Masterpieces for Piano Left Hand | チーフ・エディターのブログ

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音楽配信の仕事上年間クラシック中心に毎年1,200枚ハイレゾの新譜を聴く中で気になったものを1日1枚。

Walter Klein,Ivan Klansky, Tatiana Nikolayeva etc (Praga Digitals) 96Khz/24bit

さまざまなな理由のために右手を使えなくなってしまった人のために作曲された作品集。いわゆる『左手のためのピアノ曲』というものは結構存在しており、音楽の教科書に出てくるような偉大な作曲家も作品を残している。多いのは事故、戦争で右手を失くしたか、或いは舘野泉さんのように病気により不自由になってしまったというケースであるが、このアルバムで最初に収められているブラームスの『シャコンヌ、左手の為に』はクララ・シューマンが右手を故障して使えない時に作ってあげた曲というものもある。

 

アルバムの副題はホルマンに捧ぐとなっている。チェコのピアニスト、オタカー・ホルマン(1894-1967)の場合は第一次世界大戦従軍時に弾が右の掌を貫通して不自由になってしまった。ホルマンはそれでピアノが弾けなくなったというわけではなく、元々ヴァイオリニストを目指しており右手で弓を持つことができなくなってしまいヴァイオリニストになることは諦めざるを得なかったのだが、音楽家の道は捨てきれずピアニストとしてやってみる事を選んだ。それはもちろん左手の。そして相当な努力をしてピアニストとして成功を収め当時最も尊敬されるピアニストとなった。同時代のチェコの大作曲家達、マルティーヌ、ヤナーチェックも彼のために作曲をしたという事(ここで収められている2曲)がその事実を物語っている。

 

アルバム最後の曲でタチアナ・ニコラーエワがロジェストベンスキーとの共演でシュトラウスの”Piano Concerto for left hand” を取り上げているのは珍しくちょっとした驚きだった。しかも、これ左手だけで弾いているとはとても思えない超絶技巧的で2度びっくり。華麗な演奏は感動すら覚える。

 

演奏会でも聴く機会がほとんどなく録音も多いとは言えないレアな曲という範疇に入ってしまうのだが、普通ではないだけにそれぞれ作曲の背景には演奏者と結びついた特有のストーリーがあって味わい深い曲達だと言える。

2023-72

 

 

 

 

 

 

 

via Classic Music Diary
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