ことばの物語
≪いのしし・しかー猪・鹿≫
猪鹿蝶というと、日本のカード遊び「花札」の「役」の
一つで、これが揃うと高得点となりますね。
何故「猪・鹿・蝶」か?とふと思い、調べてみました。
〖猪〗は子だくさんで「子孫繁栄」。
〖鹿〗は漢音で「ロク」で「俸禄の禄」に通じ「財運「」。
〖蝶〗は「長」に通じ「長寿」。また魂の象徴で、魂は
蝶の姿になるという言い伝えがあり、復活の象
徴でもあります。
全てが縁起物でありますね。
〖猪〗ーいのしし・チョ
元の字は「豬」。
字の成り立ちは「豕=いのこ」に「者=多くのものが集ま
る」で、充実して引き締まった肉を持つ獣で、いのしし。
家畜化されたものが「豚」であります。
「豕=いのこ」は「豕の子」で、「ずっしりと重い」という
印象があります。
また、吻の細く突き出した印象は、人相学的には欲深
い人だとされています。
猪の子供は「瓜坊」という愛称がありますね。
和訓の「イノシシ」は「ヰ(い)の肉(シシ)」または「ヰ(イ)
の獣(シシ)」からだそうです。→鹿の肉(カノシシ)
古来、日本には荒魂(あらたま:神々の荒々しい側面)と
和魂(にぎたま:神の優しい平和的側面)がありました。
猪はその荒魂の側面の神(山神)の神使とされます。
『古事記』には、大国主命を焼き殺したのは、真っ赤に
焼けた石に化した山の神の使いの赤猪であったと。
また、ヤマトタケルは山の神の化身である巨大な
白猪に氷雨を浴びせられ死んでしまいます。
【民間信仰】
・猪は多産と豊作の象徴とされ、「亥の子祭」と言われ
るものがあり、旧暦10月の亥の日、亥の刻(午後10時)
に亥の子餅を食べ、子孫繁栄を祈願する風習がある
そうです。
・四足獣が禁止されていた時代、「猪」を「山鯨」と
呼んで、食べていたようです。
民間療法にも用いられ、肉は強壮作用があり、胃を
干したものは胃痛、腹痛、心臓病の煎じ薬として用い
たようです。
脂肉は中耳炎の痛み止めの塗り薬とされます。
(参考:日本異類図典/朝里樹 監修)
〖仏教〗では摩利支天の乗り物とされています。
その訳は、摩利支天の迅速な移動と猪の迅速さから
結びついたものからのようですが、また鎌倉時代には
猪突猛進の性質が合致し、摩利支天は武士の守り
本尊とされています。
摩利支天はもとインドの神で、陽炎を神格化したもの
で、除災の神でありました。
愛宕権現の神使ともされています。
〖鹿〗ーしか・ロク
字の成り立ちは「鹿の全体の姿を描いたもの」。
多くの動物の象形は縦に書かれていて、それを横に
して漢字として表されますが、鹿の象形は初めから
横に描かれていたもので、めずらしいようです。
また、鹿は列をなして群がるので、「長く連なる」とい
う意味を派生しています。
麓→連なる山のふもと。
漉→水が連なって垂れる、こす。
鹿の別称に角仙・仙獣・崋山道士と言うのがありま
す。釈迦が説法した「鹿野苑=ろくやおん」は多く鹿が
いたそうですが、別称「仙人住処」ともいわれ、仙人と
結びついていきます。(仙人の象徴)
また、道教の寿老人は七福神の一柱でありますが、
鹿を連れている姿で多く描かれ、仙人の象徴ともされ
長寿の聖獣とされています。
奈良にある春日大社は中臣氏・藤原氏の氏神様を祭
る神社で、祭神は武甕槌命(タケミカヅチノミコト)で、この
神様か白鹿に乗って降り立ったところとされます。
これから鹿が神使とされています。
茨城にある鹿島神宮も祭神を武甕槌命ととし、歴代
武家政権の武神として尊崇されてきました。
名の由来は神使の鹿からだそうですが?
現代では武道の神様であります。
ちなみに、他人を無視することを「しかとする」といい
ますが、これは花札の鹿の絵札の鹿が横を向いて
居るところからですが、言葉のもとは賭博師の隠語
「鹿十(とかと)」からだそうです。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
植物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
