こんにちは、皮肉にも二回目のワクチン接種で体調を崩して病床にいながら(もう治りかけですが)これを書いてます、絶學無憂(ぜつがく・むゆう)です。

 

今回も、今アメリカの主要メディアで、右も左も一緒になって注目を集めている、新型コロナウイルスの研究室漏洩説(Lab Leak Theory)について取り上げたいと思います。この件は、私にとっても、陰謀論というものの性質について考えさせられるものです。

 

 

 

新型コロナウイルスの研究室漏洩説、というのは、世界中を揺るがしているパンデミックの原因となっている新型コロナウイルス SARS-CoV-2 は、これまでメディアが繰り返してきたように自然界のコウモリから人に伝わったのではなく、武漢にあるウイルス研究所で作られたものが事故によって流出したものだ、とする考えです。

 
ニコラス・ウェイドという、元ニューヨーク・タイムズの科学担当、元・科学誌ネイチャーの記者が、5月3日にネットに公開したかなり長い記事「COVIDの起源、手がかりを追って Origin of Covid—Following the Clues」があります。これがアメリカの主要メディアの宗旨変えにかなりの役割を果たしたのでは、と言われています。
 
内容を抜粋してご紹介します。私はウイルスの専門家ではないので、専門用語の日本語訳や解釈が必ずしも正確ではないかもしれません。また、専門家として意見を述べるということができる立場にもありません。皆さんの考える材料のために日本語で内容をお伝えしたほうがよいだろうと思いました。全訳はしておらず、ところどころ省略しています。途中私の意見を加える際は、字を小さくするなどして、区別できるようにしています。
 
https://nicholaswade.medium.com/origin-of-covid-following-the-clues-6f03564c038

 

 

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SARS-CoV-2の起源についてのシナリオを比較する

4) コドンの謎

前回の記事では、SARS-CoV-2ウイルス(新型コロナウイルス)のヒトへの感染の決め手となる、スパイク・タンパク質の中央にある、フーリン切断部位がアミノ酸配列の絶妙の場所にありながら、近縁のコロナウイルスにはひとつも見つかっていない、ということを紹介しました。今回の話は、このフーリン切断部位について更に詳しく見ていきますが、これを読まれれば自然発生説がより一層難しいものだとお感じになることでしょう。
 
高校生の生物学で習いますが、DNAの遺伝情報というのは、三つ組の塩基配列がひとつのアミノ酸を指定する、という方式によって、タンパク質のアミノ酸配列を決めています。この3つ一組の塩基配列のことをコドン codon と呼びます。これが、遺伝子暗号を解読するための基本単位となっているわけです。
 
左側がRNAの塩基配列の例。RNAでは、AUCGの4種類の塩基が並んでおり(DNAではATCG)、これが3つずつで一つの単位(コドン)として、それぞれアミノ酸一個を指定しています。
 
3つの塩基が揃ってひとつのアミノ酸を指定するのですが、アミノ酸というのは20種類しかありません。
 
RNAやDNAの塩基配列というのは、AUCG(RNA)あるいは ATCG(DNA)という4種類の塩基の並びです。
 
ということは、4 × 4 × 4 = 64 通りのコドンがあり得ます。実際に以下の表のように、この64通りが知られています。
 
 
64通りあるコドン(3つ組の塩基配列)で、20種類しかないアミノ酸を指定するわけですので、実は、コドンのほうがだいぶ過剰で、余っています。ということはつまり、ひとつのアミノ酸を指定するコドンというのは重複があるのです。下の表の通りで、場合によっては、6種類のコドンが同じアミノ酸を指定しています。
 
 
アルギニンというアミノ酸は、Arg あるいは一文字で R と表されますが(表の上から二行目)、これを指定できるコドンというのは、CGU, CGC, CGA, CGG, AGA, AGG の6種類も重複しています。
 
ここからが非常に面白いのですが、それぞれの生物種によって、重複のあるコドンのうち、どれをよく使い、どれはあまり使わない、という、より好みがあることがよく知られています。
 
