2014.10 NO.40 エイゴ と エゴ
4年ほど前楽天の三木谷浩史社長が英語を社内の公用語にすると発表した。
その折、世界のHONDAの伊東社長が「ばかな話だ」と一蹴したとネットで見た。同感だ。
ひと昔日本長期信用銀行から新生銀行に変わるとき外資が入ってきて会議は英語で行うと噂で聞いた。事実はともかくとして、能力があろうとなかろうと旧幹部を辞めさせるにはいい方法だと思った。クビと言い渡さなくても英語を聞き取りできず話ができない幹部は自ら辞表を提出するしかない。
日本人としてのアイデンティティの最たるものが日本語を話すこと。日本に居ながら日本人社長が日本人社員に英語を強いるのはどうかしてると思う。オーナー会社の勝手だとしても。
私は大学生の頃三木谷社長のお父さんに教わった。昭和46年か47年かに故三木谷良一先生が神戸大学の助教授の時アメリカ経済論を受講した。お母さんも帰国子女らしいので、三木谷社長は子供の頃からアメリカナイズされているのだろうか。
ドイツの鉄血宰相ビスマルクが言ったとされる「愚者は経験に学び、 賢者は歴史に学ぶ」(経験は経済と読み替えたい)を聡明で教養のある三木谷社長が知らないハズはない。
第二次世界大戦敗戦当時GHQから英語を公用語にする要求に対し重光葵外相が自らの命を賭してはねつけたことは周知の事実。それならばと今度は日本語のローマ字化を進める動きも先人達はなしくずしにしたと佐藤優氏の『人間の叡智』(文春新書)に出てくる。
先人たちによって守られてきた日本語をなぜ粗末にするのか。なぜ文化人は声をあげないのかと思っていたら、三木谷社長は薬のネット販売規制問題でエゴ丸出しの単なる政商に過ぎない、馬脚を現したと誌面に書かれた。
なーんだ、日本語文化まで壊されることはない。これで一安心と思っていたら、文科省がバカなことを言いだした。2020年東京オリンピックを見据え小学校での英語教育(現行5年生から)を前倒しして3年生から始め、英語教育を強化していくと。東京オリンピック時の外人観光客向けホスト、ホステスを養成するつもりなのか?
2016年から正式種目に復帰するゴルフには、東京オリンピックに向け、全国の小学生、中学生全員にゴルフを始めようとは呼び掛けはしないだろう。英語も同じだ。すべての子供が意思疎通のツールにすぎないものをなぜやらなければいけないのか。日常会話ならスマホを使って簡単に意思疎通できる時代がすぐそこまで来ている。週刊新潮も9/4号で有識者に意見を求め小学3年生からの英語教育を批判した。
どう見ても欧米人としか見れないが英語が話せないハーフタレント兼歌手のウエンツ瑛士さんは、自身の体験から英語の幼児教育は無意味と声を大にしてTVで力説していた。さらに、北大の山口二郎教授は大学においてさえこう述べている。東京新聞の数年前の夏の「本音のコラム」欄で『若者の現在』と題して、「・・大学改革の議論では、英語が話せるグローバルな人材の育成が叫ばれているが、なんとも的外れな話である。欧米でも、大学の基礎教育は歴史と哲学が中心である。安直なハウツーを身に着けるのではなく、答えの出ない問題を必死で考え続ける知的基礎体力を持った人間を育てるのが大学の仕事である。・・」
英語をよけいに教える時間があるのなら、人の命の大切さをもっと教えて欲しいと私は思う。子が親に、親が子に、簡単に手を掛ける。遠慮がない分エスカレートしがちであるが、諍いがあっても、つらい事情があるにせよ、命だけは奪うことがないよう小さい頃から強く戒めて欲しい。
いじめによる自殺も同様だ。人を助けるのは勇気が要り容易ではないが、いじめるのは卑怯でた易い。いじめがこの世の中から消えてなくなるとは思わない。いじめられたら、闘わなくてよい。逃げても転校してもかまわない。あのカッコいいキムタクだっていじめに遭って転校したんだよ。世の中のこと、人生のことも分からないくせに勝手に死ぬな! 未成年なのだから親の同意を得てから死ねと言ってもらいたい。そう言って解決するなら苦労はしないが、いじめを減らす取り組みもよいが、それ以上にいじめられる側の視点での取り組みを強化してもらいたい。
もう一つ学校で教えてもらいたいことがある。人としての生き方。人の道というべきか。今トルコ、ブータンなど親日国が少なくないが、そこには一人のあるいは数人の日本人の善行が深く関わっている。台湾では、戦前世界規模の灌漑用ダムを造った八田與一という日本人土木技師の墓で、毎年命日の5月8日(1942年殉職)に追悼式典が催される。70年以上経った今日でも台湾の人々に敬愛され続け、台湾の教科書にも登場する。しかし、私は台湾に親戚が出来ていなかったら『台湾を愛した日本人 土木技師八田与一の生涯』(古川勝三氏著)を読むことはなかったかもしれない。
私が子供の頃子供心に自虐史観の教育を受けたとは感じなかったが、貧しさから立身出世した豊臣秀吉や松下幸之助社長のような成功者の話しか学校で聞かされていなかったように思う。
台湾出身の評論家黄文雄氏に『日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか』を発刊してもらっているが、この前のワールドカップのサッカーの試合後のごみ拾いもそうだが、世界から認められた日本人の特性のルーツを日本の教師が教科書で子供達に教えてもらいたい。
過去の行為を正当化するためにではなく、反省すべきことと同じように過去の善行や日本人の特性も知らしめ、子供たちが誇りある日本人としていかに生きるべきかを考えてもらうために。