ことばの物語
〖猿ー2〗さる・エン
「猿」は太陽信仰の「猿神」であり、霊獣とされます。
謂われは、猿が日の出を迎えると騒ぐ習性がある
ところからのようです。
「日本書紀」では猿は伊勢大神(福島の神社?)の
使いとされ、奈良時代には伊勢神宮の祭神 天照
大神の使いとされました。
また、「日吉大神」の使いともされています。ここの
祭神は比叡山の山の神の大山咋神(おおやまくいのかみ)
とされ、山の神の使いともされます。
この猿の名を「マサル」というそうで、語源は「勝る」
「魔去る」からだそうです。
※「日吉」の名からわかるように、こちらも太陽信仰 であり
ます。ちなみに、豊臣秀吉の幼名は「日吉丸」 といい、
母親が日吉大神に祈願して生まれた子であるところから
名付けました。
秀吉を織田信長は「ハゲネズミ」とあだ名しましたが、
「サル」とするのは物語の中の話しで、多分この話が影響
しているようですね。
さらに、浅間信仰でも猿は神の使いとされ、また牛
馬無病息災を願う厩の守護神として「厩猿」の信仰
が生まれたりしています。
俗信では、猿は邪悪なものとされています。
昨今、この邪悪な方の猿が出没していますね。
[早太郎伝承]
「猿神退治」のお話です。
<ある旅人がその村を訪ねた時、「白羽の矢が立った
ので、その家は娘を土地神様に生贄として捧げなけ
ればならない」と話しているのを耳にします。
不審に思い様子をうかがっていると、化け物が現れ
て娘を連れていきますか、その時「早太郎に聞かせ
るな」という声が聞こえてきました。
早太郎とは誰かなのかと旅人が探し回り、それは
光明寺の犬であることを突き止めます。そして、
早太郎を借りて来て放つと、翌朝、大猿が死んでい
るのが発見されました。>
・山で猿の話をすると不吉なことが起る。
・漁師は海で「猿」を口にすると魚群が去る。
和訓の猿の語源は「勝る」。獣の中で知恵が勝れて
いるというところから。
別説ではアイヌ語で、尾を持つものを「サルウン」と
いい、これが「サロ」となり音転して「サル」となる。
〖インド系の猿ー仏教〗
古代インドでは、象や牛と共に聖獣とされていました。
その大スターが叙事詩『ラーマヤナ』のハヌマーン
であります。このハルマーンは孫悟空のモデルとさ
れるとの解釈もあります。
これが日本の山岳信仰と結びつき、中世以降、
山王権現(前記の日吉神社の祭神、比叡山の地主神)
の使いとなります。
※「権現=ごんげん」の「権」は「仮の」という意味で、
仏教で菩薩の雁の姿とされます。
『日本霊異記』には、インドの大王が死んで白い猿に
生まれ変わり「近江国の野洲の社神になった」という
話があるそうです。
「猿」の本字は「猨=えん」で、「犭+爰(ひっぱる)」から
なり、木を引っ張って木登りをするサルの意味。この
「エン」と同音の「袁」と入れ替わったものが「猿」でそ
うです。
ちなみに「猨」は「テナガザル」で「猴」は「アカゲザ
ル」であります。
〖サルの妖怪〗
猩(しょう)
現在ではオランウータンに当てられますが、本来は
想像上の獣で、人間のような顔をして、人間の言葉
を解するといいます。
狒々(ひひ)
現在ではマントヒヒに当てられますが、本来はサルの
ような姿をした大きな妖怪で、老いたサルがなるとい
われます。
「狒々は人に似て、ざんばら髪で、走るのが速く人を食
う」とされ、人を見ると大笑いするそうで、その笑い声か
ら「ヒヒ」と言われるそうです。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社)
字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版)
動物の漢字語源辞典(加納喜光著/東京堂出版)
