「ねぇ、それ、気になんない?」



親指の付け根に絆創膏。



「んー?」


「絆創膏貼るほど?余計気になんない?」


「うん、ちょっと気になる」


「剥がしなよ」


「やだよ」


「なんで」


「見せたくない」


「・・・は?」


「見せたくねーんだって」





器用に動く手の不自然な場所。

その下に隠された、昨夜の情事の、アト。









「んっ、はぁ・・・っ!」


「ほら、カズ、声出せ」


「んッ、んっ・・・」


「我慢してると口開けるぞ」


「あっ!アッ、アッ・・・や、やらぁ・・・」


「ヤダじゃねぇ、ほら、気持ちいいなら我慢すんなって」





智は俺の声が好きらしい。



シてるときに、どうしたって零れる甘ったるい声。


俺自身が気になって我慢してしまうが、そんなのはお構い無し。昨夜は後ろから穿たれながら、口に親指を突っ込まれて下顎をこじ開け、無理やり口を開かされた。




「・・・んあっ、あっはぁ・・・あぁっ、はっ」



「カズ、かわいいな」




骨ばった関節にザラついた指先の感触。初めこそ舌で押し返そうとしたが、咥内を意識する度にむしろ舌先で智の指をいっそう敏感に感じてしまう。だらしなく唾液を垂らしながら、気づけば夢中でしゃぶりついていた。




「んっ、ん・・んむぅ・・・」



ぴちゃぴちゃと水音を立てながら智の指を舐れば、それに応えて上顎を擦られる。口の中が性感帯だということは智に気付かされた。堪らず後孔がきゅっと締まる。



「ん・・・こら、カァズ・・・ッ、締めんな・・・って」



咎めるような物言いも嬉しさを隠さない声音。



ガツガツと腰を打ち付けられ、俺も結局は快感に溺れる。自意識や羞恥など何処吹く風。肌のぶつかる音とともに、身体も前へと押し出されるから、四つ這いの体位で背を反らせ腰を突き出し、必死で腕を伸ばして智の熱い塊が少しでも俺の奥に届くようにとヘッドボードを押し返していた。


「・・・カズ、届いてる、か?」


「あぁっ・・・だ、だめっ・・・っんぁッ、そこぉっ・・」





智は俺をおかしくさせる天才だと思う。




ひときわ甘く高く喘ぎながら

俺自身の前もガチガチに張り詰め

その先端からはいやらしい体液が透明な糸を引いて垂れ続ける。


さらに俺は『もっと』と強請るように声を上げた。



耳に舌をねじ込まれて水音をたてる。

項に唇を這わせながら熱い息をかけられる。



そして

誰も知らない俺の奥の奥の『その場所』を攻め立てられ

もう何もかもがギリギリのところで歯を噛み締めたときに

かすかに口の中に感じた血の味が昨夜の最後の記憶。