ことばの物語 <以ーもって・イ>
「以」は「スキの象形」で、すきをもちいて耕すの意味。
転じて、用いるの意を表す。
【字義】
1.手段・方法
矛盾(むじゅん)
矛と盾を一緒に売り込む商人の、つじつまの合わない話から。
<楚人に盾と矛を売るものあり。「吾が盾の堅きこと能(よ)く通す
なきなり」そして今度は矛を取り上げて「吾が矛の利(と)きこと、
通さざるなきなり」と。
それを聞いていた者が「その矛を以てその盾を通さば如何と」。
その人応うるに能わざるなり。>(韓非子)
以心伝心
心を以て心に伝える。禅宗で悟りの奥義を伝えること。
中国の禅宗の六祖慧能の『六祖壇経』にみえる言葉で、日本で
は空海の『性霊集』にみえます。
<秘蔵の奥旨は文を得ること尊しとせず。ただ心を以て心に
伝ふるにあり。文はそれ糟粕、文はこれ瓦礫なり。>
『伝燈録』
<吾に正法眼蔵、涅槃妙法、実相微の法門あり。不立文字、
教外別伝、迦葉に与う。>これは、お釈迦様が多くの弟子を
集め、蓮の華をひねって皆の前に示したとき、弟子たちは何の
ことか意味が分からず黙っていた。
その中で迦葉のみが破顔微笑しました。
それを見て、お釈迦様は釈葉が仏法の奥義を理解したものと
して、法門を伝授するといったのであります。
この話は「拈華微笑=ねんげみしょう」といって、禅門で作られた
話のようです。
芸術、技芸などはまさしくこれで、奥義は説明できるものでは
ありません。「ただ感じろ」であります。
2.理由
君子は言を以て人を挙げず、人を以て言を廃せず(論語)
君子は言葉だけで人を採用しないし、また、いかなる人の言葉で
あっても、価値があるとみれば捨てることはない。
3.そして
雲は無心にして、以て岫(しゅう)を出で
鳥は飛ぶに倦みて還るを知る(陶淵明・帰去来の辞)
この詩の冒頭はよく知られていますね。
帰なんいざ 田園まさにあれなんとす なんぞ帰らざる・・・
<おもう・おもえらく>
以為(おもえらく)狐を畏るなりと(戦国策)
虎の威を借るキツネです。
権力闘争は後ろ盾(裏の実力者)をいかに得るかでありますね。
以て瞑すべし
これで死んでもよい。
辞世にこう言えたらいいですね。
今日一日幸運でありますように
誤字脱字ご容赦ください。
勉強の主な参考書
漢字源(学研) 漢語林(大修館書店) 成語林(Obunsha)
新明解語源辞典(三省堂) ことわざ辞典(Gakken)
暮らしのなかの仏教語小辞典(ちくま学芸文庫)
新佛教辞典(誠信書房)
暮らしのことば 語源辞典(講談社」)
2016005掲載再考
