昨日はいろいろ疲れたので、夕方甘酒を作った。

 

ちょっと多すぎたので、離れで暮らしておられるご住職の母上にお裾分けすることにした。
(このあたりの事情は、1月25日以降の記事や花鳥風月 私の「遊び場」などを参照)

 

適当なカップに甘酒を入れて庫裡の外に出ると、昨日もなかなかきれいな夕焼けだった。
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離れへ行って、このところほぼ恒例となっている夕方のおしゃべりを楽しんだ。

 

しゃべりながらもご住職の母上は忙しく動き回っておられるのだが、物置棚の扉代わりに使っているアコーディオンカーテンの取っ手がとれたままになっていたので、こちらもおしゃべりを続けながらちょこっと直して差し上げた。

 

と、そのとき母上が棚の一番上を指さして「あれは昔のマンドリンなのよ。」

 

ちょっと意外に思って(失礼!)、「えー? 音楽をやっていらしたんですか。ちょっと意外ですねぇ。マンドリンってギターみたいなのですよね?」

 

「そうそう。若い頃、給料をつぎ込んで買ったんだけど、上手にならないからやめちゃってねぇ。今じゃぁ指がこんなだから、もう弾けやしない。」

 

いつも境内の草取りやお掃除に明け暮れていらっしゃるので、しっかりとした手指であるが、確かに硬そうだ。

 

「イタリア製だから、良いものだと思うけれど、ほったらかし。もう十年以上も開けてみてないわよ。」

 

マンドリンという言葉は聞いたことがあっても、実は見たことがなかったので、取っ手の取付けが終わったところで見せて頂くことにした。

 

小さくてグラグラする屋内用の三脚によじ登って、棚からマンドリンのケースを下ろしたのは、もちろんお母上(91)。

 

いつもご自分で何でもなさる方なので、決して代わりにしようなどとしてはいけない。叱られてしまう。

 

外で埃を払ってからケースを開けてみると、思ったほど傷んでいない。それどころか、きれいなものだ。金属製の弦も切れているわけではない。
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よく見ると、この装飾などはベッコウと螺鈿ではないかと思われる。よく分からないが。
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中央の穴、サウンドホールとか言ったかな、そこから中に何か書いてあるのが見えたので、写真を撮って拡大して見ると、確かにナポリという字が読める。
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「もしかしたらものすごく良いものなんじゃないですか。もうお使いにならないなら、誰かに譲るか売ってあげたら、喜ばれるんじゃないでしょうかね。」

 

「うん。欲しい人がいたらあげるわよ。」

 

「それじゃあ、誰かに聞いてみましょうね。」(ブログで書けば良いかもしれないしな。)

 

そーっと取り出して見ていると、受け取って「久しぶりねぇ」と爪弾いておられる。何とも言えず心地よい音。チューニングが必要だけれども。

 

「あー……なんだかとってもステキに見えてきましたよ。僕もいつかはギターでも弾いてみたいと思っていたんです。友人でギターを始めたのが何人かいるもので。ちょっとしばらく貸していただけません?」

 

「それなら上げるわよ。知らない人に売るくらいなら、知っている人に使ってもらった方が嬉しいし。」

 

「いやいや、もしかしたら高価なものかもしれないですし、僕も根気がない男なので、すぐ飽きちゃうかもしれませんから、お借りするだけで。」

 

「まあいいから持っていらっしゃい。ちゃんと教わった方が良いけれど、ここ(境内)ならいくらでも弾けるしね。息子なんか、本堂でバイオリンを弾いていたことがあったわよ。」

 

と、いうわけで、続ける根気があるかどうか、はなはだ自信がないのではあるが、たいそう古そうだけれども素敵なマンドリンが、いま私が仮住まいしているお寺の、私の目の前にある。まずはチューニングをしてみて、手入れもしてみて、入門書を買ってこよう。

 

新しい、楽しい趣味になると、良いなぁ。続くかなぁ……