このお話の世界の始まりはコチラです下矢印



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「しょーくーん!」

「智くん!」


駐車場に車を停めたら、智くんがロッジから手を振ってくれてるのが見えて、気持ちが上がる。


今日は待ちに待った智くんとのお泊まりキャンプ。



あ、いや!
待ちに待って無い!

ちがうな、なんつーか、待って無くはないけど
そんなヤル気満々みたいなアレじゃなくて

...ってそれも違う!

ヤル気ってナニを!
ナニヲ!?




「翔くん...だいじょぶか?顔真っ赤だぞ?息も荒いし、もしかして具合悪いか?」

「ひっ!」

「なんだそれ(笑)びっくりしたときホントに『ひっ』ていうヤツ、初めてみたぞ」

「いやっ…はっ、あのえっと!うん、ごめん、げんき!」

「翔くん、落ち着け?」

「あはは!大丈夫!俺落ち着いてる!」



もー!
何してんだオレ!
ひさしぶりのナマ智くんにテンションおかしくなってるよ。


「そっか、落ち着いてっか」


と、汗をかいて額に貼りついた俺の前髪を指で優しく避けてくれる。ふんわりと笑ってくれた智くんと改めて目が合えば、なんだか泣きそうだ。



「......うん、あの、ひさし、ぶり」

「久しぶりって感じしねーなぁ。ほとんど毎日顔みてるぞ?」

「......それはそうだけど、そうじゃなくて、さ」



オレだけが浮かれてるみたいで、思いのほか智くんは会えてなくても平気なのかなって。

そして、そんな気持ちがうっかり顔に出たみたいで。


「っうわ!」


ガバッと抱き寄せられて
そして、ぎゅーっと、された。

......してくれた。



「翔くん、来てくれてありがとな」

「う、うん、来ちゃった...」

「なんだそれ!かぁいいなぁ♡」

「ちょっ…と、さとしくん」

「からかってるワケじゃねーぞ?やっぱ、ちゃんとこうやって会えるって嬉しいもんだな。画面越しじゃ、こんなふうに抱きしめることはできねーもん」

「ん......そう、だよね」



抱き締め返すタイミングを失ってしまった俺は、直立のまま、ぎこちない返事をするだけになってしまって。

不器用なオレの気持ちを察してくれて、汲み取った行動で返してくれる。そんな智くんに惚れ直してやっぱりドキドキがとまらない。


抱きしめられて嬉しい反面、こんな風に意識してて、今日まともにキャンプ出来るのか、オレ。



初めてのソロキャン、という名の、接待キャンプから数ヶ月はあっという間に過ぎ。


リモートで顔を合わせてはいたし、時折食事くらいはしたけれど、こうして体温が感じられる距離にいられるのは、どーしたって、幸せなわけで。


ふわっと身体を離されて、みつめあう。



「翔くん、楽しい時間にしような!」

「うん!」



よし!

全力でたのしもう!!