ことばの物語
≪すみー墨≫
〖墨守〗
「墨守」とは、古い習慣や自説を固く守り続けることで、
「融通が利かないこと」として用いられますが、本来は
「自説を固く守って動じないこと」という、良い意味であ
りました。
『墨守』
春秋戦国時代、公輪盤という者が敵の城壁を乗り越え
る「雲梯(大きな梯子)」を開発し、楚王に献上した。
楚王はこの雲梯を使って宋国を攻めることを計画しま
す。それを聞いた「非攻」を標榜する墨子(名は墨翟。
子は尊称)は宋王のところへ駆けつけ、中止させよう
と説得しますが、聞き入れようとはしません。そこで、
墨子は公輪盤を相手に机上の模擬戦を楚王に見せ、
九戦九勝で、白を守り抜きます。この鉄壁の守りら、こ
の言葉がうまれました。
墨子は「兼愛(博愛)・非攻・平和」を説て、儒教を脅か
すほどの思想家でありました。
秦・漢以降、時代背景もあって保守的とされ、かえりみ
られることはありませんでした。
これが清時代になって、考証学者らによって再評価さ
れます。
〖墨子〗でよく知られるのが「兼愛」と「非攻」ですね。
≪兼愛≫
「兼ねて愛する」ということで、区別せずに愛することを
いいます。
墨子は儒家の愛が、家族や長たる者に対しての偏愛
として批判します。
≪非攻≫
当時の戦乱続きの世を批判し、戦争は勝敗に関係なく
社会を衰退させるもので、殺戮などの悲惨をまねき、
また、他国への侵攻を否定します。
(まさしく今日のロシアであります。)
ただし、防衛のための戦争は否定していません。
(ウクライナであります。)
チャップリンは映画『殺人狂時代』で
「一人を殺せば犯罪者たが、百万人殺すと英雄
となる」ということ言ってますが、
墨子はすでに
「一人を殺せば死刑になるのに、百万人殺した将軍
が勲章をもらうのか」と言ってます。
墨ーすみ・ボク
字の成り立ちは「黒=黒い・暗い」に「土」で、黒い土の
ような塊。
墨は油煙(油煙墨)や松煙(松煙墨)を膠で固めたもの
であります。
和訓の「すみ」の語源は「炭=すみ」からであると。
別説に、触れると黒くなるところから「染(そみ)」、火が
消えた後の意味「済み」というのがありました。
墨子糸に泣く
人は環境や教育次第で、性質の善悪が決まってしまう
ことのたとえ。
(墨子が白い練り糸が黄色にも黒にも染まるのを知って
泣いたという故事から。)
墨池(ぼくち)
硯の水をためる為のくぼんだ部分。
墨池ではありませんが、池が墨色になった故事があ
ります。
<中国は後漢の時代、張芝が池のほとりで書の練習
を熱心に行い、筆をその池で何度も洗ったため、池が
墨色に染まったという。>
これを「臨池学書」といい、熱心に書の練習をするこ
とを表します。
「臨池」は「書道」の意にも使われます。
墨書(ぼくしょ)
墨で書くこと。また、墨で書いた文字、絵画。
日本では日本画の下絵のことも指します。
墨客(ぼっきゃく)
詩文書家の才のある人。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社) 字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版
