CINEMA
「Motion Picture」(1981)


コレはまだ聴き出してから日が浅いやつですねぇ。
1年前ぐらいにジャケ買いしたんですが、コレ大当たりも大当たり。
買うまでバンド名すら耳にしたこと無かったんですが、1曲目聴いてなかなかええやん、2曲目聴いて一生聴けるわコレ、と確信しましたね。


まず、このバンドについてだが、実際の活動期間は1980年から約1年程と非常に短いものではあるが、後にソロとしても活躍するボーカリストの松尾清憲、パワフル女性ドラマーの鈴木さえ子らが在籍した伝説的バンドで、作品自体はオリジナルアルバムである本作とシングル盤を3枚リリースして解散(2007年に再結成し、オリジナルアルバムを1枚リリースした)。

そして本作について、プロデュースはムーンライダーズの鈴木慶一が手掛け、音は個人的にはニューウェイヴのテイストを微かに含んだポップスの王道のような感じに思う。
王道とはいえ、曲によってはフラメンコのようなリズムを取り入れたりと挑戦的な姿勢も窺うことが出来る。

んでボクが本作に惚れ込んだ理由はまず松尾清憲の声。
後のソロ作品も聴いたりしたんですが、この頃の声質と歌唱法が個人的にはズバ抜けて素晴らしいと思う。
無駄にねっとりと絡み付くように歌うんですが、不思議と不快じゃなく、むしろ清涼感や気品すら感じる奇跡のボーカルです。

そして次に詞の世界観。
とにかくオシャレ中のオシャレ!
スカしてスカしてスカしまくったその世界観は、最早遠い異国の出来事のようで、一聴したその瞬間にまるで一昔前のイギリスかフランス辺りに(ぼんやりした例えですが)タイムトリップしてしまうよう。
だってさぁ「クリームソーダ・ベイビー」なんて歌っちゃいやがるんだもの。
ボクがこの世で一番好きな飲み物、そうそれはクリームソーダ(ホンマにどーでもええな)。
まぁ何にせよ物凄くドンピシャってことです。


実生活に於いてボクのような人間は冴えない毎日を過ごし、きらびやかな世界とは全く無縁のプレーンな世界(嫌な響きやなぁ)を生きる定めにあるわけだが、ひと度このアルバムを聴くと、即座に時空が裂け、この世からオシャレ空間へと蹴り入れられ、一時だけのタイムトリップを満喫することが出来る。
冴えない奴の現実逃避アイテムとして、これ以上のものはそうそう見つかるもんじゃありません。
「普段、音楽とかってどういうの聴くの?」
「う~~ん。何でも分け隔てなく聴きますよ~。あんまり嫌いなジャンルとか無いんですよぉ。邦楽も洋楽もR&Bとかソウル系からロック、ポップスまで何でも聴きますねぇ~」


………うっさいんじゃボケェーーーッッ!!!
んん死ねぇぇぇぇーーー!!!
腹立つわ~、ホンマに腹立つ。
「何でも聴く」って何やねん?
ええ感じのニュアンスで言いやがって。
要はノンポリなだけやんけ。
ボクはこういうこと言う奴は大っ嫌い!
特にボクぐらいの年齢かちょっと下ぐらいの若い奴に非常に多い。

これは音楽に限らず小説、漫画、映画、お笑い等の趣味の世界全般に於いて言えることなんですけど、多少偏り気味なぐらいでちょうどええやんって思うんです、特に若い人なんかは。
こういった趣味というのは、その人間の思想や人格形成にかなりの影響を及ぼすと思うんですよ。
だからね、ある程度偏った趣味を持ってる人間の方が、喋ってて面白いんですよ。

「何でも分け隔てなく聴くんですぅ~」なんてことをほざく輩は、大体がくっだらねぇ奴等ばっかり。
浅く広いばっかりで、対象に向けられる執着や情熱なんて微塵もない、ただのノンポリ。
そんな奴が面白いはずがない!
薄~い味付けをされたようなシャバい意見しか持ち合わせてないからね。
そりゃ稀に深く広い知識を持った博識な人間もいるでしょうが、若い人にはほぼ皆無でしょう。

