Aya Okuyama (NoMadMusic) 48khz/24bit
アルゲリッチもポリーニもキーシンもピアニストならたいていレコーディングしているショパンの24の前奏曲。構成されているのが名曲揃いの小品のためピアニストによる解釈とか個性がわかりやすいので比べてみると楽しい曲だ。もっとも、最近は仕事のアルバムが多くてそういうじっくり楽しんで聴く時間もあまりないのだけれども。。
そんな皆さん弾く曲だが、フランスで活躍されている奥山さんはフォルテピアノでこの曲に挑戦している。しかも、1838年製のプレイエルということでちょうどショパンの時代のむかしピアノ。フォルテピアノでの24首録音はありそうでない。探せばあるのだろうが私は初めてだった。
ショパンはスペインのマジョルカ島でこの曲を完成させたがその冬は雨が多くて体調を崩しがちで余り楽しい滞在ではなかったのは有名な話として残っている。『雨だれ』など雨を題材にした曲も多い。奥山さんはフォルテピアノの特徴をとてもよく反映させて、その弱くて幾分こもった音色が曇って暗い冬のマジョルカ島の雰囲気を充分に想像させる。そして憂鬱そうなショパンがプレイエルのピアノをこういう風に弾いていたんだろうなと連想させる。アーティストの意図していたイメージを聴き手も感じ取ることができる。
年代物のフォルテピアノで24首やるには相当な研究、練習が必要だったに違いない。スタジオ録音なので弾き直しもできたのだろうが、曲間の空気感も自然でいい感じなのできっと通しで弾き切ったのだろう。そういう緊張感も伝わってくる。ショパンが考えていたような24首でひとつの作品としてうまくまとめてもいる。地味だけれども味のある良いアルバムだった。
2022-660