ヒトの場合、アルギニンをコードするコドンとしては、CGC, CGG, AGA, AGG の4つがよく使われ、CGU、CGAは比較的珍しくなっています。ウェイド氏の記事では、CGT (=CGU), CGC, CGGの3つがよく使われる、と書いてありますが、私が複数の情報源で見る限りこれは誤りです。というわけでウェイド氏にメールで間違いを通報しました。そしたら、次の日にはすぐに返事が来ました。ウェイド氏によれば、ヒトのコドンでどれがよく使われるかということについては複数の意見があるようだが、この記事のポイントはそこではない、という回答でした。それは分かっているのですが、全体の信憑性に関わると思ったのでした。
 
 
ヒト細胞に好まれるコドンのうち、CGG というコドンは、コロナウイルスにはまったく人気がありません。

 

 

ウェイド氏の記事は引用してませんが、こちらの論文の Fig. 2Aを見ると(縦軸はそのコドンがより好んで使用されるという尺度)、CGGは、コロナウイルスに人気のないコドンの第5位となっています。アルギニンをコードするコドンの中では、僅差ではありますが、最低人気です。

 

 

 

現在、分かっている中で、SARS-CoV-2 ウイルスに最も近縁とされているのは RaTG13 と呼ばれる、コウモリのコロナウイルスです。S1/S2の接合部位について、SARS-CoV-2 ウイルス(新型コロナウイルス)を RaTG13 と比べますと、12個の塩基が挿入されていることが分かります。
 
挿入部分の配列は
 
T-CCT-CGG-CGG-GC
 
となっています。ハイフン「-」は、3つ組のコドンの切れ目を表しています。この挿入部分前後の塩基配列、それらがコードするアミノ酸を表すと、この図のようになっています。
 
 
 
 
ここで、CGGというコドンが二回連続していることに注目してください。
 
 
SARS-CoV-2 ウイルスがアルギニンを指定するのに使っているコドンのうち、たった5%しか CGG は使われていません。さらに、CGG-CGGの連続というのは、他のいかなるベータ・コロナウイルスにも見つかっていないくらい珍しいものです。
 
では、SARS-CoV-2 ウイルスは、どうやって、このコロナウイルスにはまったく人気がないが、ヒト細胞には人気のある、CGGの繰り返し配列を獲得したのでしょうか?
 
自然発生説を唱える人は、がんばってこれを説明してくれないと困ります。よりにもよって、ウイルスの感染性を劇的に高めるこの場所に、珍しいCGG-CGGの繰り返しを含んだような配列を、自然界の未知のウイルスから組み換えで獲得したのでしょうか?
 
組み換えそのものはコロナウイルスでは頻繁に起こるものらしいのですが、ちょうどこの場所にフーリン切断部位を獲得するためには、様々な変化が重なる必要があり、それが自然に起こる可能性は掛け算によって非常にちいさなものになる、とウェイド氏は論じています。
 
これに対して、研究所漏洩説であれば、CGGコドンがここに見つかるのは驚くことではありません。研究室では人に最適化されたコドンが一般的に使用されるからです。なので、普通に誰かがフーリン切断部位をウイルスのゲノムに挿入しよう、と思ったちするれば、もっともありふれた方法として、CGGコドンを使う、ということは十分あり得ると、ウェイド氏は論じています。
 
 
気鋭のウイルス学者にして、カルフォルニア工科大学の元学長である、デービッド・ボルチモアは、フーリン切断部位のアルギニン・コドンを見たときに、これはウイルスの起源についての「まだ煙の出ている銃」だ!、と妻に語ったそうです。「まだ煙の出ている銃」、スモーキング・ガンというのは、英語の表現で、動かぬ証拠、という意味の常套句です。殺人犯の手に持った銃から煙が出ていたら、それは確実な証拠だ、という意味です。
 
 
このフーリン切断部位と、そこに使われているコドンの謎、というのがこのウェイド氏の記事の真骨頂です。この後も記事は続きますが、高校生レベルの生物学で、自然発生説が非常に難しい(とはいってもなにか説明ができるのかもしれませんが)ということを示した、という点で評価できます。
 
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まだ続きます。
 
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