このお話は『いとしき日々よ』の「まーくんのお誕生日お泊まりデート」のエピソードです。






テスト前のある日。

まーくんは部活もなく、2人でひたすら期末試験の勉強。


一緒に勉強するなら学校の自習室じゃないと、どうせ情欲に負けて勉強なんか出来ないってお互いに危機感を募らせ、学校に残ってる。わからないことがあれば職員室に行って質問できるし、実は自宅よりも断然ココで勉強したほうが効率が良かったりする。


そんな時。


まーくんは

『誕生日にお泊まりのデート』をしたい!

と、俺に言った。



泊まり?
そんなのいつもしてるじゃん?

お互いの家に押しかけて、あんなことも、こんなことも。
激しくしたい時はベッドが軋まないように体位に気をつけたり
声でちゃうのも我慢して・・・ねぇ……/////



そんな、アレコレを思い出して反応しそうになるのは高二男子としては当たり前で、耳を赤くなったことを自覚しつつも平静を装うと、まーくんから内緒話のようにおいでおいでをされて顔を寄せれば



はむっ



「んなっ!!!まーくんっ!なにすんだよ!!」



耳を唇で覆われて、ペロリと舐められた。



「しーっ!!!!にのちゃん、うるさいよっ!」

「まっ・・・!」

「だから、しーっ!」

「まーくんがソレ言う?」

「だって、にのちゃんの耳、赤くなって、なんだか美味しそうだったから」

「馬鹿なこと言ってんじゃないよ!もうっ!こんな所でどうかしてるっ!」



小声でぷんぷんしてみせる。

・・・してみせる、けど、嫌じゃないのが本音。


うん、お互いどうかしてるな。




休憩がてら、飲み物を買いに自習室を出て、さっきの話を改めて。


「さっきなんか話あったんでしょ?お泊まりデート、が、なに…///」

「あ、うんっ!あのね、オレの誕生日にさ、にのちゃんと、えっとそのぉ、ホテル、で、お泊まりしたいなぁ・・・って」

「ホテル・・・」

「あのね、あの、ホテルって言ってもね!その、ビカビカーとか、ギラギラーとかの、あのラブホみたいんじゃなくて!プールとかスパとかジムとか、夜景がきれいー、とか、そういう方向の!」

「アーバンホテルってやつ?」

「そう、それそれ!」

「あなた、それ、いくらかかると思ってんの。バイトもしてない高校生に行ける場所じゃないって」

「大丈夫!俺、誕生日とクリスマスとお年玉をいっぺんにもらうから!」

「はい?」

「だから、親からその3つ分のプレゼント、全部現金でもらうから!」



うん、まーくん。
キミの言うことはよくわかる。
ただ、使い道を聞かれたら、なんて答えるんだい?



と、窘めようとしたとき



「うちの親は、にのちゃんが良ければ構わないって!思い出つくって来いって言ってくれてるから!」

「まさかの親公認・・・デスカ」

「公認、デス。むしろ、応援してるまで、アリマス。」

「マジデスカ」

「マジデス」



はっ!




「え、ちょっとまって、そんな、応援って、絶対なんか条件あるだろ!」

「さっすがにのちゃん!だから親も応援してくれるんだよなぁ」

「何それ怖いんだけど、怖い怖い」



そういって、引いてみせる俺に向かって、パンっと手を合わせて



「お願い!テストでいい点取らせて!」



と、拝まれた。





12月21日。


終業式のあと、通知表の中を確認した俺たちは・・・




「にのちゃんっ!!やったよ!オレ、大丈夫だった!!!」

「ふふ、よかったね、まーくん、嬉しいね!頑張ったね!」

「うん!ほんと、にのちゃんと付き合い出してから成績も上がって、これなら許してもらえるよー!マジ良かった!!!!」




安堵した。


このテストの成績次第では、クリスマスデート
・・・もとい、まーくんのお誕生日デートはお預けだったのだ。







そして迎えた12月23日。




世間は来るクリスマスに浮かれる真っ只中。




俺にとっては、大好きで、大好きで、だいっすきな。
愛おしいまーくんの誕生日を明日に控えた、バースデーイブ。



日中はベタにクリスマスソングが流れる街中をくっついて歩いた。
寄り添いあっていい雰囲気・・・にはならず。
足踏んだだの、歩きにくいだの、ぎゃあぎゃあ騒いで。
なのに、信号で止まれば自然にお互いの顔を見て。

まーくんの甘い甘い眼差しに、身体中がきゅんっと反応しちゃう。そんなとき、まーくんも急に瞳の奥に熱を灯すから、それに気づいた俺はうっかり唇を薄く開いてキスをねだるような仕草をしてしまう。まーくんから苦笑いで『こんなとこで誘わないで』って、耳元で囁かれた。


ごめん、そんなつもり・・・無くはないのかも。


無意識ってこわい。


なんだか気恥ずかしくて2人でえへへって笑いあって。


こんなふうに、ずっとそばにいられますように。

街中のツリーを見かけるたびに、てっぺんのスターに想いを伝えた。




お腹がすいてくる頃には日が暮れて、イルミネーションが柔らかく街を照らす。



「にのちゃん、たのしいね!」

「うん、たのしいね!!」



まーくんがひゃひゃひゃっと明るく笑って俺の髪をくしゃっとまぜる。俺もあはははって笑って『やめろよー』なんて言いながら。



しあわせ。しあわせ。
しあわせすぎて、胸がぎゅってなる。
気持ちが溢れそうになって、それをこぼさないようにって、抑えようとすればするほど、またぎゅぅってなる。



「にのちゃん、そろそろデートのメインイベントへ向かいますか!」

「はい!向かいます!」


いくぞー!おーっ!て、2人で拳をあげれば、周りのカップルの視線をもらう。もう今は周りなんかどうでもいい。
2人が一緒にいられたら、それだけで。


テンションが上がった俺たちは手を繋いで駆け出した。