ことばの物語
≪とるー取≫
〖耳なし芳一〗
小泉八雲の『怪談』でおなじみですね。原本は『臥遊奇談』
という本の中の「琵琶秘曲泣幽霊」というものだそうです。
<山口県の阿弥陀寺(平家一門の墓がある)に芳一と
いう盲目の琵琶法師が住んでいました。
ある夜のこと、「ガサガサ」という甲冑のこすれる音が近づ
いてきて、芳一に琵琶の演奏を依頼します。芳一はその
者に導かれて、大きなお屋敷らしき所へつれていかれ、
琵琶を演奏します。それか三日間、夜ごとに迎えがくるよう
になります。その姿を見た男が後をつけていくと、墓の前で
芳一は琵琶を奏でているではないですか。それを和尚に告
げると、和尚は亡霊にとりつかれていると察知します。
夜になり、和尚は出かける用ができました。そこで、芳一に
この話をして、一切声や音を出さないようにと言い含め、
亡霊から姿が見えなくなる経文を芳一の体全身に書きます。
「芳一、芳一、どこにいる」と声が聞こえてきます。そして
芳一が座っているすぐ前に来て、「芳一はいないが、ここに
耳が浮いている。これを持ち帰って訪ねた証にしよう」と
いって、耳をもぎ取っていきました。・・・・・>
「耳を切りとる」、この様子から作られたのが「耳+又(て)」
から成る「取(とる・シュ)」であります。
なせ、これが「とる」になったかというと、戦場で敵を打ち
取った証拠に、左耳を切り取ってそれを提出すると、戦功
とされ、位階が上がったといいます。そりから「耳を手で
つまんで切る」様子から発想された字であります。
もとは、秦時代の法で、首級(しるし)を戦功として、一階級
昇進させるというものでありました。これから位階を「等級」
というようになりました。
それが、不効率で後処理が大変なところから、左耳にかわ
ったようであります。
豊臣秀吉の朝鮮出兵の時には「鼻」を証拠としたようで
あります。
(耳だと左右の識別が面倒だったんでしょうね。いずれ
にしても、戦乱では多くの人が死んだという事ですね。)
最ーもっとも・サイ
字の成り立ちは「曰=冃=ずきん」に「取=耳をつまんで
切りとる」で、切りとった耳が多くなり、被っていた頭巾
をつまみ取って覆い集めることで、もっともの意味となる。
これは、多くの耳を切り取り、もっとも多く切り取った者
が戦功の第一位となる、もっとも優れるとという意味と
なったものであります。
撮ーつまむ・とる・サツ・サチ
「撮影」の「撮」ですが、これはもともと「最」の本来の
意味である「親指、人差し指、中指で頭巾を摘み取る」
を失い、「もっとも」に使われるようになったところから
「扌=手」を付して「つまむ・とる」の意味を明らかにし
たものであります。
聚ーあつめる・あつまる・ジュ・シュウ
字の成り立ちは「取=耳を集める」に「乑=人人人=
多くの人」で、あつめるの意味。
「衆」は「多くの人が集まる」という意味が主で、
「聚」は「多くの人を集める」という意味を主とします。
ちなみに、豊臣秀吉が造った「聚楽第」は、楽しみを集
めた第(邸)という意味で名付けられたもので、
「驟雨(しゅうう)=にわかあめ」の「驟」は「馬+聚」で、
雨を集めたようにどっと降り、馬のように素早く去る雨
という事であります。
趣ーおもむき・シュ
字の成り立ちは「走る」に「取」で、走って早く取りたい
ほど、心惹かれる状態の意味。
和訓の「おもむき」の語源は「面(おも)向く」からで、
顔がそちらに向く、心が動くというところから情趣、
味わいの意味が派生したものであります。
誤字脱字御容赦ください。
今日一日幸運でありますように!
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店)
新大字典(講談社) 字訓:白川静著(平凡社) 漢辞海(三省堂)
講談社現代新書ー漢字の字源・漢字の知恵
漢字の用法ー角川小事典(武部良明著)
動物シンボル事典ー大修館書店/ジャン=ポール・クレベール
英米故事伝こ説辞典ー冨山書房
中国の故事と名言500選 (平凡社/駒田信二・常石茂編)
新明解「四字熟語辞典」 三省堂
新明解「語源辞典」(三省堂) ことわざ辞典(gakken)
新明解「故事ことわざ辞典」 三省堂
新明解「類語辞典」(三省堂)
成語林(obunsha)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新・仏教辞典(誠信書房)
哲学用語入門(大和書房/高間直道著)
哲学辞典(平凡社)
漢字の用法(武部良明著/角川小辞典2)
仏教語源散策(中村元編/角川ソフィア文庫)
落語ことば辞典(榎本滋民著・京須偕充編)
中国史で読み解く故事成語/阿部幸信著 山川出版)
漢字の語源図鑑(平山三男著/かんき出版