それにボクは経験上、そういう人間をあまり信用出来ないんです。
やっぱり浅く広く趣味を楽しむ人間てのは、交遊関係に於いても似たようなところがありまして、誰に対しても八方美人に振る舞い、常に65点ぐらいを狙いに行く節がある。
そんな奴誰が信用出来るかい!
浅く広いってのは、つまり軽薄ってことなんです。
ズブズブに浸かることを恐れているから、常に片足を一歩引いて、いつでも逃げられるようにしとるんですよ。


何かね~、若年層にこういう奴が多いってのが悲しいですね。
若いうちは偏った考え方してても、誰からも文句言われることもないのに。
若くしてジジイババアみたいになっちゃってさ。

お~い君達~、気付いてないと思うけど、ボクにすっごく嫌われちゃってますよ~。
最近気付いて驚いたことがある。
ボクは面白くない奴にビビっている、ということだ。
何が悲しくてそんなもんにビビらなあかんねんと思われるかもしれないが、まぁ聞いて欲しい。


ボクの職場の後輩で、ボクと顔を合わせる度に「そのTシャツくださいよ~」と言ってくる女がいる。
ホントに漏れ無く毎回である。
そうなると、そのやり取り自体が今で言うところの"そういうノリ"なんじゃないかと勘違いしそうになるが、そうではない。
何故なら"ノリ"とは双方(場合によっては多人数にもなるが)の協力の元に成り立つお約束的やり取りであり、そこには少なからず信頼や大袈裟に言えば絆というものが存在する。
しかし、ボクはこの女に対して信頼など微塵も無いし、彼女とて同じ思いであろう。
そして何よりもこの"ノリ"というものは絶対に面白くあらねばならないという不文律があり、それは何があろうとも覆してはいけないルールである。
そりゃそうでしょ。
じゃなきゃそんなことする意味が無いもの。
ただのコミュニケーションならば他にも方法は色々あるからね。

"絶対に面白くあらねばならない"と書いたが、これは当人達が面白がって演じているというのは絶対条件であり、何なら周りで見ているギャラリー達をも「おっ、何かオモロそうなことしとるやないけ」と巻き込んでしまうぐらいの気概で臨まなければいけない。
それが本来の"ノリ"というものではないのか?
そういう意味では今回の「そのTシャツくださいよ~」は1ミリの面白さもクソもないやり取りであるからして、"ノリ"の範疇には入らない、と。


こんなに長いことかけて"ノリ"ではないという証明をしたが、驚くことに本題はここからである。
実は問題となるのは、このバカ女のスッカスカな脳ミソの中枢から指令がくだり、やがてだらしない口を経て発せられた濃度0%のザーメンの如き言葉ではなく、そんな会話に脅えているボクの方である。

ボクはこういった会話が、"苦手"というレベルを遥かに超えて、"怖い"とすら感じている。
普段から他人に対してあまり躊躇せずに物事を理屈っぽく述べたりしてしまう性分だが、こういった会話の時ばかりはアワワワワってウロきちゃって、な~んにも気の利いたような返事が出来ない薄ノロみたいになっちゃうのだ。


先日もまた例の如く「そのTシャツくださいよ~」と、そのバカ女がのたまい、ボクはウロきちゃってエグい苦笑いみたいなものを浮かべていたら、そこをたまたま通りがかった後輩のシュッとしたフレッシュボーイが「そんなめんどくさそうな顔したらダメっすよ~」とボクに助け船を出してくれた。
嗚呼、自分が情けないわ。
でもサンキュー、フレッシュボーイ。
アイツ絶対モテるやろな~。


ま、それはいいとして最近こういったことが何回か続きまして、自分なりに色々と考えてみたんです。
で、結論なんですけど、やっぱりねぇ~ボクは平均を下回る会話は出来ない!
この場合の平均とは、世間話とかそういった類いのホンットにフツーの会話ね。
このフツーの会話まで否定してしまうと、もうこれは日常生活を送ること自体が不可能。
でもそれを下回る会話、即ちサブイ会話、もうねぇ~コレだけは無理!
勘弁してくれ。
巻き込まれたくないねん、何がなんでも。


ボクはあのフレッシュボーイのように会話に対して全方位型の人間じゃないから、サブイやり取りをうまく回避する術を知らない。
だからもうサブイ言葉を投げ掛けてくる人間(=サブイ人間)が怖くて仕方ない。
サブイ会話をもうまく乗り切れることがコミュニケーションだとするのならば、ボクはそんなものこっちから拒絶してやる。
だってコワイもん、ありとあらゆる意味でなっ!!