ことばの物語
故事のある言葉
仏教からの言葉
〖悪事〗あくじ
「悪事」というと①悪い行い ②悪い出来事
という意味ですが「悪事千里を走る」というと①の意味で、
悪い行いや悪い評判は、すぐ世間に知れ渡るという意
味ですね。
この言葉は日本のことわざと書いている本がありました
が、これは「好事は門を出です、悪事は千里を行く」と
いう、中国の成句であります。
今日、日本の文化は中国のものだ、韓国のものだと、
当国の人たちは言いますが、日本は東洋の最東端に
位置し、ここに東洋の文化のほとんどがとどまったと
いわれます。そして、日本で定着し、変化進化したもの
でしょうね。むしろ、中国の聖賢の教えが、日本の庶民
なりの理解で受け継がれたと言った方が良いのでない
でしょうか。なぜ、偉大な聖賢を輩出した国が、あのよう
に傲慢になったのでしょうか。(聖賢は、傲慢、驕りを戒
めたはずなのですが。)
中国の文献が大好きな私には、とても寂しく思われま
す。(素人の私では漢文も中国語もわかりませんが。)
「悪事千里を行く」で次のような話があります。
<後晋王朝の時代(10世紀)、宰相となった和凝は
若いころ、艶っぽい小唄を作る命じんでした。宰相にな
ってからは威厳に関わるということで、すべて焼き捨て
てしまいましたが、彼の小唄の評判は、異民族にまで
しられていたとのこと。これこそ「悪は千里を行く」では
ないかと、孫光憲はのべています。>
(故事成語を知る辞典/円満字二郎編・小学館)
これ、悪事というより道楽ですよね。もっとも、聖賢を
目指すには、これも悪事なんでしょうね。
<仏教語>
〖痘痕〗あばた
「あばたもえくぼ=痘痕も靨」なんていいますね。
好きになった相手のことは、どんな短所でも長所に
見えるという事でありますね。
「痘痕=とうこん」は天然痘が治った後の傷痕で、
「あばた」の語源はサンスクリット語の「アルブタ=
かさぶた」の漢音訳「頞浮阿(あぶだ)」からで、奈良
時代に仏教者の間で天然痘の痕をを呼ぶように
なったようです。
これは、八焦熱地獄があるように八寒地獄もあっ
て、その中の一つに頞浮阿地獄というものがあり
ます。
そこに落ちた者は、厳寒のため体に水疱ができると
いわれます。
「あばたもえくぼ」は心理学的に「ハロー効果」と言
われるもので、「ハロー」は神仏の後光のことです
ね。(=後光効果)
この反対が「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」でありま
す。心理学的にはネガティブ・ハロー効果で「デビル
効果」「(ホーン(悪魔の角の意)効果」といいます。
ちなみに、「ピグマリオン効果」というと、心から期
待をかけると、相手がその期待に応えるようになる
という心理学の言葉であります。(スポーツなどで、褒
めて育てるということですね。)
※ピグマリオンはギリシア神話に出てくるキプロス王のことで、
彫刻の名手でもありました。
自分で作った象牙の乙女に恋をします。それを知ったアフロデ
ィティ(ヴィーナス)がこれに命を与え、妻にさせたといいます。
<漢字の勉強>
靨ーえくぼ・ヨウ
「厭=おしつぶす」に「面」で、頬の一部が押しつぶさ
れたようになっている、えくぼの意味。
和訓の「えくぼ」は「笑(え)+窪(くぼ)」からであります。
痘ーもがさ・トウ
「疒=やまい」に「逗=じっととどまる・跡を残す」。
(→逗留)
痕ーあと・コン
「疒=やまい」に「艮=一定の所に根を張る」
痘痕(トウコン・あばた)は天然痘にかかった跡。
痘瘡(トウソウ・古語がもがさ)はい天然痘のこと。
天然痘は現在絶滅したとされています。ウィルスを
病原体とした感染症でありました。全身に農疱が生
じ死亡率20~50%あったと。
疱瘡神というと、天然痘を神格化したもので、鎮魂の
神社が信仰されていました。
犬や猿、赤色を苦手とされ、「赤べこ」(福島)や「さる
ぼぼ」(岐阜)の玩具が赤いのは、この天然痘除けの
意味がありました。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
古典語典「東洋」(渡辺紳一郎著/講談社)
中国名言物語(奥野信太郎編/河出書房)
