ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖騏驥過隙〗
ききかげき
「騏驥」は、一日に千里を走るという駿馬であり、
「過隙」は、間隙を過ぎるということで、時の過ぎ
去ることが非常に速いことにたとえられます。
この言葉は『荘子ー盗跖篇』に出てくる創話で
あります。
「盗跖」は、中国の春秋時代の盗賊で、数千人を
従える大親分で、日ごと人々を殺し財産を奪い、
時には人を切り刻んで食したと言われます。
<ある時、孔子が盗跖を改心させようとやって
来ます。
盗跖は孔子の説得を聞いて答えます。
先生様に人情というものを教えて差し上げま
しょう。
人は美しい物を見たい、美しい音を聞きたい、
うまいものを食べたいというように、欲望を満た
したいものである。それが人情というものだ。
長生きしてもせいぜい百歳。普通は六十歳が
関の山。それだって、個々がいたいあそこが痛
い、あれが気がかりだとあるものんだ。大口開
けて笑っていられるのは月に四、五日くらいだ。
人生の短いことは騏驥が扉の隙間を駆け抜
け るのと変わりはないと。
これに反論できず、孔子は逃げだした。
そして、「病无(な)くして自ら灸する」(余計なこと
をして痛い目に合う)と言って後悔したと。>
これは荘子の「無為自然」の寓話で、万物の根本
(無為)に立ち返って、自由に生きることを示唆した
ものですね。
「神がいなければすべてが許される」とある哲学者
が言っていますが、いくら自由であっても盗跖のよ
うに非常なことはしたくありませんね。
神がいるかどうかはわかりませんが、これからして
私たちは神の子であるようですね。
≪仏教語≫
〖弁才天〗
べんざいてん
「弁財天」とも表記されますね。
帝釈天、梵天、毘沙門天など「天」が付く仏教の
神は、出身かインドの神であります。
「天」はサンスクリット語の「デーヴァ」からで、漢音
訳が「提婆=だいば」であります。意味は「神」であ
ります。
インドの神々は、自然の威力、働きを神格化した
ものが多くあります。
※ちなみに、ギリシア神話の「デウス(主神)」と
同源だそうです。(インド・ヨーロッパ語族)
「弁才天」はインドの「サラスヴティー」という川の
化身でありました。この流れる川から、流れるもの
全ての女神となり、後に言葉の神と同一視されサ
ンスクリット語とデーヴァナーガリー文字を創
造したと言われます。
仏教に取り入れられ「弁才天」という名を与えられ、
七福神の一つとされ、福徳と財宝の神として信仰
されています。(弁天様)
ヒンドゥー教でサラサヴァティーは創造神ブラフマ
ーの妻であり娘とされています。
ブラフマーは自らの身体からサラサスヴァテーを
生み出しますが、そのあまりの美しさに自分の妻
とします。
(近親相姦、何ともおぞましいものですが、どこの
国の神話にもある話しでありますね。)
サラスヴァティーの姿は、額に三日月の印があり
白衣をまとい四本の手を持ち、二本の腕には数珠
とヴェーダ聖典を持ち、もう一組の腕にはヴィーナ
(琵琶)を持って、白い蓮華の上に座っています。
孔雀は彼女の動物であります。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ
ブッタいのちの言葉/宮下真著・道元禅の言葉/境野勝悟・
一休禅の言葉/境野勝悟ー知的生きかた文庫
心が晴れる禅の言葉/赤根祥道た著・空海感動の人生学/
大栗道榮・親鸞感動の人生学/山崎龍明—中経の文庫