こんにちは

ぼく、栞吏ちゃん




つい先日の夜中




ふと目が覚める







隣で眠っているのは

おーねいちゃんと








狸のおねいちゃん(おーねいちゃんの姉)!




へ?




言わずもがな

我が家はぼくと

おーねいちゃんとおーにいちゃんの

3人家族 




おーにいちゃんはどこに行ったの!?






思わず大きな声で問い掛けるぼくに

しーっと手振りをしながら

静かに答えるのはおーねいちゃん








「おーにいちゃんは仕事でしょう?

今夜は帰らないのよ」








そうじゃった

眠っている間に忘れていたけれど

おーにいちゃんは一泊の出張






ぼくとふたりでは

お留守番は不安なおーねいちゃんの為に

狸のおねいちゃんが泊まりに来てくれたのだ








ぼくは主張していた




おーにいちゃんが一晩位居なくとも

狸のおねいちゃんが来ずとも

ふたりで事足りると





もっと言うのなら

ひとりでだって大丈夫だと







おーねいちゃんは

ぼくのしっぽを

繰り返し繰り返し

指に絡めながら





「ひとりで

どうやってご飯よばれるの?」









ぼくのご飯は煮るでも焼くでもない



パウチに入ったウエットご飯を

お皿に移し替えるだけ






自分で出来ますと口に出すより早く






「こんなにも丸っこいお手てで

どうやってやるん」






おーねいちゃんは

ケラケラ笑う






黙り込むぼくの顔を覗き込んで



「…んんん」



咳払いで誤魔化すけれど






堪えられずに

やはり笑うのだ







ところで




狸のおねいちゃんは

仕事終わりに直接来てくれた




自分の家に帰るよりも

一時間ほど余分に時間が掛かるそう




つまり

翌日の仕事には

何時もより一時間は早くここを出なければならない








仕事が休みの時ならまだしも


と気にしながらも


それでも来て欲しかった理由





おーねいちゃんは

お風呂を出た後に

電気を消す事が出来ないのだ





お風呂を出る時に

どこにも触れたくない





それだけじゃない





両手はぴったり体に付けて


お風呂を出たという

“呪文”を唱えながら


一目散に寝室に入る






もしも

電気のスイッチを消そうとしたり

何かをする為にとどまってしまったら




「お風呂に入った後なのか

入る前なのか分からなくなるもん」



と、おーねいちゃん










髪や体が濡れているのだから

お風呂に“入った後”

だと教えてあげるのだけれど





「わしには分からん、あほじゃけぇ」





冗談交じりに


そして真面目に


本当に分からなくなるのだと言う





入浴後

一目散に入った寝室




化粧水もドライヤーも

全て寝室で完結させる





夜中に

お手洗いに行きたくなる事はない



 
このまま朝まで

寝室からは出ない




例えば

お風呂上がりで喉が渇いているとしたら

我慢するだけだ





こんな理由で

普段は

おーにいちゃんに消してもらっている

お風呂の電気




おーにいちゃんの帰りが遅くなると

数時間は点けっぱなしになる事もある

電気





段々と熱を持ってくる白熱球





一晩中点けっぱなしにする事は

流石に怖いと思うらしい










他にも

水道の蛇口がきちんと閉じているか

コンロの火は消えているか




おーねいちゃんだって

使う度に確認している


だけれど


“うっかり”をしてしまっていたらと思うと

不安で仕方がない




おーねいちゃん以外に

もうひとりニンゲンが居るという事は


見張る目が増える


気付く確率が上がる








こういう時

ぼくは

“ひとり”の勘定には入れてもらえない






便利屋さんは電気を消しにも

来てくれるのじゃろうか?



いつか見た

町の便利屋さんの広告が

頭に浮かぶ



だめだ、やはり

他人様を招き入れるのはまた大変





結局は

狸のおねいちゃんに

助け舟を求めたのだ





翌朝

狸のおねいちゃんは


「本当に可愛いね」


と言い残し、

道が混むといけないからと

早めに出勤して行った






夜には

おーにいちゃんが

山形土産を携えて帰って来た






おーねいちゃんが

食べてみたいとリクエストしていた

乃し梅






適当な大きさに切る

竹皮をはがしてよばれる



美しい乃し梅は

光に照らされて

透き通る中に細かな梅肉が見える



梅酒に良く浸かった様な梅肉の旨味

それでも原材料は

梅肉、砂糖、水飴、寒天のみ



甘酸っぱい味

寒天の食感




おーねいちゃんの好きが

詰まった様なおやつ





案の定

おーにいちゃんは


「美味しいけど」






決して美味しくない訳では無い


けれども


一番くらいに嬉しいお土産と言う

おーねいちゃんの意見には

不賛成な様だ





おーねいちゃんとおーにいちゃんは

本当に本当に

食の好みが真逆だ






6種類のゼリーがある売場で

3つずつ好きな味を選ぶ時も

見事にひとつも被らない




「わざと言ってる?」




おーねいちゃんは

これまで何度もおーにいちゃんに

確かめている






裏を返せば



お互いの好みは良く分かる



“一番選ばないやつ”


“相手の一番好きなやつ”




何はともあれ

無事に終わった

おーにいちゃんの出張




出張の予定を耳にしてから

気が重いと嘆いていた

おーねいちゃんだが



「山形ええね〜

次は乃し梅

沢山頼まなきゃね」



喉元過ぎれば呑気なものだ









だけれど








ぼくは知っている

















来月の出張は


おっかなびっくり二泊である事を










そして
















ぼくは気付いている








  









ぼくが食べられるお土産は

一度だって貰っていない事を



栞吏ちゃんいつも一緒に居てくれてありがとう!大好きもん