朝食の後で気がついた。
ここ木更津東泉寺は谷間のような場所にあるため、庫裡に陽が差すのは10時近くになってからだということは既に書いた。
(cf.お寺の朝)
ところが、台所の窓の外、ちょうど玄関を入ったところから見える中庭は、もっと早くから暖かそうな光が溢れているではないか。
これは食後のお茶を飲む場所として、最適ではないか!
さっそくお茶のマグを持って台所から外に出てみた。……あったかい!
今までは気持ちの余裕がなくて気が付かなかった不思議な植物が、目の前で朝陽を浴びている。
なんだろう、このふわふわした蕾?芽?
こんなときには、植物のことなら何でもござれ、という友人に訊くのが近道。自分で調べない怠け者の私は、しょっちゅう彼に訊いている。
携帯で写真を撮って送ると、夜になってからだが返事が来て、ネコヤナギの冬芽とのこと。
朝の時点では名前は分からなかったものの、とにかくフワッフワの手触りで、まるで生まれたての子猫が日光浴をしているみたいだなぁと思った。
よく見ると、ふわふわの一部に顔のような部分がある。花だろう。
これなんか、まるでフワフワの動物か着ぐるみが踊っているみたいだ。
朝から何ともホッコリする、良いものが見られた。
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【以下、写真はありません。いつもの独り言なので、写真目当ての方はここまでで。。。】
夜、植物博士の友人から返信をもらった頃のこと、またぞろ銭湯へ出かけた。
何故かというと、またぞろ庭木の剪定の真似事をしてすっかり冷えてしまったからだ。
友人からのメールでフワフワの猫植物のことを思い出し、自分もああいう風に力が抜けたら、凝りがとれて身体の冷えも治まるのではないかと思い至った。
そこで件の銭湯で、ぬる湯の露天風呂に身体を長々と伸ばし、深く複式呼吸をしながら目をつぶっていると、だんだん身体が浮き上がってくるのが感じられた。
力が抜ければ水に浮く、緊張したり怖がったりしていると沈んでしまう、というのはよく聞く話。
実際に、最初は沈んでいた手足が、力が抜けて筋肉が緩んでくるとともにフワリと浮き上がるのが感じられた。
そして、頭までも。
あまりプカプカやっていると、溺れたか気を失ったかと誤解されて通報でもされたらイカンと思って、最初のうちは時々露天風呂の出入り口をチラチラ見ていた。
だが、だんだんそんなことも気にならなくなり、プカプカと浮かび、心の中にはフワフワのネコヤナギの冬芽だけが浮かぶようになった。
「あの、起きてますか?」
「え? あ、ゴメンナサイ。生きてます。起きてます!」
「いやぁ、浮かんでるから寝てるわけじゃないとは思ったけど、おととい浮かんじゃった人がいたからね。こうして一応見回っているんだよ。」
「いや、ホントすみません。すっかり気が緩んじゃって。……えー? 浮かんじゃった人って、大丈夫でした?」
「急いで心臓マッサージをして救急車を呼んだからね。一度は心停止だったけど、助かったってさ。」
「おお、蘇生が早かったから助かったんでしょう。お掃除をなさってるだけじゃなかったんですね!」
「まあ、前の職場で一応研修を受けたからね。」
ネコヤナギのごとくフワフワの心地になるのは、身体には良かったようだ。
ただ、やっぱり周囲には気を付けないとなぁ。
こんなお風呂が、専用で欲しいなぁ………