乳がん手術のためのMRI検査の日は
処方してもらった薬を1時間前に服用した。
薬局でもらった袋に大きい文字で
「不安なとき」
と書かれているのがかえって不安をあおるが
飲まない選択肢はない。
効いているのか?
効いているのか?
不安な気持ちのまま大学病院の受付を済ませた。
MRIの検査室前で看護師の問診を受ける。
金属がないかとかペースメーカーの有無とか
入れ墨の有無やら体重とか。
そして最後に「閉所恐怖症は大丈夫ですか?」
その質問が大丈夫じゃない。
閉所恐怖症っていうか、
身動き取れないとか自由に動けないとか
そういう状況が苦手なんです。
エレベーターに乗るのは大丈夫なんだけど
閉じ込められたらと思うと急に怖いんです。
これって閉所恐怖症っていうんですか?
なんて言えるはずもなく「ちょっと・・・・」と濁す。
看護師さんはとても親切で、
検査の前にどんな感じが確認してみましょうかと言って
検査室に入れてくれる。
しかしその前にメガネを預けていた。
(MRI検査の時はコンタクトレンズはNG)
室内がぼんやりとしか見えない。
部屋は14畳かもう少し大きい長方形で、
その2/3くらいのスペースに大きい検査機が鎮座している。
トンネルっぽい位置が想像より高い。
しかしトンネルは入り口出口ともふさがってなさそうだ。
それだけで少し安心。
つか全身用!!
上半身だけ入るって聞いてたから
小さいMRIがあるのかと思ったら普通に大きいんですけど!
いや、待てよ。
ベッドの上に人型がある。
見るからに頭と両胸をはめる穴が開いている。
頭の部分が検査機から離れた方にあるから、
どうやら足の方から入るらしい。
それってすごくいい!
頭から入るとか怖すぎる。
安心材料があってよかった。
もう一度廊下に戻り
検査する胸と反対側の腕に注射器を刺された。
あとで造影剤をここから入れるという。
造影剤ってどんなものかもわからない。
いよいよ本番。検査室に入り、
先ほどの人型にうつぶせになってはまる。
胸と顔のところに穴が開いているから、
うつ伏せなのに圧迫感がない。
体制が整ったところで、
看護師が「お胸は隠れてから安心してくださいね」と言うので、
いやもう、あちこちで何度も胸は晒してきましたけど…
と思っていたら男性検査技師が入ってきた。
なるほど色々配慮されているのね。
検査は40分ほど、半分経過したら造影剤を入れて検査します、
大きい音がするのでヘッドフォンしますかと聞かれ
一旦はヘッドフォンを装着してみたが、
音がぼんやりしか聴こえないのがかえって不安でやめた。
うつ伏せで何も見えないのも怖いから
少しだけ横を向いて光を感じられるように体制を変える。
うつ伏せで視界が奪われているせいか少しぼーっとする。
薬がやっと効いてきた?
「はじめまーす」と放送が入りベッドがスーッと動いた。
ひゃー
入ったの?入ったの?
動いちゃダメと言われていたけど
頭をもう少しだけ横向きにした。
部屋は明るいまま検査が行われるようだ。
はぁ頑張ろう。
やがてものすごい騒音が頭や背中の上で鳴って
途中で甲高い音が何十秒も(それとも十数秒?)続いた時には
ギブアップしようと思ったけど、
そんな時に週末に行った個展のキラキラを思い浮かべた。
豊洲市場前のIHIステージアラウンドで行われている
香取慎吾くんの日本初個展。
時々行く美術館とは全然違う、アトラクションのような
ステージのようなあの素晴らしい空間。
カラフルでキラキラで薄暗いのにまぶしかった。
段ボールに描かれた色とりどりの力強い絵、
縁まで丁寧に塗られたキャンバス
時に楽しく時に思いがけない暗い言葉の作品説明、
香取君の切った髪の毛や、歯型、瞳の写真を使った
模型やコラージュなどの楽しく奇想天外な作品の数々。
今の私だったら、あそこに胸をモチーフにした
作品を展示するだろうか。
「造影剤が入りまーす」と放送が入り、
右腕の針から冷たい液体がじわじわと
二の腕、肩、首筋に広がった。
気持ちわる~い!
でも不思議ともう不安はない。
気持ちはまた個展の思い出に移った。
今月はもういけないけど、
手術の前にもう一度行こう。
その時はもう元号は令和だな。
展示中でありながら製作途中の「令和」の作品も
来月にはもう完成しているだろうか。
香取君は時々会場に現れては、客前で制作しているのだ。
私も会えるかな。
2月のファンミーティングで香取君には間近で会っていた。
イベントの最後に出口でファンを見送ってくれたのだ。
あのふんわりとしたやわらかいオーラに包まれた、
全てを包んでくれそうな笑顔と逞しい腕を持ったスーパースター。
頭の上では相変わらず大きな音が響いているのに
なんだか眠れそう...
しかし眠りに入る前に検査が終わった。
