ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖龍Ⅱ〗
りゅう
調べてみると、和訓の「たつ」の語源は「高飛ぶ=た
かとぶ」、「発=はつ」とあり、この偉大な伝説上の獣
にしては意外と単純な語源でしたね。
「竜」は「龍」の省略体だそうです。
漢字圏では四霊(麒麟・鳳凰・龍・神亀)の一つとさ
れていますが、西欧では邪悪な獣とされています。
「龍」の字は、その霊獣のすがたをう描いたもので
あり、全体の姿は大蛇に似て、四足、角、長いひげが
ある姿であります。
龍の顔はよく見るとワニににていますね。それもその
はずで、鼉(だ)という揚子江ワニ(希少種)が原型だ
そうです。
龍の霊力は雲を起こし雨を降らし、春分には天に昇り
秋分にには淵にかくれるとされます。この天に昇る時
に起きるのが竜巻だそうです。
中国では古来から皇帝の印(語本爪めの龍)、権威、
瑞祥の象徴となっています。
日本にはすでに弥生時代に中国から伝わっていま
すが、その内容は正確ではなかったようで、変容し
て伝わっていったようです。
その代表が、水を司る水神とされるものであり、竜神
棲むという沼や淵で、雨乞いの儀式が行われてきま
した。
漁村では海神とされ、豊漁を祈願する竜神祭などが
あります。
仏教では仏法の守護神となっています。
〖竜退治〗
<インド神話> インドラの竜退治
インドラはバラモン教、ヒンドゥー教の雷霆、天候・
軍神であります。サンスクリット語で「神々の帝王」
という意味だそうです。
ヴリトラという蛇形の怪物がその巨大な身体で水
をせき止めました。それにより、旱魃が起り人々は
苦しみました。そこでインドラは工匠が作った金剛杵
(ヴァジュラ)でヴリトラを退治しました。すると水が解
放され海へと流れ出ましたと。
<ギリシア神話> ペルセウスの竜退治
ペルセウスはアルゴス王の娘ダナエと黄金の雨に
なって彼女の部屋へ忍び込んだゼウスとの間に生
まれた子であります。意味は「破壊する・征服する」
という意味だそうです。
ペルセウスはメドゥーサを退治した帰路で、海の怪
獣ケートスに生贄として捧げられようとしているエチ
オピアの王女アンドロメダを見つけ、その王である
父親にアンドロメダとの結婚を条件に、ケートスを
退治しました。
※「ケートス」は本来クジラもしくはイルカに似た姿で猪や
犬、あるいはライオン、ワニに似た怪獣であったようで
す。これが後にドラゴンと混同されて絵画に多くドラゴン
の姿で描かれるようになりました。
<キリスト教> 聖ゲオルギウスの竜退治
聖ゲオルギウスはローマ帝国後期のカッパドキア
の騎士であります。
リビアを通りかかった時、町の人たちが竜(悪魔の
化身)に悩まされていました。猛毒を吐き人を殺し
生贄を要求していました。ゲオルギウスが通りか
かったその日は、王女にその番が回ってきた日で
ありました。そこでゲオルギゥスはリビア国のキリ
スト教改宗を条件に、竜を退治しました。
<北欧神話> ジークフリートの竜退治
古ノルド語でシグルズと言い「勝利を守る者」という
意味だそうです。
ジークフリートは母親の再婚相手のもとで育ちます。
養父は彼の兄で竜になって守る黄金を奪うべくジー
クフリートに竜退治を命じます。ジークフリートは竜
退治に成功しますが、このとき彼は龍の血を浴びて
不死の身となりますが、ただ一か所、両肩の間に付
着していた木の葉の為に、そこが唯一の弱点となり、
命取りとなりました。
<仏教語>
〖大衆〗
たいしゅう・だいしゅ
一般大衆といいますが、この「大衆」は「だいしゅ」と
読み、もとは仏教語でありました。
仏教に帰依した多くの僧の集まり、または僧その
ものことを言ったものであります。
天台宗で役職に就かない修行僧をいい、高僧に支
配されるところから、現在の「大衆=たいしゅう」を指
すようになりました。
後に僧兵のことを主として指すようになります。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武
部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
中国名言集(一日一言) 井波律子著/岩波現代文庫
世界の神様解剖図鑑 平藤喜久子著/(株)エクスナレッジ