米国の南北戦争は北軍の勝利で終わったのですが、私は南軍が降伏して戦争が終了したのだと思っていたら、実際は南軍が消滅して戦闘が終了したそうです。
ドイツの軍事研究者として有名なクラウゼヴィッツの『戦争論』では、敵の軍事力を壊滅して戦争遂行能力を消滅させる「絶対的戦争」と特定の政治目的の達成のための「現実戦争(限定戦争)」の二種類に戦争の性格を分類しています。
クラウゼヴィッツは、戦争の本質は「政治目的を実現するための手段」の一つであり、あくまで「政治の延長」上にあると考えていました。
ですから、現実の(主にヨーロッパでの)戦争は、政治目的が達成されれば講和し、敵軍を消滅させるまで戦争を続けるということはほぼありませんでした。
しかし、米国の南北戦争の場合、北軍の戦争目的は南部分離主義者の反乱軍である南軍を討伐することであり、南軍側は南部の独立を認めさせることが第一目的で、北軍の南部侵攻以降は防衛戦争の性格が強まったようです。
有名な「奴隷解放宣言」も、南部連合に対し、降伏しない場合は宣言を発すると通告して早期の降伏を促す目的が強かったみたいです。
また、この宣言により黒人奴隷が南軍に非協力的になる、または反乱を誘発するという戦略的な目的も大きかったようです。
さらに、北軍の戦争目的に「奴隷解放の正義」という明確な大義名分を与えることで北軍兵士の士気を高めるということも考えていたでしょう。
しかし、「奴隷解放宣言」が発せられてしまった結果、奴隷制に依存した経済であった南部側は妥協の余地がなくなり、講和できなくなって戦争をやめられなくなったため、南軍が消滅するまでの「絶対的戦争」に進行してしまったようです。
北軍の完勝・南軍の消滅により、アメリカ合衆国の統一を保つというワシントン政府の戦争目的は達成されたのですが、「絶対的戦争」まで至った結果、アメリカ合衆国の歴史上最も多くの戦死傷者を出してしまいました。
南部人の中には現在もまだ北部に対する敵対心を持ち続けている輩も結構いるようです。
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