BYLUR; Eydis Evensen | チーフ・エディターのブログ

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音楽配信の仕事上年間クラシック中心に毎年1,200枚ハイレゾの新譜を聴く中で気になったものを1日1枚。

Eydis Evensen (Sony Classical)   FLAC 96KHz/24bit 

アイスランドのピアニスト・ポストクラシック作曲家 Eydis Evensonのメジャー・デビューアルバム。

 

彼女の出身はアイスランド北部の小さな田舎町で、長い冬にはすることもなく部屋でピアノに向き合う時間が多かったという。吹雪(Bylur)がくれば尚更だ。

 

コンサート・ピアニストを目指してウィーン国立音大に入学するも、徐々に自分を見失っていく。やりたい事がわからなくなり音楽からひとまず離れることを決意。

 

モデルとして7年間ニューヨークを拠点に生活をし、世界中を旅する経験もしたが、いつも心のどこかで故郷アイスランドのことを思っていたそうだ。ピアノはいつもそばにあった。

 

このアルバムの曲の多くは、人生の中で落ち込んでいた時、弱っていた時、都市の中で孤独を感じた時に作曲したものが多くあるのに気付く。

華やかで楽しそうな生活のように見えるのだが、感受性ががとりわけ強いのだろう、彼女にとっては感じるものも多種多様。その時々の心の動きをすくい上げてちょっと物悲しげな美しい音楽として紡ぎ出している。

 

ニューヨーク、ロンドンでの音楽生活を通しては、ミニマルミュージックのPhilip Glassから影響を受けたというが、曲調はアイスランドのダイナミックな自然のように表情豊かである。少し陰鬱な雰囲気を持つ進行の中で、ゆっくりと繰り返しうねるような旋律はまさに彼女の感情、というか人の感情そのものだ。

 

吹雪が続くと重苦しく、暗鬱になるが、その景色は見るもの全て美しいそうだ。最後のタイトル曲『Bylur』(吹雪) では、これまでの人生での経験、ネガティブな悟り、個人的な成長全てを表現した力強い作品にしたという。

 

心の琴線に触れるようなEvensenの音楽はこれからもっと多くの人に癒しと勇気を与えてゆくだろう。

                                                                2021-306

 

 

 

 

 

 

via Classic Music Diary
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