ことばの物語
〖風馬牛〗
ふうばぎゅう
「風馬牛」というと全く無関係なこと、無関心なこ
との譬であります。
この場合の「風」は「発情すること」であります。
[故事]
「春秋左伝」に「風馬牛相及ばす」とあり、これは
馬や牛の雌雄が互いに求め合っても、会うことが
できないほど遠く隔たっているということであります。
<中国の春秋時代、北方の斉国が南方の楚国を
攻め込もうとします。
この時、楚の王は斉国に使者を送り「貴方の国
は北海にあり、私は南海にいます。その関係は
ー風(発情)する馬牛も相及ばざるなりーといいま
す。どうして、我が国に攻め来ようとなさるのです
か」とと伝えました。>
しかし、説得の甲斐なく斉は楚に戦いを仕掛けまし
た。この成句の解釈には別説があります。
〇雌雄が発情しても、馬と牛は互いに求め合わな
いということであります。
「牛」の字の成り立ちは「角を強調したウシの象形」。
「馬」の字の成り立ちは「ウマの全形を描てた図形」。
[牛に関わるお話し]
<天満宮の牛の石像>
天満宮には牛の石像があります。何故ででしょうか?
天満宮には、讒言により左遷された菅原道真の怨霊
を鎮めるために「天萬(てんにみてる)大自在天神」とし
て祀られています。
自在天は仏教に取り入れられたインドの破壊神シ
ヴァであり、これが天神(雷神)と習合します。
(神仏習合)
牛の石像が天満宮ある理由には主に三説ありま
す。
〇道真が左遷され福岡の大宰府に向かう途中暗殺
されそうになります。するとどこからともなく一頭の
牛が 現れて、暗殺者たちを蹴散らし命を救ったと。
〇道真が「人に引かせず牛の行くところにとどめよ」と
遺言します。
遺体を乗せて牛にひかせます。そうすと、ある所で突
然にその牛が座り込んでしまいます。そしてそこに
道真の遺体を埋葬したと。
〇道真が丑年生まれであったところから。
※仏教の「自在天」は、インドの破壊の神シヴァ神化身とされ、
この天神の乗り物が牛であります。
この牛の頭を撫でると賢くなると。
<牛にひかれて善光寺参り>
偶然、あるいは他人に誘われてたまたまある場所に
いくこと。
<昔、長野の善光寺付近に住みながらも、信仰心の
薄い老婆がいました。
ある時、乾かしていた布を臨家の牛が角に引っ掛け
逃げていきました。それを老婆は必至で追いかけて
行くと善光寺に導かれ、信仰心を抱くようになったと
言います。その後、近くの観音堂を詣でると、その観
音様に牛に持ち去られた布がかかっていました。そ
れをみて牛が観音様の化身であったことを知り、さ
ら に善光寺信仰を深めたといいます。>
善光寺の阿弥陀三尊(中尊ー阿弥陀如来・脇侍ー観音菩
薩、勢至菩薩)は日本最古の仏像とされる伝承がありま
す。
[馬に関するお話し]
騏驥(きき)も老いては駑馬に劣る
騏驥は騏驎(きりん)とも言います。
※想像上の動物のキリンは麒麟とかきます。
優れた人物でも年老いると能力が衰え、普通の人に
も負けてしまうことのたとえ。
〖騏驥〗は、一日千里を走るという駿馬。
騏は「馬+其(四角い)」で、碁盤目のような
青黒い模様のある馬(青黒い馬)で、よく走る
馬。
驥は「馬+冀(北方の異民族)」で、北方に産
する良馬。
〖駑馬〗は足ののろい馬。
駑は「奴(粘り強くのろい奴隷)」に「馬」。
※「天高く馬肥ゆる秋」というのは、秋になると北方の
騎馬民族(匈奴)の午が肥えたくましくなって、秋の
収穫物を略奪しにやってくるから、警戒しなけれは
ならないということでありました。
古く中国では乗馬する技術はなく、馬は戦車をひ
くのに用いられていました。
騏驥の跼躅(きょくちょく)するは
駑馬の安歩に如かず
どんなに優れた人間でも怠けていれば、平凡だが
努力し続ける人間にはかなわないということ。
跼躅はぐずぐずして進まないこと。
安歩は静かにゆっくりと歩くこと。
〖天馬〗
ギリシア・ローマ神話の空飛ぶ翼を持った馬の
ペガサスの漢訳であります。
ペガサスは海神ポセイドンとメドゥーサの子で、
子を宿したメドゥーサがペルセウスに斬首され
た首から滴る血から生まれました。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経文庫