こんにちは

ぼく、栞吏ちゃん




「さて、問題です!

ゴマちゃんのふたつ後ろの席には

誰が座っているでしょう?」








お昼寝明け

うすうすとしている所に

突然始まる

おーねいちゃんのクイズの時間






頭は回らない


ゴマちゃんの後ろの席は誰だって構わない





狸寝入りで

知らん顔したいところ





だけれど





目を瞑れば


ぼくのゲボを片付けている

おーねいちゃんの今朝の姿が浮かぶ







無碍に扱う事は出来ない








そもそも


アザラシのゴマちゃん?




さっぱり分からないので

確認してみても




「ノーヒントよ、オーケー?」






あー、面倒くさい




“最初の一文字だけ教えて”

が口癖のおーねいちゃんなのに


  
ぼくにはヒントも貰えないなんて







「チチチチ」

気疎いおーねいちゃんのカウント音





耐えられなくなったぼくは

適当に

“ハナちゃん”と答える





「計算式は?」





数学の問題と同様に計算式

つまりは

答えの筋道まで必要らしい

 



口をつぐむ

ゆっくり瞬きをする





答えられないでいるぼくに


「ハナちゃんはお隣の猫ちゃんじゃない」


不正解だと言う






ゴマちゃんのふたつ後ろの席には






ジム君が座っているらしい









アザラシ、猫、国籍

ジム君は何者かも分からない



おーねいちゃんが考えるクイズは

所詮面白みのないこの程度







義理は果たし

再び目を瞑る





それでも


お構い無しに話し掛けてくるのは

やはりおーねいちゃん



 


「いつまで経っても

靴擦れが出来るんよ」






ジム君の話は


しれっと


スポーツジムの話に変わる






通い始めて

半年以上




通った回数は

10回未満








都度利用料制のジム



のんびり屋のおーねいちゃんだもの


たまに行くだけ

  





いつまで経っても

運動靴は馴染まない





一緒に出掛けるおーにいちゃんに

タオルは持って行かないのかと聞かれれば



「汗かかない程度に頑張ります〜」




マシーンには

各々小さなファンが付いている


それでも

走ったりバイクを漕げば汗は出るのだけれど






エアコン真下の

一番涼しいマシーンを把握しているし


ストレッチマット前には扇風機もある





汗が出そうになる時は


「どの運動をしたいかじゃないの

場所で選んで運動するの」





然程

汗はかかなくとも



ジム終わりの

ビールとご飯は

「とんでもなく美味しい」らしい




ご褒美だけは一丁前



然れど



ジムのマシーンに触る事も

コインロッカーの鍵を手首につける事も



不潔恐怖のおーねいちゃんにとっては

我慢する事から始まった





姉弟の好みで



頑張っているね、

たまにだけれど



ぼくは褒めてあげる






おーねいちゃんは誇らしげな声で


「流石、栞吏ちゃんのおーねいちゃんじゃろ」




おーにいちゃんのアイスを

勝手によばれながら笑っている





ところで


在宅事務を始めて

今月でちょうど一年





ぼくのお母さんの

保護猫活動への寄付はいつも

おーにいちゃんが稼いでくれる

“家計”から送っているのだけれど




今回は

初めて

おーねいちゃんのパート代から

送らせてもらったらしい





おーねいちゃんは

やはり誇らしげな声で




「流石、おーねいちゃんじゃろ♪」




おーにいちゃんのアイスを

勝手によばれながら笑うのだ




秋がやって来たよ、栞吏ちゃん