ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖胡人〗
こじん
「胡=えびす」は古代中国からみた北方、西方民族
蔑称ですね。(チャイナナンバーワンの考えですね。)
和訓の「えびす」は「えみし(夷・戎とも表記)」からで
これは古語で「異郷の人」の意味であります。
「胡」は「あごひげが長い人」を表しています。
中国の戦国時代の内モンゴルの塞外民族(北狄-
ほくてき)をさします。
秦・漢時代は特に匈奴をさします。
唐時代に入ると西方のペルシャ民族(ソングド人)
を西胡といいました。
※ちなみに、英語で中国をChina(チャイナ)といいますが、
これはと最初の統一王朝「秦」によるものであります。
[胡人から伝来したもの]
胡瓜(コカ・きゅうり)
和訓の「きゅうり」は「黄瓜-きうり」からで、古く
は熟して黄色くなったものを食していました。
胡桃(コトウ・くるみ)
和訓の「くるみ」の語源はたくさんありました。
・中国の呉国から伝わったところから。「呉実
くれみ」から。(参:呉竹)
・堅い殻で包まれているところから、「包実-く
るみ」。
・殻が黒いところから。「黒実-くろみ」
・殻が堅いころから。「凝実ーこるみ」
胡椒(コショウ)・胡麻(ごま)・胡粉(ごふん)
胡座(コザ・あぐら)
和訓の「あぐら」は「足(あ)座(くら)」で、「座(くら)」
は「高御座」というように、高く設けられた場所
で貴族の座る高い座席や腰掛を「あぐら」と呼
んでいました。
これが「足を組む」と混同されて、座り方の意味
となりました。
胡蝶(こちょう)ー蝶の古称。
胡乱(ウロン)
胡乱臭いというと「疑わしく怪しげである」「不誠実で
ある」という意味ですが、この言葉は鎌倉・室町時代
に禅宗経由で日本に入って来ました。
「胡(う)乱(ろん)」は唐音であります。
意味の由来は
<昔、胡(匈奴)が中国に攻め入った時、住民が慌て
ふためき乱れたと。この乱れたさまからだと。>
※音読みには主に呉音・漢音・唐音(宋)があります。
これを日本語の音にしたものが、日本語の音読
みであります。
呉音
5~6世紀に伝来したもので、仏教用語が中心
[例]老若男女(ろうにゃくなんにょ)・変化(へんげ)
建立(こんりゅう)・祇園(ぎおん)
漢音
7~9世紀に伝来。一番多いところから漢字と
称されるようになりました。
唐(宋)音
10世紀以降に伝来したもので最も少ない読み。
椅子(いす)・箪笥(たんす)・布団(ふとん)・西瓜
(すいか)
≪仏教語≫
〖羅刹〗
らせつ
羅刹はサンスクリット語のラークシャサの漢音訳
であり「速疾鬼」という意味であります。
仏教に取り入れられて十二天の一つ羅刹天にな
り、仏法を守護する役を担います。
日常語で「悪鬼羅刹」というと、人に害を及ぼす
化け物という意味で、「悪鬼羅刹のように」など
として用いられます。
羅刹は人を食うという悪鬼でしたが、夜叉と同様
に毘沙門天の眷属とされます。
男の羅刹は醜く、女性はとても美しいそうですが
インドの『リグ・ヴェーダ』では、流産、産褥などで
幼児に死をもたらすものとされていました。
〖夜叉〗
やしゃ
夜叉はサンスクリット語の「ヤクシャ」の漢音訳
で、空中を飛行して、生き血をすするような害を
与える凶暴な鬼神でしたが、仏教に取り入れら
れ、仏教を守護する天竜八部衆の一つとなっ
ています。
古くは善神で山や樹木の精であり、女神の
「ヤクシー」は樹下に立つ美人像として表現され
ます。生産力を象徴する地母神でもありました。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経の文庫