうか。

「自分で採集してみたい!」

という奇特な方がいたら大いに参考になるように…

と思いながら書いてみましたが、いかがだったでしょうか?

 

 

私が10年もハマッて追い続けている虫なので、

この記事を見て、少しでも興味を持ってくれる方がいたら、

とてもうれしく思います。

 

 





※1:2010年の自分の採集の際のピーク(12/27)の際、

  林内では多数の♂が飛翔していたにもかかわらず

  200m先の水銀灯には4~5♂しか飛来していなかった。
  また同じ林内でも、10m四方ぐらいはやたらと♂が飛んでくるのに、

  そこからまた10mも離れると羽音ひとつ聞こえなくなる事が多い。