ことばの物語
<國Ⅱーくに・コク>
國というとすぐに思い浮かぶのが、杜甫の『春望』
國破れて山河在り 城春にして草木深し
時に感じて花にも涙を濺(そそ)ぎ
別れを恨んで鳥にも心を驚かす
烽火三月に連なり 家書万金に抵(あた)る
白髪を掻けば更に短く 渾(すべ)て簪に勝えざ
らんと欲す
家書は家族からの手紙。
芭蕉は杜甫に傾倒していました。
夏草や 兵どもが 夢の跡
杜甫の詩を踏まえたこの俳句の意味深さ。やはり、
天才ですね。
杜甫は詩聖と言われますが、杜牧が「小杜」と言わ
れるのに対して「老杜」とも言われます。
杜甫は家族を連れて、職をもとめ転々とし、清貧を
強いられます。
李白とは友人でありますが、生活はまるっきり反
対みたいに、李白は家族を顧みることもなく、遊蕩
の士でありました。
この『春望』は、唐の玄宗時代の安禄山の乱の時
に詩ったものです。
安禄山は西域サマルカンドの貿易商みたいなもの
で、楊貴妃に取り入り頭角を現してきます。
そのうち、宰相の楊国忠(楊貴妃の兄)と対立し、
反乱を起こします。
玄宗皇帝は都を追われその途中で、唐の兵士た
ちが、元凶である楊国忠を断罪します。そして、
楊貴妃にも累が及び楊貴妃の断罪を求めます。
玄宗はなくなく高力士に命じて、楊貴妃を殺害
させます。
まさに傾国の美女でありました。
傾国の美女と言う語源は、漢の武帝の時代の
李延年が
北の方に佳人あり 世に絶(はな)れて独り立つ
一顧すれば人の城を傾け
再顧すれば人の国を傾く
最も「英雄色を好む」に原因があると思うのですが。
中国の傾国の美女というと
妲己(だっき) 殷の紂王の后。酒池肉林の
故事に出てきます。
貂蝉(てんぜん) 三国志演義に出てくる架空の美人。
甄姫(しんき) 曹操と曹丕親子で取り合った美女。
そして、楊貴妃であります。
諸説あって、他に虞美人と褒姒がいますが、虞美
人は傾国の美女ではなく、項羽に殉死した美しくも
可憐な貞女であります。
褒姒は伝説上の美人で、日本では玉藻前(玉藻御
前)の正体である白金の九尾の狐の化身として伝
わっています。
座興になりますが、褒姒の話は面白いので少し。
<古くから伝わる竜の吐いた泡が閉じ込められた
箱があった。
周の厲王の時代、その箱が開けられた。
その泡は流れ出て、蜥蜴と化して7歳の宮女に
出会って消えた。
15歳になった宮女は男に由らずして子を産んだ。
その子は捨てられ、褒のくにで育つ。
周の怒りに触れた褒国は、それを鎮めるために
周の国に褒姒を贈った。厲王に寵愛され、傾国の
因となるのでありました。>
第一の辞書
<「國」は「口=むらの象形」に「戈=ほこの象形」で、
武装したむらの意味を表す。のちに、囲いを付し、そ
とのかこいを持つくにの意味を表す。>
国土の大きいのが那、小さいものを国と区別するこ
とがある。
第二の辞書
<戓(わく)は「口=四角い区域」に「弋=くい」で、上
下両線で区切り、そこに標識のくいをたてること。
「弋」は後に「戈=ほこ」の形になり、矛で守る領域
を示す。>
圀は、唐の則天武后が國の字が「惑=まどう」を含
むのを嫌って定めた文字。
この圀については、別説が第三の辞書にありました。
則天武后が國の字に限定するという意味の或を要素
としていることを不満として、或の代わりに八方を入れ
て 圀の字を作らせた。
こちらが納得ですね。
なお、圀の字は水戸光圀にくらいしか使われていま
せん。
また、国の字形は國の草書体からできた略字。
今日一日 幸運でありますように
誤字脱字ご容赦ください。
2014.11掲載再考
